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壁から恋人へ

恐怖は、消えるものではない。


どれだけ時間が経っても、

どれだけ遠くへ進んでも、

それは心のどこかに残り続ける。


けれど――

それとどう向き合うかは、自分で選べる。


逃げ続けることもできる。

閉じ込めたままでいることもできる。


でも、誰かがそばにいるとき、

その選択は少しだけ変わる。


守られるだけだった場所で、

いつの間にか、守りたいと思うようになる。


それは、強さなのか。

それとも――


ただ、誰かを大切に思った結果なのか。

(マリ)


夕焼けに染まった空は、オレンジとラベンダー色が混ざり合って、またひとつの春の午後が終わろうとしていた。砂利道を歩くわたしの足音が、エドワーの足音と不完全だけど可愛らしいリズムで重なる。彼は長くて計算されたような歩幅で歩き、わたしは小鳥が子鹿のペースに合わせようとするみたいに、速くて小さな歩幅で必死についていく。


胸の真ん中……思わずそう考えてしまった。


視線を前に向けたまま、自分の頭のてっぺんからエドワーの胸まで、想像の線を引いてみる。ちょうど胸の真ん中だ。もし少し背伸びしたら、わたしの額が彼の心臓の高さに届く。


温かくて満たされた感覚が胸の中に広がっていく。これは昔感じていたような、自分が小さいことへの不安の痛みじゃない。「足りない」って諦めた悲しさでもない。これは……幸せ。静かで、ほとんど馬鹿みたいな幸せ。ただ単に、わたしたちの体の幾何学から生まれる幸せ。


エドワーは背が高くて、肩幅が広くて、しっかりしてる。そして、彼の隣にいるわたしは信じられないくらい守られてる気がして、包まれてる気がして、まるで自分の小ささが欠点じゃなくて、彼の影の下にぴったり収まるための完璧なスペースみたいに感じられる。


突然、ひとつの考えがわたしを打った。


また彼を盾として見てるの……?


首筋に軽い赤みが上がってくる。違う、そうじゃない。もうそうじゃないと思います。最初は、多分そうだったかもしれない。でも今は……今はエドワーはエドワー。彼の沈黙が心地よくて、彼の真面目さの裏に隠れた乾いたユーモアをわたしだけが掴めるような気がして、剣道の竹刀を激しく握れる大きくて硬い手が、同時にわたしのボールペンの機構を驚くほど繊細に直せる、そういう人。


守ることを選んだ盾……心の中で優しく訂正する。門を作ることに決めた壁。そして、その鍵を持ってるのはわたしだけ。


いつも脱線しがちなわたしの頭が、時間を遡り始める。記憶の波と、木々の間を通る風の優しい囁きに引きずられて。


* * *


恐怖の原点。


男の人への恐怖。それはドラマチックな出来事じゃなかった。悪い男の人がいたわけでもなかった。それは……物理。純粋で、押し潰すような、人格のない物理だった。


六歳。夏祭り、何千もの提灯、焼き鳥と綿菓子の匂い。おもちゃ屋の店先で見たおもちゃに気を取られて、ほんの一秒、両親の手を離してしまった。一秒で十分だった。人の流れがわたしを飲み込んだ。


突然、わたしはもう子供じゃなくなった。大人の脚の川の中の、取るに足らない障害物になった。ズボン、わたしの頭上で話す低い声の群れ。


男の人たち。どこもかしこも男の人。丸太みたいな太もも、わたしとすれ違うときにぶつかってくる岩みたいな肩、たくさんの手……こんなにたくさんの手!……わたしを見ずに動いて、空気を押して、わたしを押して。


汗の匂い、タバコの匂い、ビールの匂い。笑い声、大きくて、頭蓋骨の中で響く笑い声。


息ができなかった。煙のせいじゃない。パニックのせい。押し潰される、消える、この男性の力の迷路の中に永遠に閉じ込められる……わたしを見てくれない力の迷路に……そんな生々しい感覚。


両親がわたしを見つけたとき、おもちゃ屋の前で丸くなって泣いて、震えていた。


恐怖が住み着いた。


理性的じゃなかった。全ての男の人が窒息させる群衆じゃないって理解できた。距離があれば話せた。でも、身体的な接触、近さ、囲まれる可能性……それがわたしの脳の原始的な警報を鳴らす。


