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殻を破って

沈黙は、必ずしも無関心ではない。

言葉にできない感情ほど、人を強く縛るものだから。


このは、

静かに積み重なっていた違和感と、

避けられなかった衝突の気配が、はっきりと形を持ち始める。

アレックス先生がルビーさんと始めた。注目なんてしていなかった。自分のターンが来た時に何をするか、そればかり考えていた。


少しして、アレックス先生の声が聞こえてきた。


「君の順番だ、アレンくん」


盤面を見ると、ルビーさんが最初の一点を挙げていた。まあ、当然のことだ。


アレックス先生が観客席の女子を指した。声が...どこかで聞いたことがある気がした。目を向けると、シルエットしか見えなかったけど、あの声は絶対に朱里さんだ。そう確信していた。


「アカデミーの新聞にはそれを識別する名前があるかどうか?」


朱里さんの質問を聞いた時、新聞部の教室にいた時のことを思い出した。壁には重要なニュース記事のカットが何枚も貼ってあったし、新聞のことについて色々と見てきた。だけど...朱里さんからアカデミーの新聞に正式な名前があるという話は聞いたことがなかった。


「いいえ、名前はありません」とそう答えた。


「正解。アカデミーの新聞には名前がない」


ホッとした。知り合いが点をくれた。これで今必要な三点のうち一点が取れた。先へ進める。きっと大丈夫だ。


また下を向いて、考え事に沈んだ。


霧崎さんのことが頭をよぎった。


彼女は今、どうしているんだろう。もしここにいたら、きっと励ましの言葉をくれるはずだ。自分を落ち込ませないように。


姓で呼び続けるのをやめるべきだ。そう思った。彼女との距離を感じたくない。彼女がいたから、自分は動き始めたんだ。こんな大切な瞬間に彼女のことを思い出すのは……そういうことなんじゃないか?


だけど、そこまで考える前に――


「アレンくん、君の順番だ」


アレックス先生の声が考えを遮った。


先生が観客席から誰かを指した。観客席の方を見ると、男子の声が聞こえてきた。

「一週間は何時間ですか?」


頭の中で答えを組み立てる。一日は24時間だから、それに7を掛ける。でも暗算は得意じゃない。簡単なやり方を思い出した。20×7で140。それに毎日4時間を7日分で28時間。足すと……


「一週間は168時間です!」


「正解」


スコアボードを見た。二点同士。ルビーさんと並んでいた。もし彼女が次のターンで正解すれば、同点のままか、それとも自分が負けるか、そこで決まる。


ルビーさんをちらりと見やった。いつもどおり、集中している表情だ。


結果は……彼女が三点目を取った。


失敗は許されない。ここで落としたら、全部終わりだ。


「アレンくん、順番だ」


先生が観客席の誰かを指した。


観客席に目を向けた。奥の方……すごく離れた場所に女子のような人影が見えた。ように誰なのか判別できなかった。ただ、女子だということだけが分かった。


彼女は立ち上がって、質問を口にした。


「Fクラスの参加者へ。幼き日の約束は、羨むほどの純粋さで交わされます。ですが、悪意ではなく臆病さゆえに、保護の約束が破られた時、何が起こるのでしょうか?目撃者の単純な逃亡は、他者の悲劇における罪悪感を赦免するのでしょうか?」


えっ?は?


心臓が急に速くなった。


理解ができなかった。視界がぼやけ始めて、めまいまでした。


あの子は誰だ?知らない。だけど……何か、すごい圧を感じた。彼女の声からだ。何か……言葉にできない何かがある。


そしてあの質問は?何なんだあんな質問?何を言ってるんだ?


なぜ……悪い記憶が蘇るんだ?


突然、あの日のことが全部、思い出された。


呼吸ができない。この部屋の空気が重くなったように感じた。手が汗ばんで、震え始めた。呼吸が乱れて、汗が滝のように流れる。


何が起こってるんだ?


時間がない。答えなきゃ。


目を上げた。応答時間が終わる。


3、2、1――


言葉が出なかった。


失格だ。


黙ったまま、顔を下げることしかできなかった。何が起きたのか理解できなかった。何が……起きたんだ?一体何が起きたんだ?


