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傲慢への挑戦

勝てない相手がいる。


それを理解した瞬間、

人は初めて“本当の恐怖”と向き合う。


これは敗北。

あるいは――

れでも立ち上がろうとする意志の記録だ。

みんなが位置につくのを眺めていると、学園長が今回のバトルの審判を紹介した。Aクラスの担任でもある六花先生だ。彼女には授業を受けたことがある。生物の授業を担当していて、とても厳しい先生だ。


六花先生が堂々とした足取りで審判の位置へ向かう。背が高く、落ち着いた雰囲気を纏っている。長い濃紺の髪が教室の照明を受けて輝いていた。その厳しい眼差しは、遠くから見ても威圧感がある。


バトルが始まる前に、各クラスの代表が言葉を交わした。


「真琴だ……よろしく〜」


そう言いながら大きなあくびをした。眠いのか……?


その隣にいる彼の相方は、身長は低いけど声が大きくて反抗的だった。


「あたしはルビー!最初に言っとくけど、あたしの身長のこと馬鹿にしたら許さないんだからな!」


Cクラスの生徒たちがその礼儀正しさに驚いていた。金髪の男子が明るい笑顔で最初に答えた。


「俺はテオ。ちびっ子ちゃん」


それでルビーさんが怒った。明らかにテオさんはわざと彼女を挑発しようとしている。


その相方の女子は腕を組んで諦めたようにため息をついた。まるで彼に関わりたくないみたいだ。


「テオ、相手を馬鹿にしてる場合じゃないでしょ……わたしはテア。よろしく」


よく見てみると、テオさんもテアさんも金髪で、男女なのに顔立ちがとても似ている……もしかして……双子なのか?


テオさんは明らかに不満そうにテアさんを指差した。


「おい、テア、もっと威嚇的に自己紹介できないの?もう一回やり直そうぜ、今度はびっくりさせるやつで!」


テアさんはため息をついて、予告なしに彼の頭を叩いた。


「もう十分よ、テオ!なんでいつもふざけるわけ?」


六花先生が声を上げて今回のバトルの制約を告げた。


「これが私の制約だ」


画面に次のように表示された。


『1. 地面から離れてはいけない』

『2. 連携攻撃禁止』

『3. バトル中、環境を利用してはいけない』


ルビーさんが眉をひそめて明らかに不満そうだった。


「なんだよ、このチャレンジ!厳しすぎるだろ!」


六花先生は答えなかった。その毅然とした表情は、異議を許さないことを明確に示していた。


「――開始!」


突然、予告もなく告げられた。


バトルが始まった。


バトルの中心では、真琴さんが地面を二つに割れそうな巨大なハンマーを持っていた。その隣で、ルビーさんが奇妙な見た目のマイクを握っている。すぐには理解できないスキルだった。二人の前では、双子のテオさんとテアさんが準備を整えていた。テオさんは、まるで生きているかのように動く二本の鎖がぶら下がったベルトを身に着けている。一方、テアさんには目に見える武器が何もなく、ただ戦闘態勢を取っているだけだった。


このことが僕の注意を引いた。もし何も見えないなら、もしかして彼女のスキルは僕の糸のように、何か繊細なものかもしれない。


でも、あまり推測している時間はなかった。目の前のバトルは、上級クラス同士の力関係を理解するために重要なものになりそうだ。


真琴さんがハンマーで地面を叩くと、強い地震が起こり、双子のバランスを崩した。しかし、二人はすぐに立ち上がった。


テオさんがテアさんに叫んだ。


「気をつけろ、テア! あいつら、俺たちに地面から足を離させようとしてるぜ。ジャンプしたら負け。周りの構造物を使っても負け。一緒に攻撃しても失格。これは一対一のバトルってわけだ……そして、それこそが俺たちに必要なものなんだよ!」


テアさんは軽蔑と楽しさが混ざった表情で彼を見た。


「珍しいわね、テオが考えてるなんて。普段は意味不明でつまらないジョークばかりなのに」


「ちょっと厳しくない?」


「別に」


それ以上何も言わず、テアさんは真琴さんに向かって走り出した。その速さは驚くべきものだった。真琴さんは身長もあり、ハンマーも重そうなのに、かろうじて避けることができた。でも、テアさんの攻撃を何発か受けてしまった。