危険。押し潰される。閉じ込められる。


中学校で、恐怖は洗練された。もっと社会的に、もっと鋭くなった。


クラスの男子たちが気づき始めた。近づきすぎるとわたしが硬直すること、ペアワークを避けること、男子の腕が肩の近くに置かれると笑顔が凍りつくこと。


「変なやつ」って囁かれた。「ビビりちゃん」。「男が嫌いなんじゃね?」


一つ一つのコメントが小さなナイフだった。嫌いじゃない、怖いんだって叫びたかった。憎んでるんじゃない、恐れてるんだって。でも言葉が詰まった。


恐怖は理解されないことで育ち、わたしはどんどん小さくなって、大きすぎて脅威でいっぱいに感じる世界の中で、できるだけ小さなスペースしか占めないようにした。


アカデミー・ハックウェイクに入学できたのは、成果だった。希望の光。Bクラスに入れたってことは、わたしが頭がいいってこと、有能だってこと。もしかしたらここで、新しい環境で、変われるかもしれない。克服できるかもしれない。


初日は、念入りに演出された悪夢だった。


席の配置がわたしを教室の真ん中に置いた。そして座ったとき、恐怖で見た。男子たちが……背が高くて、自信満々で、大声で話してる……わたしの左、右、前、後ろの席を占めていくのを。カジュアルな男性性の要塞がわたしを囲んだ。


彼らの体の熱を感じられた。呼吸が聞こえた。一つ一つの動きを察知できた。


社交的になろうとした。どもった。チームで働こうとした。頭がブロックされた。言葉が途切れ途切れに出た。一人で勉強してるときに浮かんだ輝かしいアイデアが、あの存在たちのプレッシャーの下で蒸発した。


最初の中間試験の成績は悲惨だった。


論理は反論の余地がなかった。プレッシャーの下では、成績が下がる。そして、わたしにとってのプレッシャーには、性別と身長があった。


Fクラスへの降格は学問的敗北じゃなかった。自分の神経系への降伏だった。


古橋先生が職員室でわたしたちに会いに来たとき、Fクラスに行く男子が他に二人いることがわかった。


最初に思ったのは……ああ、やだ、また男子!


一人目は、ボサボサの髪と、すべてを馬鹿にしてるような気楽な笑顔の男子。レン。


もう一人は……もう一人は背が高かった。少なくともわたしには建物みたいに見えた。そしてただ背が高いだけじゃない。がっしりしてた。肩幅が広くて、槍みたいに真っ直ぐな姿勢。彼のメガネは、彼の肩にやっと届くくらいのわたしの視点からだと、教室の光を反射して目を隠して、突破できない厳粛なオーラを作り出してた。


エドワーだった。


わたしは彼を観察した。いつもの恐怖の震えを感じなかった。感じたのは……興味。奇妙な好奇心。


彼はわたしがBクラスで感じてたみたいに、場違いに見えた。でも、それ以上の何かがあった。彼の静けさ、彼の身長、彼の背中の広さの中に、わたしは初めて、違う可能性を見た。苦い安らぎ。


盾……そう思った。明確に、自分でも驚くくらいに。閉じ込める盾じゃなくて、守る盾。その後ろに世界から隠れられる誰か。


Fクラスには、女子がもっといた。スペースがあった。息ができた……


* * *


脇にぶら下げてる指が、軽く握りしめられる。


もう盾のことは考えてない。考えてるのは、二年生のとき、廊下で騒ぎがあって、他のクラスの生徒がつまずいてわたしに突進してきたときのこと。パニックの本能で、わたしは目を閉じた……でも衝撃は来なかった。


エドワーが間に入ってくれた。わたしを押さなかった。掴まなかった。ただ立って、広い背中を脅威の方に向けて回転させて、鈍い呻き声でその衝撃を吸収した。


わたしが目を開けたとき、あの背中が見えた。緊張して堅くて、鼻からほんの数センチのところに。


「いつも男の人の手が怖かった。彼らの力が……でも、エドワーの背中は違う」……あのとき、まだ心臓がドキドキしながらそう思った。「大きい、そう。でも、攻撃するんじゃなくて、守ることを決めた壁みたいです」


あれがターニングポイントだった。壁には意志があった。そして、その意志は保護的だった。


* * *


わたしはまた一年生のときのことを思い出す。


最初、エドワーは距離を置いてた。冷たかった。Fクラスにいることに憤慨してるみたいだった。でも、それから少しずつ、レンの気楽な主張のおかげで、アレンを中心に形成されたグループのダイナミクスのおかげで、何かが変わった。


