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反響の絆

過去と向き合うことは、

誰かを救うためであり、同時に誰かを傷つける行為でもある。


言葉にすれば楽になるわけじゃない。

謝れば終わるわけでもない。


それでもアレンは、

逃げずに「終わらせる言葉」を選んだ。


これは、赦しの物語ではない。

決別と前進の物語だ。

守さんが素早くルールを説明した。4対4のバトル、失格はない……けれど、負ける道は一つだけ。チームの誰か一人でも倒されたら、そのチームは自動的に敗北となる。だから、仲間を守ることがこのバトルで何より大切だ。このルールを「生存戦」と呼ぶらしい。


金属的な声が響いた。


「バトルスタート」


全員が即座に散開し、戦略的に距離を取った。勝利の鍵はチームワークと、あらゆる機会を活かすことだと、みんな理解していた。バトルはもう始まっていた。


ひめかとその仲間たちは、まだ際立った動きを見せていなかったけれど、その存在感だけで威圧感があった。


すぐにりんさんたちと合流し、作戦を練ることにした。


「今のところ、向こうは大した動きを見せていないわね」


りんさんが確固とした声で言った。


「アレンくん、あたしに考えがあるの」


りんさんを疑うつもりはないけれど……その作戦はかなり危険だった。各自が一対一で相手と戦い、常に他のメンバーを引き離し続けるというもの。戦略としては面白いけれど、失敗する可能性もある。ひめかの仲間が再集結しようとすれば、こちらが脆弱になってしまう。でも、りんさんはとても自信に満ちた表情をしていた。だから、彼女を信じることにした。


新たな問題が浮上した。りんさんが言った。


「アレンくん、ひめか先輩と戦ってもらうわ」


「は?」


「そんな顔しないで。あたしは竜也先輩と戦う、アヤさんはマウロ先輩、エリザさんはアル先輩と戦うの」


りんさんがこんなに素早く作戦を立てたことに驚いた。彼女を失望させたくないし、何より負けたくない。


「わかった、やろう!」


「ところでアレンくん、まだ二つ目のスキルを使ってないでしょ?」


あっ! 完全に忘れていた。一体どんなスキルなんだろう?


「それに、エリザさんも二つ目のスキルを持ってるの。それを活かしましょう。向こうは先輩よ、絶対に複数のスキルを持ってるはず。こっちは不利なんだから、全力を出さなきゃ。ね、アレンくん」


時々、アカデミーのシステムのことを忘れてしまう。りんさんの言う通りだ。ひめかとその仲間たちはここでは先輩で、バトルで使えるスキルも複数持っている。ひめかと戦うには、全力を出さなければならない。


りんさん、エリザさん、アヤさんが先に隠れ場所から出て、ひめかの仲間たちの注意を引いた。


りんさんは最初に竜也さんのところへ向かい、弓を使って彼をひめかのグループから引き離すことに成功した。続いてアヤさんが鎖を使ってマウロさんの腕を縛り、空中に投げ飛ばして遠ざけた。そして最後に、エリザさんが格闘用グローブで地面を揺らし、地中から岩を隆起させてアルさんをひめかから引き離した。


ひめかだけが残り、周りを見回していた。一人になってしまった彼女……今が現れる時だった。


ゆっくりとした足取りで、ひめかの前に立った。彼女は僕を見た瞬間、軽蔑の表情を浮かべた。


その表情を見るのは辛かった。


目の前にいるのは、全ての苦しみの源。彼女を見ると罪悪感を感じずにはいられない。あの日起きたこと……罪があるのか、それとも……。そう、いつも自分にそう言い聞かせてきた。彼女が僕を犯人だと指差したから、自分を責めてきた。でも、本当に考えてみれば、誰の責任でもない。あれはただの事故だった。なぜひめかはそんなに僕を責めることに執着しているんだろう?


