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終わりと始まりの教室

正しさは、いつも一つとは限らない。

誰かを守った行動が、別の誰かを傷つけていることもある。


後悔は声を上げず、

ただ心の奥に沈み続ける。


これは、選んでしまった過去と、

その選択を抱えたまま生きていく人間たちの物語。


交わらないはずだった感情が、

静かに、同じ場所へと引き寄せられていく。

(アル)


あたしは星咲アル。このアカデミー・ハックウェイクで一番美しい女――そう、誰もがあたしの美しさに抗えない。誰もがあたしを讃える。誰もがあたしを女神のように見ている。


そう、アル様――


それが当然だと思っていた。


あの女の存在を知るまでは。


不知火ひめか。


その名前を耳にした瞬間、胸の奥で何かが燃え上がった。アカデミー中の誰もが彼女を美しいと言う。あたしより、美しいと。


「ありえないわ……!」


許せない。絶対に許せない。なぜあんな女があたしを超えるの!?


初めて彼女を見た時、悔しいけど……認めざるを得なかった。ひめかは自然な美しさに溢れていた。長い金髪、大きくて綺麗に整った深い青の瞳、そして完璧すぎる体型。


見ているだけで腹が立つ。


誰にも負けたくない。どんな女もあたしの下にいるべきなんだ。そう、誰一人としてあたしより上にいてはいけない。全ての女はあたしの下――星咲アルの下にいるべきなのよ。


だから、絶対に許さない。


そう決めた瞬間、あたしは動き出した。少しずつ彼女に近づいて、友達になった。彼女の強みを知る必要がある。弱点も。全てを知らなきゃ。


そうして、あたしは彼女の「友達」になった。


おかげで、あたしの人気もさらに上がった。あの女と一緒にいることで、男子たちの注目も集まる。プレゼントをもらったり、告白されたり。


完璧な生活だわ。


でも――目標はまだ達成していない。ひめかを苦しめること。彼女がナンバーワンでいることを許すわけにはいかない。


なぜなら、ナンバーワンは一人だけ。


以前、別の誰かがそこにいた。誰も超えられない存在が。


……お姉ちゃん。


あの頃、両親はいつもあたしとお姉ちゃんを比較した。認められるために全てを捧げた。勉強、スポーツ、美しさ――全てで一番にならなきゃいけなかった。


そして、あれが起きた時――


もう競争相手はいなくなった。


ただ、空っぽのナンバーワンの座が残っただけ。


その座はあたしだけのもの。だから、ひめかがそこにいることは許されない。


ナンバーワンは――あたしだけ!


運良く、ある日チャンスが来た。ひめかがあたしと竜也とマウロに悩みを打ち明けてきた。心配そうな顔をして。


(どうでもいいわね)


彼女は子供の頃に事故に遭ったらしい。幼馴染を責めているけど、本当は責めたくないって。


うざったい。その考え方が本当にイライラする。憎しみと愛が同時に存在するなんて、自分に嘘をついてるだけじゃない。友達にも嘘をついてる。


そう思いながら聞いていたけど、正直これは使えないと思った。


あれは一年生の時の話。


でも、二年生になって――予想外のことが起きた。


ひめかが話していた幼馴染が、このアカデミーに現れたの。一年生として。


どう利用しようかと考えていたら、もっと驚いたことに――ひめか自身がその男子の噂を広めたいと言い出した。


もう価値がないと思ってた。でも――


予想以上だわ。


その男子――彼は直接ひめかと対峙した。彼と仲間たちがひめかをバトルに挑んできた瞬間、あたしはワクワクした。


このチャンスを逃すわけにはいかない。彼女を辱める絶対的なチャンス。


そして――成功した。


あたしのスキルは水晶の槍を作り出し、空中に浮かべて罠として使える。わざと、ひめかがあの男子と二人きりになった場所の近くに一つ設置しておいた。


バトル中、自分の相手の攻撃を防ぐのに集中していたから、ひめかの表情を完璧には見られなかった。でも――あの男子の前で苦しんでいる彼女の姿は確かに見えた。


嫉妬した。


その男子に嫉妬したのよ。


だって、彼はひめかを苦しめた存在。つまり、彼はひめかの苦しむ顔を見られる。あたしが一番見たかったものを。


相手から離れて、ひめかとその男子がいる場所に近づいた。


そして――見た。


彼女は完全に壊れていた。感情的に崩壊して、絶望の淵にいた。


最高だったわ、ははっ!