あの奇妙な質問か?あの子の声か?何だったんだ?何が起きたんだ?


また自分の席に戻って待った。理解ができない。何があの僕を麻痺させたんだ?何が僕を凍らせたんだ?


あの質問だったのか?それとも……あの女子の声?


何なんだ?何が起きたんだ?


分からない。良い調子だったじゃないか。これからどうやって他の奴らに顔向けできる?こんなに情けなく、惨めに負けた自分を。


くそ。くそが。なぜだ。こんなに惨めな形で負けたなんて。


「約束」だ?「逃げ」だ?「罪悪感」だ?「悲劇」だ?あの女子は何をほざいてやがる?


喉に何かが詰まっているような感覚。涙が出そうだった。


またやられたのか。自分に負けたのか。


ずっと一人でいるべきだった。そうするべきだった。それが正解だったはずだ。


あの女子たちと友達になる資格なんてない。あんなに親切にしてくれる資格はない。この恐怖は消えない。どれだけ頑張ろうとしても、これは現れる。そしてあらゆるものを奪っていく。


このイベントが終わったら、元に戻ろう。霧崎さんと話すのはやめる。アイアンハートさんには近づかない。ハサウェイさんも無視する。それが一番だ。最初からあいつらの友達じゃなかったんだ。


ただ……遠ざかるだけでいい。それが正解だ。


消えたかった。


イベントは続いていたけど、もう何も聞こえなかった。自分の中の嵐だけが聞こえた。出ていきたかった。でも出ることができなかった。


閉じ込められている。そう感じた。


そんな時だった。


肩に手が触れた。


上を見ると、クロエさんだった。隣に座った。


「悔しいんだろ?」


静かな声だった。優しい声だった。


「必死に頑張って、でも結果が出なかった。そういうことだろ?」


返事をしなかった。避けようとした。彼女のことを見ないようにした。でも、クロエさんは続けた。


「ね、ね。負けが全部を決めるわけじゃないんだよ。このアカデミーでもね、誰もが敗北を味わってる。一番強い奴らだってね。大事なのは、倒れた後にどうするかってこと。あたしは知ってるんだ。折れちゃうのか。それとも...ここから学んで、もっと強くなるのか。アレンには可能性がある。ね。こんな瞬間で無駄にしちゃダメよ」


小さな笑顔をくれた。


そしてクロエさんは席に戻った。


彼女の言葉が...頭に響いた。


やるせなさはすぐになくなったわけじゃない。だけど……彼女の存在が、ほんの少しの希望をくれた。


もしかして……彼女の言う通りなのか。


敗北の後でも、まだ進む方法があるのか。


だけど……痛みはまだ、大きかった。


* * *

(りん)


イベントが終わった時、教室の大型スクリーンに映ったアレンくんに、あたしたちの視線が釘付けになった。でもね、本当に大事だったのは……彼の状態よ。


第二段階に突入した瞬間、彼は完全に凍ってしまった。その緊張感は、見ればわかるほど明らかだったの。あたしたちみんなが気づいちゃうくらいに。


女子から出た質問……あれ、なんだったのよ?すごく変な問題だったわ。だけど、先生がそれを認めたってことは……有効な質問なんだってことなんでしょ。


それでもね、先生の判定がどうであれ、あたしはどうしても納得できなかったの。あの質問、おかしいじゃない。理解できないわ。


彼はね、すごく準備してたんだ。自分に自信を持ってたはずなのに。


あの質問、何だったんだろう?

なんでアレンくん、答えられなかったの?