ひめかは黙って僕を見つめていた。その目は怒りで満ちていた。ゆっくりと右腕を伸ばすと、エーテルのエネルギーで作られたような鞭が現れた。それが彼女のスキルだった。


「今こそ、わたくしがあの時感じた痛みをあんたに返す時ですわ」


鞭が予測できない速さで動き、脚に当たって後退を余儀なくされた。何とか体勢を立て直すと、また攻撃が来て、かろうじて避けることができた。反撃しなければならないことはわかっていたけれど、手が震えていた。体が動かなくなるのを止められなかった。


僕の迷いに気づいたのか、彼女は一瞬動きを止めてこう言った。


「イベントの日を覚えていまして? あんた、あの時ひとつの質問に答えられなくて――脆いところを見せてしまったわね。その結果。……ふふっ。その質問をしたの、実はわたくしでしたのよ」


その告白は雷のように僕を打った。そのイベント、僕を脆弱にしたあの質問。それは彼女だったのか……。じゃああの時から、彼女は僕がアカデミーにいることに気づいていたんだ。あの時から……。


彼女は怒りを抑えるように歯を食いしばった。


「わたくしは許しませんわよ、アレン。あの日……あんたはわたくしを見捨てたんですもの。わたくしを見て、気にもかけなかったわ」


彼女の言葉は胸に突き刺さる短剣のようだった。説明したいけれど、罪悪感の重みが僕を止めていた。本当に彼女を見捨てたのだろうか?


そう考えた瞬間、衝動的に声を上げた。


「違う! 見捨てたりしてない!」


「黙りなさい! あんたの言い訳なんて聞きたくありませんわ」


それ以上言わせず、戦いは続いた。でも、彼女の攻撃を避けながら、罪悪感と痛みが僕を蝕んでいった。どうやって、自分が苦しみを与えた相手と戦えばいいんだろう? そして、もっと悪いことに、どうやって自分の恐怖に立ち向かい、彼女と僕の間にあるこの深淵を乗り越えればいいんだろう?


ひめかは止まらなかった。鞭は正確さとスピードで動き、地面に跡を残し、一挙手一投足で僕に届きそうになる。攻撃を避けるために後ろに下がるたびに、様々な感情が僕を蝕んでいった。何年も引きずってきた罪悪感、彼女と向き合う恐怖、そしてもっと深いところにある何か――怨念に満ちた彼女の声を聞くことから生まれる痛み。


最後の一撃をかろうじて避けた後、彼女は立ち止まった。息は荒く、怨念に満ちた目で僕を見つめながら、その言葉が短剣のように僕に降りかかった。


「あんたのせいで……わたくしが苦しんできた全てのことは、あんたのせいですわ……ずっと」


声が震えていた。何年も溜め込んできた怒りを背負っているようだった。


「事故の後、わたくしが何を経験したか、あんたには想像もつかないでしょうね! わたくしの脚は部分的に麻痺していて……何ヶ月ものリハビリに耐えなければならなかったんですのよ、何ヶ月も! そしてあんたが離れていくのを見た時、あんたが戻ってこなかった時、わたくしは感じましたわ……あまりにも大きな失望を。二度とあんたを信じられないと思いましたわ」


彼女の言葉は、胸を押しつぶすような重みだった。


それに、「離れていくのを見た」ってどういう意味だ? あの日、僕を遠ざけたのは彼女自身じゃないか。彼女自身があの日それを叫んだのに。今さらその嘆きは何なんだ?


答えようとした。説明しようとした。でも彼女は僕に最後まで言わせなかった。


「ひめか、聞いてくれ。あの日、君を見捨てたりしてない。僕は……」


声は不確かだった。


「――聞きたくありませんわ!」


まるで心のどこかで、彼女が真実を聞きたがっているかどうか疑っているようだった。鞭が再び動いて、もう一度後退を余儀なくされた。


攻撃を避けようとしている間、何かが変わり始めた。最初は恐怖だけを感じていた。彼女の攻撃への恐怖、彼女の怒りへの恐怖、彼女を傷つける可能性への恐怖。でもそれから、彼女の言葉が心の中で響き続ける中、別の何かが力を持ち始めた。


苛立ち。


彼女が言っていることについて考えた。長年蓄積してきた怨念について。彼女はあの日本当に起こったことについての嘘、誤解の中で何年も囚われて生きてきたのだと理解した。


本当に僕が自己中心的に彼女を見捨てたと思っているのか? もう一撃を避けながら考えた。


あの日のことをはっきりと覚えている。頭に浮かんだ唯一の考えは、彼女を助けられる大人を探すことだった。子供の心では他のことを処理できなかった。あの時、ひめかは僕に何を期待していたんだ? 全部一人で解決することを? 自分自身が怯えていた時に、彼女の救世主になることを?