でも、あの男子はあたしと違った。彼は状況を修復しようとしていた。


それは許せない。


もっとひめかの絶望した顔が見たい。その表情をずっと見ていたい。


だから――罠を発動させた。


水晶の槍がひめかの上に落ちた。


残念ながらバトルには負けたけど、それは小さな犠牲。もっと大きな何かと引き換えだもの。


さあ、状況を整理しなきゃ。


ひめかに近づいて、アイドルボイスで言った。


「あ〜、ごめんね〜ひめか! あたしの罠が発動しちゃって君を倒しちゃった〜。本当にごめんなさいだよぉ〜」


「……大丈夫ですわ、アル……気に、しないでくださいまし……」


いつも通りの偽りの笑顔。


……でも、目の前の女は。絶望の痕が残ってる。完全に打ちのめされて、崩壊してる。


あ〜、幸せ。こんな彼女を見られるなんて。


全部あの男子のおかげね。ひめかの幼馴染。


振り返って彼を見た瞬間――


っ!?


視線を感じた。まるで、その男子の目があたしの内側を見通しているかのような。動揺したけど、何とか表に出さないように抑えた。


(何なのよ、あいつ……?)


油断できない。どんなに小さなリスクでも、警戒を解いてはいけない。


名前は――確か、アレン? そう、アレン。


もっと注意しなきゃ。アレンの視線があたしに固定されていたけど、あたしが見返した瞬間、彼は目を逸らした。


その反応を見て――あたしは素晴らしいアイデアを思いついた。


明らかにひめかは幼馴染に対して何か感じている。もしあたしがアレンに近づいたら――彼を使ってひめかを傷つけられるかもしれない。もっと近くで、彼女の最高の表情を見られる。絶望に満ちた、泣き崩れる顔を。


あ〜、なんて幸せなの。あの男子がこのアカデミーに来てくれて。


これで計画を完成させられるわ。彼女を辱めるために。


待ってなさい、ひめか――。


* * *

(アレン)


僕は何か変なことが起きたと分かっていた。アルさんの様子がおかしい。まるでこの展開を計画していたかのような表情だった。でも、今はそれを考える余裕なんてない。


竜也さんとマモルさんが二人でひめかを支えて歩かせようとしていた。何も言わずに立ち去ろうとする彼らを、アヤさんがすぐに止めた。


「どこに行くつもり?自分たちの責任から逃げるつもりなの?」


竜也さんは怒りと心配が入り混じった表情で声を上げた。


「どけ!ひめかを保健室に連れて行かなきゃならねえんだ」


守さんが手を上げて、落ち着かせるように割って入った。


「まあまあ、行かせてやれよ。この話は後でするからさ」


静かに去っていった。でも、彼らが遠ざかる前に、アルさんが指でサインを作り、奇妙なウィンクをしているのに気づいた。


僕には何も分からなかった。


ひめかの顔を思い出した。壊れたような瞳。泣き声が頭の中で響いている。何か分かる。これはただのバトルじゃない。ひめかは深い痛みと戦っている。知らないトラウマだけど、感じることはできる。


その瞬間、理解した。彼女の物語はまだ終わっていない。


ひめかは何かを深く抱え込んでいる。肉体的な傷よりも深い痛みを彼女に追体験させる何かを。あんな風に泣いている彼女を見て、僕は自分自身の内面的な戦い、自分のトラウマについて考えずにはいられなかった。


「アレン……大丈夫か?」


守さんが僕の肩に手を置いて尋ねた。


首を横に振った。言葉が見つからない。ひめかの背後には何かがある。理解できない何かが。遠ざかっていく彼女を見ながら、彼女の顔がまだ僕の頭の中を侵していた。


君は本当に何を背負っているんだ、ひめか?