そしてね……一番つらかったのは、彼がそれでこんなに壊れた状態になってるってこと。その脆さが目に見えるほどで……


心配でね。アレンくんのことが心配で、もう教室を飛び出して彼のところに行ってやりたい気持ちでいっぱいだったわ。でも、そんなことしたら問題になっちゃう。だから我慢しなくちゃ。彼が戻ってくるのを待つしかないの。


ようやく彼が教室に戻ってきた時、俯いてて。うなだれたまま歩いてくるアレンを見て、あたしは思わず近づいていった。


「アレンくん、頑張ったじゃない!」


励ましの言葉をかけたのに……彼は完全にあたしを無視したわ。脇を通り抜けるみたいに。まるで、あたしが空気みたいな存在だったみたいに。


あの反応……この敗北が彼にどれだけの影響を与えたのか、それが一目瞭然だった。だけど、それ以上に怖いものを感じた。


恐ろしかったの。だけど、アレンくんが怖いわけじゃなくて……彼が理解できないことが。彼の心の中の何かが理解できないことが。


アヤさんとエリザさんも近づいていった。アヤさんは、あの質問を出した奴に怒りをぶつけてた。アレンくんが表には出さない怒りを、代わりに燃やしてくれてるみたいに。エリザさんはそっと彼を慰めようとしてた。


だけど、アレンくんは何も言わなかった。ただ、黙ったままで。


その姿を見て……あたしは思い出しちゃったの。最初に彼に会った時のこと。あの、怖くて、不安に満ちた、内気な少年の姿に戻ってた。


怖かったわ。本当に怖かった。あたしはね……あたしの弟を守ることができなかったから。


また同じ気持ちになってる。またアレンくんを助けられてない。弟の時と同じように。失敗してる。


放課後、彼は何も言わずに飛び出していった。アヤさんが追おうとしたけど、結局は追いかけなかった。本来なら演劇部の活動に行くはずなのに、彼は校舎の出口に向かってた。寮に戻ろうとしてるんだ。


廊下の窓からね、あたしは彼を見守ってた。走り去る彼の背中を見て、彼が自分の部屋に籠もるんだって直感した。


話さなくちゃ。遅くなる前に。


午後中、陸上部の活動に集中できなかった。あたしの頭の中は、いっぱいアレンくんのことばっかり。


寮に着いた時、受付ロボットのとこで立ち止まった。男子寮のエリアに行きたいけど……あのロボット、絶対に通さないだろう。回避する方法もないし。


アレンくんと話したい。でも不可能。そのロボットが邪魔をしてる。


もう、明日を待つしかない。週末だし、何かしら方法があるはずよ。


ベッドに寝転がっても、ずっと不安で。不確かで。この状況に、どう対処していいかわからなくて。


次の朝、あたしは急いで準備した。アレンくんに会えるかもしれないから。


だけど……受付ロボットは「男子寮へのアクセスは許可されません」って言ったわ。


週末だからって何か特別な許可があるとか、甘いこと考えてたあたしが馬鹿だったね。


でも諦めない。外で待つことにしたの。彼はいつか出てくるはずでしょ。


何時間も、何時間も待ってた。太陽が真上に来て、そしてだんだん西に傾いていって……食べることもなく、ただただ待ってた。


夜が来てもね。


彼は何もかも、あたしに話してくれるわけじゃないんだ。


大きくて、暗い何かを隠してる。なんで?


アレンくん、あたしのこと……信じてくれてないの?


あたしは勝手に、あたしたちの信頼は絶対だと思ってた。だけど、そこにひびが入ってた。


あたしの支援って、彼の目には浅いものなのかな?


アヤさんとエリザさんは、すぐに彼の側に行けた。アヤさんの怒り、エリザさんの優しさ……


だけど、あたしは?


ただここにいるだけ。動けない。何もできない。


どうしてあたしだけ?どうして彼女たちは反応できるのに、あたしは反応できないの?


アレンくん、遠ざかってる。また籠もろうとしてる。最初みたいに。


そして今度は……もう、あたしが必要ないんじゃないか。アヤさんか、他の誰かでいいんじゃないか。


あたしは……必要とされなくなるのか。


その恐怖が、本当に怖かった。


周りを見回した。もう暗くなってた。あたしが会いに行くこともできない。彼が出てこようともしない。


だったら、無理矢理にでも、彼を引っ張り出すしかないじゃない。


一つの案が浮かんだ。


受付ロボットのとこに行ってさ、あたしは言ったわ。


「ロボさん!あたしね、とある男子に用があるんだけど、連絡つかないの。手伝ってくれないかな?」


ロボットが、ぴぴぴってか、ブーンとか、そんな感じで音を出した。処理中なんだろう。


そしてね、最後にロボットは言った。


「直接の訪問はできませんが、その方の部屋の電話に直接つなぐことが可能です。お名前を教えていただければ、呼び出しいたします」


希望が湧いた!