その考えが心の中で何かを燃やした。何年も抱えてきた罪悪感が、何か違うものに変わり始めた。


不公平だ! 彼女を助けようと思ってしたことで責められるなんて不公平だ! 怯えた子供だった時の判断で憎まれるなんて不公平だ!


突然、糸がほとんど本能的に動いた。ひめかの鞭に巻きつき、彼女の攻撃を唐突に止めた。彼女は解放しようとしたけれど、糸を強く引く動作をすると、彼女自身が地面に倒れた。彼女の体が土に衝突し、一瞬、二人の間には沈黙だけがあった。


「ひめか……」


動かない彼女を見て、後悔と決意が混ざった気持ちでつぶやいた。


彼女はゆっくりと立ち上がり、鼻をさすりながら純粋な怒りの表情を浮かべた。


「よくもそんなことができましたわね! わたくしの顔が――!」


爆発寸前のようだった。彼女は僕に非常に強烈な視線を向けて言った。


「あんたのせいで、わたくしの夢はゴミになってしまいましたわ……母のようになりたかった。新体操の選手になりたかったのに、あんたのせいで、あの事故のせいで、この怪我のせいで、もう不可能ですわ……」


それを聞いて、再び罪悪感を感じた。彼女の夢を奪ってしまった罪悪感、子供の頃から計画していた未来を。でも、他の感情も育っていった……。


彼女の言葉を聞いているだけで、本当に彼女からこんな軽蔑を受ける価値はないと感じた。あの日のことは、ただの事故だったんだ。


鞭が彼女の手から消えたけれど、何か奇妙なことが起こり始めた。彼女がいる場所の周りで、地面が……歪んでいるように見えた。はっきりとは見えなかったけれど、環境に何かが変化しているのを感じた。奇妙なエネルギーが空気を満たし、まるで今までより遥かに危険な何かを準備しているようだった。


もしかして、別のスキルを発動しようとしているのか?


自分が獲得した二つ目のスキルを思い出した。目の前にデジタルパネルが現れ、二つ目のスキルが「調和の糸」と呼ばれることが表示された。このスキルの使い方についての情報が頭に素早く流れ込んできた。


このスキルは誰かに依存するものだった。まだひめかの仲間たちと戦っている他のみんなを見た。彼女たちに頼ることはできない。このバトルは僕とひめかの間のものだ。


でも、この二つ目のスキルの説明には、誰かに依存するといっても、その人が隣にいる必要はないと書いてあった。糸はあらゆる場所に広く伸びる。必要なのは、糸を他のみんなのスキルに接触させること。それだけで、スキルを発動するのに十分なんだ。


足元の地面を観察し、彼女が何をしようとしているかの兆候を探した。彼女の言葉はまだ心の中で響いていたけれど、それに支配されるつもりはなかった。ひめかは僕を憎むかもしれない、起こったこと全てで僕を責めるかもしれない。でも、もうこのまま続けさせるつもりはない。もう、これ以上は。


ひめかがゆっくりとした足取りで近づいてきたけれど、足元の地面から何か見えないものが湧き出ていた。その存在は不気味で、まるで今まで見せたものよりもっと危険な何かを企んでいるようだった。


僕に十分近づくと、手を上げて小さな棘を僕の方向に放った。小さかったけれど、当たった時の痛みは激しく、引き裂くようだった。ひめかは止まる様子がなかった。その視線は怨念で満ちていた。


痛みで後退を余儀なくされ、絶望的な状況でいつも上手くいく戦略を使うことにした。逃げること。


素早く走り始め、攻撃を避けるために右へ左へに動きながら、糸の一本を高い枝に投げて、高所に飛び上がった。


上からバトルの全体的な様子が見えた。二つ目のスキルを使うには、誰かのサポートが必要で、一番近くにいるのはアヤさんだった。


「アヤさん! 力を貸してくれ!」


アヤさんが遠くから聞いて、微笑みながら鎖を空中に上げた。新しいスキルを発動させて糸を使い、彼女の鎖に接続すると、糸が鎖の形を取り始めた。これで彼女は自分のバトルに集中し続けられるし、僕も自分のバトルを続けられる。


ひめかを見ると、彼女はどう解釈すればいいかわからない視線で僕を見つめていた。でも、まるで怨念に何か他のものが混ざっているようだった。


アヤさんに助けを求めたからこうなっているのか?