* * *


今朝は考えることがたくさんあって目が覚めた。あれから数日経っているのに、ひめかのことが頭から離れない。噂は止まった。ひめかは約束を守ってくれた。それ以来、彼女を見ていないし、会いに行く勇気もない。


そして今日、落ち着かないもう一つの理由は……今日、Fクラスに新しい生徒が来る日だからだ。


中間試験の結果が入口の画面に公開される。「転出」と表示された者は担任の先生のところに行かなければならない。でも、僕は大丈夫だと確信している。成績は中間くらいのはずだ。少なくとも、そう願っている。


中間試験の結果を見に行く準備をした。アカデミーに着くと、既に多くの生徒が結果を見るために集まっていた。何人かが離れるのを待ってから画面に近づいた。


運が良かった。成績は何も起こらない完璧な中間点だった。中間試験で73点を取った。


せっかくなので他の子たちの成績も見てみた。りんさんは僕を大きく上回って79点。アヤさんは僕より少し下で70点。エリザさんとかんなさんは同点でクラスで最も優秀な成績を収めていた。二人とも「転出」カテゴリーに入るほど近く、両方とも87点だった。


Fクラスが安全だと分かって、教室に向かった。後は新しいクラスメートが誰になるのか、その真実を知るだけだ。


りんさんは既に教室にいて本を読んでいたが、僕に気づいた瞬間、どんな本を読んでいるのか僕に見られないように隠した。好奇心が湧いたけど、彼女の行動に気づいたから、何も見なかったふりをすることにした。


数分後、アヤさんとエリザさんが一緒に到着し、次にかんなさんが来て、最後にチャイムが鳴ってホームルームの時間を告げた。


古橋先生が抑えきれない興奮に満ちた笑顔で教室に入ってきた。


ドアが開いたまま、古橋先生は誰かがまだ入ってくるのを待っているようだった。


「みんな、今日はFクラスに新しい仲間が来る日よ。優しくしてあげてね」


それは理解できた。彼らが以前は別のクラスにいて、今こうしてFクラスに転入してきたのなら、自尊心にとって大きな打撃だろう。


「それと、みんなアカデミーでの最初の試験で落第しなかったことをお祝いしたいわ。アヤさんを除いてね」


古橋先生は抑えた怒りでアヤさんを見つめた。


「もっと勉強しなさい、アヤさん!」


アヤさんは恥ずかしそうに席で縮こまった。


古橋先生は一度教室を出て、新しい転入生たちを連れてくるようだった。戻ってきたとき、彼女の後ろには三人の生徒が歩いていた。


「聞いてね。この三人は違うクラスの生徒だったんだけど、残念ながら成績が下がっちゃったの。優しくしてあげて、できる限り助けてあげてね」


古橋先生は振り返って、三人の生徒を見た。


「じゃあ、クラスに自己紹介して」


三人の視線には不快感が滲んでいた。そのとき気づいた……真ん中の男子、どこかで見たことがある気がするんだけど、思い出せない。


古橋先生は静かに待っていたが、誰も話そうとしなかった。ついに彼女はため息をついて、最初の生徒を指差した。


「じゃあ、君から」


その男子は古橋先生を見てから、視線を前に落とした。


「ボクはエドワー・ブラウン……よろしく……」


観察してみた。メガネをかけていて、背が高くて痩せ型。男おかっぱみたいな髪型をしている。内気なのか、真面目なのか、それともここにいることを恥じているのか、判断できなかった。


「そんなこと言わないでエドワーくん、せめて前のクラスくらい教えてよ」


古橋先生の言葉は彼をイライラさせたようだったが、顔を上げて言った。


「前はCクラスに所属していた」


明らかに不機嫌そうだった。


教室に沈黙が訪れた。りんさんが最初に拍手をした。僕も続き、それからアヤさん、エリザさん、かんなさんも拍手した。しかし、それはブラウンさんをさらに居心地悪くさせただけのようだった。