あたしはロボットが要求する情報を全部教えたわ。


少しして、ロボットは言った。


「本人より『少し待つように』とのことです」


心臓がドキドキしながら、あたしはそこで待った。


階段が見えた。彼が降りてくる。


そして……彼は、あたしを見た時、完全に固まった。


あたしは時間を無駄にしないで、彼に近づいた。


すると、彼は……パニック状態になったみたいに、いきなり走り出したわ。


ダメ。あたしは絶対に逃さない。


あたしも走った。陸上部に入ってることが役立つ時がきた。


校舎の中、そして外へ。アカデミーの広い敷地を走った。


走りながら、あたしは思ってた。


痛い。彼の苦しむ様子を見るのは、いつだって痛かった。だけど、これはもっと違う痛みなの。


胸の奥が空いてるみたいな。「それであたしは?」って声が、ずっと響いてるような。


なんで、彼の秘密がこんなに痛いんだろう?


ただ彼を助けられないからだけじゃなくて……


あたしが、唯一彼を助けたい。唯一彼を理解したい……そんなエゴがあるからじゃ……?


背中。彼の背中を見て、逃げていく姿が。それがすごく、すごく悔しかった。


見たくなかった。あたしの友達が、こんなに遠ざかっていくのが。


彼がだんだん疲れてくるのに気づいた。


あたしは叫んだわ。


「あたしを甘く見ないでよ、アレン!」


もっと速く。もっと強く。最後の力を使って、あたしは彼に飛びかかった。


ふたりとも、地面に倒れた。


痛かった。だけど、そんなの関係ないわ。


彼はね、もう逃げる気力がなくなったみたいに、観念したような感じで座った。


あたしも、すぐに彼の側に座った。すごく近いところに。


重い沈黙。


だけど、あたしは知りたいの。彼をわかってあげたい。彼が何に苦しんでるのか。


彼の秘密が痛い理由……


やっぱり、あたしが唯一になりたいからじゃ……むかつく!、本当に認めるのが辛いわ。


彼の頭は下がったまま。虚空を見てる。だけどね、体は今にも壊れそうなくらい、キンキンに張り詰めてた。


「アレンくん!」


彼は身を縮ませたけど、顔は向けなかった。


「お願いだから、去ってくれ。霧崎さん」


その声……ガラガラで。疲れ切ってた。それがあたしの心を突き抜けた。


「嫌よ。今回は違う」


彼の側に移動して、あたしは彼の横顔を見た。蒼白い顔。


「あたしは行かない。あなたがこんな状態の時に。あなたが何か隠してる時に」


彼が拳を握った。


「僕の問題だ。君の問題じゃない」


「バカじゃないの!」


あたしの中の怒りと、ここ数日の痛みが一気に爆発した。


「わかるじゃない!あのイベントでの質問……あれがアレンくんを壊した。すごく深い、あたしすら知らない何かに触れたから。なんで教えてくれないの?なんで信じてくれないの?」