彼女の攻撃を見ていると、テアさんのスキルは近接格闘系の身体能力強化かもしれない。


真琴さんは腕で身を守りながら言った。


「君のスキルは……純粋な身体能力強化っすか」


「そうよ。それが何か?」


テアさんは微笑んでから、真琴さんを数メートル後退させるパンチを放った。真琴さんは地面を引きずられたが、足は地面から離れていなかった。


テアさんは驚いたようだった。


「何なのよ、あんた? 巨体なのに、まだバランスを崩さないなんて」


その後ろで、ルビーさんは何もせず、ただ観察していた。これがテアさんをイライラさせたようで、彼女は標的を変えることにした。


「あんた、マイク持ってる女!なんで何もしないわけ?」


テアさんはルビーさんに向かって走り、また強力なパンチを繰り出そうとした。しかし、届く前に真琴さんが介入した。自分の軸を中心に回転し、ハンマーを振り回して、テアさんを後退させた。その一撃の威力で、周囲の空気が振動しているようだった。


反対側からテオさんが叫んだ。


「テア!大丈夫か?」


「……ええ!こっちは問題ないわ!」


テアさんは何もしないルビーさんが気になるようで、テオさんに叫んだ。


「テオ!あんたはマイクの女子を相手にしなさい!」


テオさんは注意深く観察した。


「マイクが武器って……どんなスキルなんだ? ジョークでも言うつもりか?」


それ以上分析する前に、真琴さんが再び巨大なハンマーで地面を叩き、双子を揺らした。止まることなく、彼らに向かって走った。その足取りは遅いが、確実だった。


今度はテオさんが反応し、鎖を投げて巨大なハンマーを捕らえた。


「それだけか?もうハンマーは動かせないぜ」


真琴さんは嘲笑うように微笑んだ。動かせなくても構わないという様子だった。


「確かに君は捕まえたな。でも、僕は持っている必要はないんだ」


ハンマーが分解し始め、その一部がテオさんに向かって飛んだ。テオさんは足が地面から離れないよう、ぎりぎりのタイミングで鎖を離した。しかし、その衝撃で気が散り、真琴さんの直撃を受けて背中から地面に倒れた。


真琴さんは状況を分析した。


「これで君たちはもうそのチャレンジを達成できないっすね」


真琴さんがCクラスのチャレンジ達成を不可能にしたのは見事だった。でも、双子は諦めるつもりはないようだ。


その間に、テアさんはチャンスを見て、ルビーさんに向かって走った。


「バカね!仲間を無防備にしちゃって!」


テアさんがパンチを繰り出そうとした瞬間、ルビーさんの前に防護フィールドが現れ、攻撃を防いだ。


「これは何? シールド?」


反応する前に、エネルギー波が彼女を後ろに吹き飛ばした。


ルビーさんがついに口を開いた。


「わかってないんだろ? あたしが今まで何もしなかった理由は、このチャレンジがあたしを制限しすぎてるからだぜ」


テアさんは困惑した表情で眉をひそめた。


「制限?でも……どうやって?」


テアさんは画面のチャレンジを素早く読み直した。ルビーさんのような人を特に制限するものはなさそうだった。


謎を解く前に、ルビーさんが再びエネルギー波を放ち、彼女を倒した。


「わからないのか? あたしのスキルは補助なんだよ。あたしは仲間を助けるためにいるんだぜ。あたしの攻撃手段はこのシールドと今使ったエネルギー波だけ。他は全部チーム次第なんだ。でも、このバトルはもう勝ったも同然だぜ。そして今……真琴さんの番だな」


テアさんは背後に真琴さんの存在を感じ、ゾクッとした。その圧倒的な存在感と放たれるエネルギーが感じられた。


真琴さんがハンマーを持ち上げ、全力で振り下ろした。デジタルフィールドが砂煙に包まれ、衝撃音がアリーナ全体に響いた。


真琴さんの周りの砂煙がゆっくりと消えていき、テオさんが全身で巨大なハンマーを支えている姿が現れた。彼の顔は努力で緊張し、呼吸が乱れていた。テオさんの下でまだ地面にいるテアさんは、信じられないという表情と怒り、そして心配が混ざった目で彼を見た。