ひめかが動かずに立っていると、不安が僕を襲った。なぜ動かないんだ? なぜ攻撃してこないんだ? 何かがおかしい。でも疑っている場合じゃない。


鎖の形になった糸で攻撃するために彼女のところへ向かった。


ひめかは最終的に反応し、さらに棘を放った。しかし、それは予想していた。彼女の前に糸を伸ばし、回転し続ける鎖を形成して攻撃を跳ね返した。隙を狙って、もう片方の手で糸を放って直接攻撃した。ひめかは部分的に避けることができたけれど、攻撃は彼女にダメージを与えるのに十分だった。


ひめかは驚いて後退した。


「そ、そんな……」


声が抑えた怒りで満ちていた。近づいてくる僕を見て歯を食いしばった。


糸を使って彼女の攻撃を避け、再び高所に飛び上がった。ひめかは別の攻撃を準備し始めていた。


二人同時に攻撃しようとしていた。一瞬、パニックが僕を襲いそうになったけれど、糸を動かした。今、青い輝きを放っている。


何かが起こり、土が周囲全体に舞い上がり、空中の土の層の中からひめかの位置を特定することが不可能になった。再びあの棘が放たれたけれど、また避けることができた。


土が散ると、ひめかはまだそこに立っていて、様子を観察していた。怒りが増していくようだった。その視線はますます鋭くなり、まるで見るだけで貫けるようだった。


突然、ひめかは二つ目のスキルを封印した。でも後退するためじゃない。もっと大きな何かを準備しているんだ。


「一度で終わらせてさしあげますわ……」


トーンが違っていた。今まで感じたことのない脅威で満ちていた。今まで隠されていた何かを見せようとしているんだ。


背筋に悪寒が走った。彼女は三つ目のスキルを発動しようとしている。彼女を見るだけでそれは明らかだった。


もっと助けが必要だ。今度はエリザさんが近くにいることに気づいて叫んだ。


「エリザさん、助けてくれ!」


エリザさんは頷いて左手を空けてくれたので、糸が彼女の格闘グローブに触れた。これで、糸が格闘グローブに変身できるようになった。


ひめかは再び僕を見た。まるで……驚いている? わからなかったけれど、憎しみを込めてエリザさんを見た。まるで何か言いたいことがあるようだった。


僕はその隙を利用して一撃を与え、彼女は吹き飛ばされたけれど、すぐに立ち上がった。


ひめかは状況に疲れたようで言った。


「何をしているつもりですの? アレン、他人のスキルを借りて……自分一人では戦えませんの?」


彼女の質問が、皮肉な話し方というより単純な好奇心のように聞こえて驚いた。


「……仕方ないんだ、ひめか……これが僕のスキルなんだ。一人では戦えない、少なくとも今は。君に立ち向かうために、周りの人たちの勇気が必要なんだ……今、こうしているように」


「……何それ? 何それ? 何それ?」


ひめかは僕の言ったことに非常にフラストレーションを感じているようだった。


突然、彼女は冷たく軽蔑的な視線を僕に向けた。その青い目の中に、どう解釈すればいいかわからない非常に深い何かが見えた……。


ひめかは言った。


「……そんなにお友達が大切なら……彼女たちが痛みに対してどう反応するか見てみたいですわね」


ひめかが指を鳴らすと、彼女の仲間たちが一人ずつ背後に集まってきた。それに伴って、りんさん、エリザさん、アヤさんが心配そうに僕の隣に戻ってきた。


「アレンくん、何が起きてるの?」


「……わからない」


答えを待たずに、アヤさんがひめかに向かって走った。


あまりにも無謀だった。


アヤさんは全力を一撃に込めて直接攻撃した。しかし、驚いたことに、ひめかは避けなかった。攻撃を真正面から受け、吹き飛ばされて遠くに倒れた。彼女の仲間たちも何もしようとせず、ただそこに立ってすべてを観察している。