彼が、あたしの方を向いた。その目は……あたしは今までに見たことのない、激しい苦悶で輝いてた。


「信頼の問題じゃないんだ!」


彼の声が崩れた。


「僕の……僕の罪だから。僕の過ちだから」


「罪?」繰り返した。その時、心臓が小さくなった感じがした。


「アレンくん、何の話してるの?」


彼が話し始めたわ。最初はぎこちなく。それから、言葉が決壊したみたいに流れてきた。


ひめかのこと。幼馴染みの女子。彼がね、唯一安全を感じられた相手だったこと。


彼女が彼を信じてくれてたこと。


そしてね……ある日、ひめかは交通事故に遭った。彼女の脚が傷ついた。


だけど、アレンくんは……恐怖に凍りついた。何もできなかった。


彼女はね、それほど重い怪我じゃなかったみたい。だけど……彼は心が壊れちゃった。


「僕は臆病者だ」


彼が、ボロボロになりながら言った。


「彼女をがっかりさせた。それからね……女性への恐怖が、フォビアになった。牢獄になった」


彼の体が震えてた。


「あの日から、女子を見るたびに、彼女の視線を思い出す。僕は足りない。足りなかったんだ」


何も考えずにね、あたしは彼を抱きしめた。


彼は、最初、ガチガチになってた。だけど……すぐに、あたしに崩れ落ちた。


彼の涙が、あたしの肩を濡らした。体全体で震えてた。


「聞いてよ、アレンくん」


あたしは、彼の背中をなでながら、言ったわ。声は震えてるけど、しっかり。


「あなたは臆病者じゃない。アレンくん、本当よ。臆病者がね、あの二年生の生徒に立ち向かったりしてないわ。臆病者が、クラスの代表になんてならないわ。臆病者が、こうやって、全部の痛みを抱えながら、あたしに話せないじゃない」


もっと強く抱きしめた。


「ひめかさんとの出来事は……ひどかった。でもね、それはあなたの罪じゃない。あなたは子どもだったの。怖かったの。知るはずないことを、知ってるはず、なんて思ったらダメよ。そんなの、永遠に背負えない」


彼が、さらに泣いた。


「あなたは一人じゃないってことを、わかってよ。アレンくん。アヤさんも、エリザさんも……あたしたちは、みんなここにいる。一人で幻に立ち向かう必要なんてないの」


しばらく、黙ったままで。ただ、彼を抱きしめてた。


ゆっくり、彼の震えが止まった。呼吸が落ち着いた。


彼がね、少し離れて、あたしを見た。


目は赤かった。でも……なんか、一番澄んでるような。


「ありがとう……りん」


あたしの名前。敬語もなく。つけさしもなく。


そのね、柔らかさ……親密さ……あたしの心臓が止まりかけた。


ああ、あたしは笑った。自分の疑いが、この瞬間に消えるのを感じながら。


一人じゃないんでいいの。唯一である必要なんてないんでしょ。


ただ、ここにいるだけでいいんだ。


「当たり前じゃない」


あたしは、彼の手を取った。


「いつだって、あたしはあなたの側にいるんだから。アレン」


彼がね、頷いた。そして、ずっと、ずっと見られたことのない平穏な表情が顔に戻った。


彼はね、完全に治ったわけじゃないだろう。あたしは知ってる。だけど……大きな一歩を踏み出した。


そして、あたしは、そこにいた。


その後、あたしはね、彼を見て言ったわ。


「アレンくん、あたしもね……あなたに話したいことがあるんだけど」


彼が、注意深く聞いてくれた。


あたしは話した。弟のこと。


最初、彼は驚いたみたい。だけど、だんだん、理解してくれた。


そしてね……彼がね、突然あたしの手に自分の手を置いた。何も言わずに。


彼はね、夜の空を見上げた。星がいっぱい出てた。


「君の空を見ている姿を見てると、特別な友人だって思ってた。僕に力をくれた。だから……信じたいんだ……一緒に進もう」


二人で、星空を見上げてた。


どのくらい、こんな風に座ってたのかな。あたしには、もうわからなかった。


ただ、一生こんなだったらいいなって……


その時、見たこともない先生が現れた。


こんな時間に、こんな場所にいるなんて、完全に規則違反だ。アレンくんと顔を見合わせた――案の定、二人まとめて『何をしている?』『こんな時間に?』『しかも二人きりで?』と詰問され、結局『すぐに寮に戻れ』と追い返されることになった。


少し、不格好な雰囲気になった。だけど、あたしには……なんか、面白かった。


その時、あたしはね、思ってた。


これでね、アレンくんは大きく変わるんだ。いい方に。


あの一つの質問が、なぜあんなにも彼を激しく揺さぶったのか……。幼馴染の彼女のことを語る彼を見て、あたしはようやく、その理由を理解した。


だけど、今度は違う。


今度は……あたしは彼と一緒にいるんだから。

価値は、誰が決めるのか。

名字か、成績か、それとも――意志か。


次回、

抑え込まれてきた感情が、ついに爆発する。

言葉では終わらない対立。

避けられないバトルの行方と、

試されるのは「強さ」ではなく、その在り方。


次回を、どうか見逃さないで。

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