「何してるのよ、バカ!?」


テアさんは彼を押しのけようとしながら叫んだ。


テオさんは歯を食いしばり、震える足で、二人を押しつぶそうとするハンマーから目を離さなかった。


「テア、ここから離れろ!」


テアさんは動かなかった。涙を抑えようとしながら、目が輝いていた。


「嫌よ!離れられないわ!」声が震えていた。


それ以上待たず、真琴さんはハンマーの機構を作動させた。火花が飛び始め、側面の推進装置が点火した。ハンマーが下に加速し、残酷な力で重量を増した。


最後の衝撃は決定的だった。地面が揺れ、小さな砂煙が上がった。


それが晴れると、六花先生の声が響いた。


「終了!勝者、Bクラス!」


テオさんとテアさんは地面に倒れ、向かい合っていた。テオさんはほとんど動けず、テアさんは手で目を覆い、悔しさで泣いていた。泣きながら、テオさんの腕を軽く叩き始めた。


「バカ!バカ!」涙の間に繰り返した。


テオさんはまだ地面に横たわったまま、かろうじて聞こえる囁きで答えた。


「仕方なかったんだ、テア……どうしても……」


遠くから、真琴さんがその光景を見て言った。


「君たち、良かったっすよ。落ち込まないで。十分努力すれば、君たちのスキルならBクラスに行けるかもしれないっすね」


真琴さんの言葉は善意のようだったが、まだ地面に座っているテアさんは怒りで反応した。


「何様のつもりよ、学年のエキスパート気取り!? たとえ上達しても、Cクラスを離れたくなんかない! あんたと同じクラスになんていたくないわ!」


真琴さんは驚いたように眉を上げた。


「えぇ?めんどくさいな……そう思わないか、ルビー?」


ずっと沈黙を守っていたルビーさんは、真剣な表情で双子を見ていた。


「確かに、十分努力すればクラスを変えることは選択肢の一つだぜ。でも、こういうバトルがこんなに深い対抗意識を生み出すのは面白いな。それが多くの人がクラスを変えたくない理由かもしれないだろ?」


しばらくして、校長がマイクを取り、昼休みの時間だと発表した。


え!?もうそんな時間?


時間があっという間に過ぎた気がした。


僕は霧崎さんと一緒に教室を出た。


ようやく学食で霧崎さんと一緒に座ることができた。トレーには料理が並んでいるけど、正直あまり食欲がなかった。


そんな様子に気づいたのか、霧崎さんが口を開いた。


「すごい一日だったわね!今までのバトル、かなり激しかったわよ」


「……ん」


「そうそう、各クラスそれぞれのスタイルがあって面白いわ。クラスBとクラスCのバトルは……なんていうか、違ってたわよね」


「……ん」


あ……また「ん」しか言ってない。それなのに、霧崎さんはまだ話しかけてくれる。


「どう思った?」


今度こそちゃんと答えなきゃ。霧崎さんを見た。目が合う。そのまま視線を外さずに口を開こうとするけど、言葉が出てこない。


でも……霧崎さんは違う。信頼できる。そうしなきゃいけない。だって霧崎さんは……ひめかじゃないんだから。


「まあ、真琴さんとルビーさんは面白いチームだったな……。テオさんやテアさんと比べると、スキルは基本的なものだったけど、戦略は完璧だった……。特に真琴さん。状況を読んで適応する能力が、勝利の鍵だったと思う」


霧崎さんが瞬きをしながら黙って見つめてきた。まるで何か新しいものを発見したみたいな顔で。いつもより多く喋って、しかも自分の意見まで言ったからだろうか。


「意外ね、そこまで言ってくれるなんて思わなかったわ」


恥ずかしい。喋りすぎたかもしれない。でも、霧崎さんは笑顔で続けた。


「でも嬉しいわ、あなたの考えを聞けて。本当にね」


霧崎さんへの信頼がどんどん増していく。本当に友達になれるかもしれない。もしかしたら、彼女がカギになるかもしれない。彼女となら、このイベントで勝てるかもしれない。


食事を終えて教室に戻った。なんだか自信が湧いてきた。このイベント、勝てる気がする——


でも、教室に着いた瞬間、現実の厳しさを思い知らされた。


忘れていた。圧倒的に強いクラスの存在を。Aクラスだ。


Fクラスがどれだけ勝ち進んでも、最終的にはAクラスと当たる。それは確実な敗北を意味する。


そんなことを考えている間に、学園長が次のラウンドの発表を始めた。


「勝利したAクラス、Bクラス、そしてFクラスは、この三クラスで対決し、最終的な勝者を決める。一方、Cクラス、Dクラス、Eクラスも同様に競い合ってもらう。彼らの健闘を讃え、追加ポイントを授けよう。参加者には30ポイント、クラスメイトには15ポイントだ。だが忘れるな、この三クラスの中からも、ただ一人の勝者しか生まれぬのだ」