一体何が起こっているんだ? いや……何かがおかしい……何かが起ころうとしている。


アヤさんは驚きと喜びが混ざった表情で僕の方を振り返った。


「やった、アレン! 倒したぜ!」


彼女の幸せは明白だったけれど、何かが合わなかった。アヤさんが彼女を倒したなら、なぜバトルが終わらないんだ? その疑問が頭の中で響き渡った。


そして、全力で叫ばずにはいられないものを見た。


「アヤ、危ない!」


まるで幽霊のように、ひめかが突然アヤさんの背後に現れ、振り向きざまに腹へ一撃を叩き込んだ。アヤさんは苦痛の息を漏らし、彼女の前に膝をついて倒れた。


ひめかは冷たい顔で少し身を屈めた。


「なんてお人好しですこと……」


予告もなく、鞭が再び物質化し、アヤさんを容赦なく攻撃し始めた。血が凍るような激しさだった。鞭が休みなく降り注ぎ、アヤさんは身を守ろうとしたけれど、傷つきすぎて立ち上がって反撃することができなかった。


「馬鹿ですわね! あんたはそういうゴミですのよ! アレンから離れなさいと言いましたのに、それでもあんたたちは彼を支援し続ける。なぜ? なぜそんなことをしますの?」


アヤさんは意識を失いそうだった。急いで介入しなければならなかった。


「やめろ、ひめか!」


彼女に辿り着く前に、マウロさんが邪悪な笑みを浮かべて目の前に現れた。


「どこへ行くつもりだ?」


マウロさんの声が響いた瞬間、反応する間もなかった。彼の拳が僕の胸に叩き込まれる。爆発が起こり、体が真逆の方向へと吹き飛ばされた。


地面に激しく叩きつけられる。痛い――痛すぎる。


倒れたまま、目の前の光景が映る。ひめかが、容赦なくアヤさんを鞭で打ち続けていた。立ち上がろうとするが、体が言うことを聞かない。遠くでマウロさんがこちらへ向かってくる。次の攻撃を準備しているのが分かる。


これで……終わりなのか?


恐怖と絶望が胸を満たしていく。


だが――その時だった。


矢が空気を切り裂き、マウロさんの金属グローブに突き刺さった。直後、電撃の爆発が弾け、彼の体が痺れて地面に倒れ込む。


顔を向けると、遠くにりんさんの姿があった。弓を構えたまま、真剣な表情でこちらを見ている。迷いのない目だ。


彼女は躊躇せず、こちらへ走ってきた。あっという間に僕の傍まで来ると、弓を下ろさず、真っ直ぐひめかへ向けた。


「ひめか先輩、今すぐアヤさんから離れて!」


ひめかが動きを止める。だが、その視線はりんさんへと向けられた。同じ表情――あの冷たい表情のまま。


恐怖が走った。その視線がりんさんに向けられているのを見て、胸が締め付けられる。


嫌だ……りんさんに何かあったら――!


ひめかは何も言わなかった。唇は閉じられたまま。けれど、その瞳がすべてを語っていた。冷たく、鋭く、人間離れした怒りに満ちている。


そして――また、奇妙なことが起きた。


鞭が消え、彼女の体が完全に消失する。次の瞬間、同じ場所に再び現れた。


りんさんが後ずさる。「え、何!?今のって――」混乱した様子で周囲を見回している。


何かする前に、僕は手を上げて彼女を止めた。


「待って!りんさん、多分ひめかは三つ目のスキルを使ってる」


ひめかは同じ場所に立ったまま、不気味なほど冷静に僕たちを見つめていた。


息を吐き、痛みを堪えながら再び立ち上がる。体中が悲鳴を上げているが、今は止まれない。りんさんを見て、決意を込めて言った。


「りんさん、作戦がある。さっき、僕の二つ目のスキルをアヤさんとエリザさんに使ったんだ……今度は君の力を借りられるかな?」


彼女は深く息を吸い、一度弓を下げてから再び構え直した。


「分かったわ、アレンくん。必要なことは何でもするから!」


りんさんの弓が光を増していく。ハーモニーの糸の可能性が広がっていくのを感じた。彼女の技量と組み合わせれば――何かできるはずだ。


ひめかは動じなかった。その視線は僕たちに注がれたまま、まるで本当のバトルがこれから始まると分かっているかのように。


だけど――僕にとって、これはスキルのバトルじゃない。


ひめかと……話すための戦いなんだ。


痛みも、絶望も、すべて抱えて。それでも今、伝えなければならないことがある。この気持ちを――全部。


今が、その時だった。

次回――


交わされた想いは、救いにならなかった。

残ったのは、歪み、怒り、そして壊れかけた心。


戦いは終わったはずなのに、

本当の代償は、ここから始まる。


誰が勝者で、

誰が一番失ったのか。


次回、

『歪んだ愛の代償』。


楽しみにしててね。

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