古橋先生はあまり気にせず、二人目の生徒に目を向けた。僕はまだ誰なのか思い出そうとしていた。その時、彼が自己紹介する前に思い出した。


彼は一歩前に出て、元気よく自己紹介した。


「オレは二階堂レン!ここに来ちゃったのは残念だけど、前のクラスじゃ嫌われてたっぽいからさ……よろしくな!」


二階堂さん……あの入学式で会った男子だ。


「オレ、前はDクラスだったんだけどさ、前のクラスでうるさくて怠け者だって言われたんだよね。でもオレはそう思わないけど」


そう言っていたが、何らかの理由で今こうしてFクラスにいるわけだ。


突然、彼の視線と目が合った。僕の方を指差して叫んだ。


「おお!お前のこと覚えてるぜ!あの日一緒にいたヤツだろ!」


全員の視線が集まるのを感じた。りんさんが席から小声で聞いてきた。


「知り合い?」


「ん……まあ、そう言えるかな」


古橋先生は僕たちが知り合いだと気づいて、妙な笑みを浮かべた。それから、まだ残っている最後の生徒を見た。女子だ。


「じゃあ、最後は君ね。クラスに自己紹介して」


その女子はブラウンさんや二階堂さんの隣で背が低く、とても緊張しているようで、手を使って自分の存在を隠そうとしていた。


「お、おはようございます……クラスメートの皆さん……よろしくお願いします……」


そう言って、沈黙した。古橋先生は疑わしげに瞬きした。


「えっと……名前を言うのを忘れてるわよ……」


「あ!そうでした……わたしはマリ・マクベスと申します……」


「それだけ?」


「……前のクラスは、Bクラスでした」


それを聞いて驚いた。Bクラスにいた人間がどうやってFクラスまで落ちてきたんだ?


「じゃあ、好きなところに座ってね。空いてる席はたくさんあるから」


二階堂さんが僕の前の席に近づいてきた。


「よろしくな、これからクラスメートだぜ」


「え、ああ、よろしく」


なぜか、彼の存在は居心地が悪い……いや、彼が放つ圧倒的なエネルギーのせいかもしれない。


彼はしばらく立ったまま考え込んでいたが、指を鳴らした。


「んー……悪い、名前忘れちまった。お前、なんつったっけ?」


はぁ?


「アレンだ」


「アレン!そういや、前にその名前に関係する何か聞いたことある気がすんだよなー……」


こいつ、一体どうなってるんだ?まるで頭の中に古いプロセッサーでも入ってるみたいだ……


二階堂さんがまだブツブツ言っている間に、古橋先生が彼の後ろに現れ、予告なしにノートで頭を叩いた。


「もう座りなさい!」


二階堂さんがようやく席についたところで、授業が始まった。


他の転入生たちがどこに座ったか観察した。マクベスさんは、アヤさんとエリザさんの近くに座っていた。どうやら二人が彼女を呼んで一緒に座らせたようだ。一方、ブラウンさんは最後列のドア近くにいた。落ち着かない様子で、孤独そうに見えた……


初めてアカデミーに来たときの自分を思い出した。


でも……あれから少し成長したかもしれない。


考えてみれば、教室に新しい女子が入ってきたのに、動揺していない。ひめかとのことがあってから、本当に変わってきているのかもしれない。


昼休みのチャイムが鳴った瞬間、ブラウンさんは素早く教室を飛び出していった。その直後、二階堂さんが僕の方を振り向いて声をかけてきた。


「なあアレン、食堂行くか?それとも他で飯食うのか?」


「食堂には行くけど、りんさんたちと一緒に行くんだ」


僕がそう答えた途端、二階堂さんの表情が大げさに変わった。目が飛び出しそうなほど見開かれ、口がぽかんと開いている。


「マジかよ!?女子たちと一緒に飯とか、羨ましすぎるぜ!」


少しイラッとした。りんさんに聞こえるだろ、バカ。少しは自重しろよ。二階堂さんは確かに煩わしい奴だけど、悪意があるわけじゃなさそうだ。ただ単に、こういう性格なんだろう。


二階堂さんがりんさんの方を向いた。


「おい、お前の名前は?」


りんさんはいつも通り自己紹介をした。彼女は二階堂さんを悪い人とは思っていないようだ。でも、二階堂さんがりんさんと話しているのを見ていると、僕は……彼女は彼と話すべきじゃないような気がした。なぜこんなことを感じるんだろう?まさか、嫉妬?でも、なんで僕が嫉妬なんかするんだ?理解できなかった。


二階堂さんが芝居がかった様子で泣き真似をしていたが、僕はもうりんさんと一緒に教室を出た。彼を放っておいて。


食堂へ向かう廊下で、りんが言った。


「レンくんってすっごく変わってるよね?」


「ん……」


二階堂さんを悪い人間だとは思わない。ただ、空気を読む繊細さが欠けていて、思ったことをそのまま口にするタイプなんだろう。


食堂の入口に着く前、アヤさんとエリザさんがマクベスさんと話しているのが見えた。りんさんが先に近づいて尋ねた。


「どうしたの、みんな?こんなところで何してるの?そんなに時間を無駄にしてたら、ご飯食べられなくなっちゃうよ?」


アヤさんがりんさんを見て振り返ったが、僕に気づくと様子が変わった。


「アレン、お願いがあるんだけど」


「何ですか?」


突然、マクベスさんがアヤさんの背中に強く張り付いた。頭を彼女の背中に隠し、明らかに震えている。怖がっている?でも、何を?