画面にポイントの配分が表示された。最終ラウンドの勝者は、30ポイントに加えてチャレンジ達成分が加わり、最大50ポイントになる。Fクラスは今のところ20ポイント。そして、クラスへの補償は最終結果のほぼ半分だ。


教室は期待と緊張で満ちていた。第一ラウンドで負けた人たちにも、まだポイントを稼ぐチャンスがある。


学園長が続ける。


「第二ラウンドの参加者には、チャレンジ課題は無い。通常のバトルとなる。そして各敗退クラスに、一つずつチャレンジ課題を課す。二つのデジタルフィールドを個別に開き、両方のバトルを同時に行う」


つまり、この一戦で全てが決まる。それぞれが自分のバトルを戦い、終われば……このイベントは終わる。


正直、少しだけ希望が見えた。Bクラスもこのバトルにいる。もし彼らと同盟を組めば、勝てる可能性があるかもしれない。


それぞれのクラスが配置につく。クラスC、D、Eのバトルの審判はシンディ先生。そして、クラスA、B、Fの最終バトルの審判は……古橋先生だった。


担任の先生が、最終バトルの審判。


古橋先生はからかうような笑みを浮かべた。


「私が担任だからって、有利にしてあげないわよ?」


霧崎さんがすぐに答える。


「心配しないでください、先生。あたしたち、そんなこと思ってませんから!」


先生は頷いて、ルールの説明を続けた。


「このバトルのルールは通常のものよ。チャレンジ課題は無し。でも、エリミネーション方式ね。クラスを完全に排除するには、そのクラスの両メンバーを倒さなきゃいけないの。一人残っていれば、戦い続けられるわ」


つまり、クラス同士の完全排除バトルだ。


先生が各クラスの確認を始める。


「Aクラス、武蔵タロウさんとレミー・アボットさん、準備はいい?」


「はい」


二人が声を揃えて答えた。銀髪の彼——武蔵さんから、何か奇妙な雰囲気が漂ってくる。


「Bクラス、斑目真琴さんとルビー・スチュアートさん、準備はいい?」


「はい!」


ルビーさんだけがはっきりと答え、真琴さんはあくびをしながらぼんやりと返事をした。


「Fクラス、アレン・ウェバーさんと霧崎りんさん、準備はいい?」


「はい」


声が揃った。霧崎さんと同時に答えてしまった。不思議な感覚だった。こんなこと、今まで——


でも、考える暇はなかった。


デジタルフィールドが展開され、バトルが始まった。


今回のフィールドは、広大な砂漠だった。砂丘が連なり、廃墟のような構造物が点在している。空気が張り詰めている。各クラスが戦略を練り始めた。


お互いに見合って、誰かが最初の一手を打つのを待っている。


そして、沈黙を破ったのは——真琴さんだった。武蔵さんに向かって声をかける。


「なあ、お前……霧崎だっけ?」


真琴さんが気だるそうな口調で話しかけた。巨大なハンマーを肩に担ぎながら、彼は 武蔵さんを見据えている。


「先にFクラスを倒すために、手を組まないか?」


その提案は予想外すぎて、その場にいた全員の注意を引いた。 武蔵さんは驚いた様子を見せたものの、すぐに平静を取り戻した。彼の顔は落ち着いていて穏やかで、まるで常にすべてをコントロールしているかのように見える。


しかし、彼が答える前に、アボットさんが割って入った。


「私たちが単独で倒せないとでも思っているのですか?」


真琴さんは気だるげな笑みを浮かべて答えた。


「いや、そういうわけじゃないんだけどな……ただ、一緒にやった方が早いかなって思っただけっす」


アボットさんは不機嫌そうに鼻を鳴らした。そして、ついに 武蔵さんが口を開いた。その声は深く、静かだが、圧倒的な自信に満ちていた。


「Bクラスからの興味深い提案だな。面白い戦略を作る才能があることは認めよう。だが……」


突然、 武蔵さんは頭を真琴さんの方へ向け、真剣な眼差しを向けた。その目には利己的で優越感に満ちた何かが宿っている。


「協力する気はない。俺たちはAクラスだ。このバトルはもう勝ったも同然。むしろ、君たちが同時に俺たちを攻撃してきた方が面白いぞ」


その傲慢さが空気を満たした。言葉に込められた絶対的な自信は、耐え難いほどだった。


何かが僕の中で火をつけた。


考える前に、糸を 武蔵さんに向けて放っていた。だが、予想通り、彼は簡単に回避した。信じられないほど精密に動く幻影のコピーを使って。


反応する前に、アボットさんが僕の前に立ち、巨大な盾を掲げた。


真琴さんとルビーさんは本能的に後ろへ跳んだ。背後にいた霧崎さんは弓を張り詰め、いつでも矢を放てる体勢に入った。


しかし、デジタルフィールドは瞬く間に混沌と化した。


真琴さんが空中から落下してきた。ハンマーを振りかざし、アボットさんへ直撃コースだ。衝撃は凄まじかったが、アボットさんは盾で受け止めた。


真琴さんは驚いたように一歩下がった。


「こんな攻撃まで耐えられるのか……すげえな……でも……」


彼が言葉を終える前に、美しい歌声が響き渡った。


ルビーさんだ。遠くから歌い始めた彼女のスキルが、真琴さんを黄色い光で包み込み、力を増幅させる。


アボットさんが、ハンマーの重みで地面に沈み始めた。


アボットさんがもう耐えられないと思った瞬間、 武蔵さんが幻影のコピーを使った素早い攻撃で現れた。ほとんど不可能に見える動きで、真琴さんを蹴り飛ばし、増幅された力にもかかわらず、彼を空中へ吹き飛ばした。


遠くから観察しながら、疑問が浮かんだ。


あれは……一体どんなスキルなんだ? 武蔵さんは何を隠してるんだろう……?


「アレンくん、今よ! 武蔵さんを攻撃して!」


霧崎さんが躊躇なく叫んだ。


彼女の合図に従い、一緒に矢と糸を放つ。電気を帯びた網を形成して、 武蔵さんへ直撃させた。


攻撃は命中した。


だが、 武蔵さんは全く影響を受けていないように見えた。麻痺すら効いていない。


まるで怪物を相手にしているようだった。


その間、真琴さんが遠くで立ち上がり、ハンマーを取り戻そうとしたが――


アボットさんが盾で彼の道を塞いだ。


武蔵さんは何気なく、軽蔑的な口調で真琴さんに話しかけた。


「やあ、Bクラスにしては厳しい状況だな。君の仲間はここでは助けられない。いい声をしているが、それ以外は何もできない。ネズミのように隠れることしかできない。それだけだ」


武蔵さんの言葉が場に響き渡った。


そして、遠くから叫び声が聞こえた。


ルビーさんだ。怒り狂っている。


「おい、お前、偉そうに!何様だと思ってんだぜ!?あたしが前線で戦えないとでも思ってんのか!?ふざけんなよ!」


武蔵さんは嘲笑するような微笑を浮かべて答えた。


「おや、出てくることにしたのか。ネズミちゃんが……やあ〜」


ルビーさんは怒りで顔を真っ赤にして、彼に向かって歩き始めた。


真琴さんは必死に止めようとした。


「待てよ、ルビー!奴は挑発してるんだ!それが狙いなんだよ!離れてくれ!勝つには君が必要なんだ!」


だが、ルビーさんは聞いていない。 武蔵さんに向かって進み続ける。彼は優越感と軽蔑に満ちた眼差しで彼女を見ていた。


僕と霧崎さんの位置から、彼女は苛立ちを込めて僕を見た。


「アレンくん、このままじゃダメよ!Bクラスを助けましょう!Aクラスのやってること、止めなきゃ!見てるだけでムカつくわ!」


彼女の気持ちは共感できた。 武蔵さんは周囲の人間に憎悪を抱かせるようなオーラを放っている。


でも、計画なしに飛び込むわけにはいかない。


霧崎さんを見て、頷いた。


「わかった。考えがある……」

――次回。


圧倒的な力の前で、

何を失い、何を守れたのか。


勝敗が決した後、

本当に試されるのは“心”だった。


敗北が残した傷。

揺らぐ信念。

そして、誰かが見せる静かな変化。


アカデミーの戦いは、

まだ終わらない。


次を、どうか見届けてほしい。

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