アヤさんが諦めたように溜息をついた。


「あのね、アレン……マリは男が怖いのよ」


僕は固まった。信じられなかった。僕と同じような人がいるなんて。ただ、彼女の場合は女性ではなく、男性が怖いのか。僕の恐怖はもうほとんど消えかけているけど。


アヤさんがマクベスさんのことをもっと説明してくれた。


「今までずっと自分の教室で食べてたらしいんだけど、もうBクラスじゃなくなったから、そこには行けないのよ。あたしたちの教室に残るかって聞いたんだけど、食堂に挑戦してみたいって」


僕はマクベスさんの状況を分析しようとした。おそらく、彼女はBクラスにいた時、友達をほとんど作れなかったんだろう。男子に囲まれて、それが彼女を動揺させ続けた。僕と違って、彼女を支えてくれる人が誰もいなかった。毎日が前の日よりも辛くなっていったはずだ。それがFクラスに落ちた理由を説明できる。口に出そうと思ったけど、やめた。


僕はマクベスさんを不快にさせたくなかったので、その場を離れることにした。今、僕にできるのはそれだけだ。でも、りんさんは僕と一緒に食べることにして、エリザさんとアヤさんをマクベスさんと一緒に残していった。食事中、かんなさんも合流してくれた。


その日は特に問題なく過ぎていった。一日を通して、Fクラスの新入生たちについて少し理解できた。


まず二階堂さんは、エネルギッシュすぎるが頭の回転は遅い。空気を読まずに思ったことを言う。これは一日彼を観察しただけで分かった。


次にブラウンさん。とても真面目で距離を置いている。彼については一番分析できなかった。機会があるたびに教室を出るか、みんなから離れていた。おそらくFクラスに落ちたことに苛立っているだけなのかもしれない。


そして最後にマクベスさん。彼女が一番衝撃的だった。アヤさんとエリザさんに躊躇なく男性恐怖症を明かし、常に女性の隣にぴったりくっついて、男性との接触を一切避けている。でも僕の恐怖とは違って、彼女の恐怖は僕の対処法とは何か違う気がした。うまく説明できないけど、彼女を見ているとそう感じた。


演劇部に行く時間になった。アヤさんと一緒に到着すると、部内の雰囲気が妙に張り詰めていた。とても静かだった。


朋也さんがカリさんの隣にいるのが見えた。何が起きているのか聞こうと彼らに近づいたが、先に口を開いたのはアヤさんだった。


「何よ、この葬式みたいな雰囲気は?」


アヤさんが意気揚々とやって来て話しかけてきたのに、朋也さんもカリさんも話す気配がなかった。


……まあ、無理もないか。


クラスの多くが仲間を失っている。もしかしたら、もう友情を築き始めていた相手もいたかもしれない。それを失うのは、誰にとっても辛いはずだ。


そう考えていると、守さんの声が教室に響いた。


「みんな、聞いてくれ。来週、体育祭があるんだ。準備は大変だと思うけど……俺から一つだけ言わせてくれ。諦めるな!」


……体育祭。


新しい問題が頭に浮かんだ。来週、体育祭が開催される。どんなルールなのか、何が起こるのか。考えただけで、怖くなってくる。


その時、朋也さんが急に元気を取り戻したように見えた。こちらへ近づいてくる。今度は何か慎重な様子で……一体何を話すつもりなんだろう?

次回――


昇格の裏にある噂。

不自然な成績の跳ね上がり。

そして、水面下で動き始める思惑。


誰が何を知り、

誰が何を隠しているのか。


静かな日常の影で、

“策士”たちはすでに盤面を見据えている。


昇格は努力の結果か、

それとも“別の手段”によるものか。


静かな日常の裏側で、

誰かが確実に動いている。


見えない策と、隠された意図。

その先に待つのは、偶然か、それとも必然か――。


それはまだ小さな波紋。

だがやがて、確実に何かを揺るがしていく――。


疑念は形を持ち、物語は別の顔を見せ始める。

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