エドワーがリラックスし始めた。会話に参加するようになった。少ない言葉だけど、的確な言葉で。プロジェクトを手伝った。稀に、本当に稀に、口の端が上に曲がることもあった。


わたしは全部観察してた。


そしてある日、エドワーがわたしの宇宙でカチッとはまる一歩を踏み出した。


即席のバスケの試合の後、わたしが勇気を出して彼にパスしようとして、みっともなく失敗したとき、エドワーは笑わなかった。無視しなかった。近づいて、転がってるボールを拾って、わたしにしか聞こえないくらい低い声で言った。


「手首だよ。離すときにもう少し曲げるんだ」


それだけ。でも、わたしのために。公の場での訂正じゃない。嘲笑でもない。静かな指導。わたしだけの耳のための。


その瞬間、「盾」が非物質化して、人が見えた。


そして、わたしはその人を知りたくなった。


それからわたしは不器用に彼に近づき始めた。


会話は短くて、時には痛いほど不器用だった。


「おはよう、エドワーくん」


「……おはよう」


「元気……?」


「ああ。君は?」


「元気です!……いい天気ですね」


「そうだな」


「……」


「……」


そして沈黙。


でも、わたしは諦めなかった。なぜなら、何かを発見したから。人でいっぱいの廊下で、エドワーの後ろを歩くとき、世界が縮小した。彼の広い背中が視覚的に群衆をブロックして、安全な廊下を作った。パニックが届かない「影」を。


わたしはその影を求め始めた。必要性からじゃなくて、快適さから。喜びから。


フラストレーションはその後来た。もっと近くにいたかった。後ろじゃなくて、隣を歩きたかった。……触りたかった。彼の袖、彼の手。でも、わたし自身の恐怖、あの古い敵が邪魔をした。


苦悩する矛盾だった。体が恐れる近さを、心が切望してた。


それから、エドワーが、彼の静かで観察力のある方法で、わたしを助け始めた。目立たないように。


食堂のテーブルの上に、わたしのトレイの近くに手を置いて、食事に夢中なふりをした。わたしは心臓がドキドキしながら、指を一本、それから二本伸ばして、彼の手の甲に触れた。


何も起こらなかった。雪崩も、混沌もなかった。ただ彼の肌の温かさ、彼の指の関節の質感。


わたしの脳が、ゆっくりと、再調整し始めた。この接触は痛くない。この接触は……心地いい。


でも……


エーテリアルの危機の間、集団的な恐怖が個人的なものを超えた。でも、ひとつの瞬間が炎のように刻まれた。


混沌の真っ只中で、黒い服の男の一人がわたしたちに襲いかかった。わたしを守って、エドワーが打撃を受けて倒れた。


その瞬間のわたしのパニックは、男の人たちのせいでも、混沌のせいでもなかった。純粋で透明な恐怖だった。


エドワーを失いたくない。


考えずに、彼のところに走った。膝をついて、傷……だとわたしが思ったもの……に自分の手を押し付けた。血は出てなかったけど。彼の肌に触れた。彼の筋肉の震えを感じた。


拒絶はなかった。恐怖もなかった。ただ圧倒的な切迫感。


いてください。お願い、いてください。


エドワーがわたしを見た。驚いて、痛みの向こうから。そして、彼の目の中の何かが変わった。何かが柔らかくなった。


その瞬間、ひとつの恐怖が死んで、もうひとつが生まれた。彼を失う恐怖。


* * *


すべてが正常に戻った後、アレンと他のみんながアカデミーを再建した後、わたしの人生は信じられないくらい変わった。


わたしが行くところに、エドワーがいた。エドワーが行くところに、わたしがいたかった。


わたしたちは常に一緒の、静かだけど存在するデュオになった。図書館で一緒に勉強して、昼食を共有して、今みたいに寮への帰り道を一緒に歩いた。


そして気づかないうちに、心地いい沈黙と束の間の視線の間のどこかで。


わたしは自分自身に囁いた。風が顔を撫でる中で。


「エドワーに恋をしてる」


その啓示は静かだった。まるでずっとそこにあって、認識されるのを待ってたみたいに。ドラマチックな爆発じゃなくて、パズルの最後のピースが優しくはまる音。


そして今、夕暮れの空の下を歩きながら、春が最盛期で夏が角を曲がったところで待ち構えてる中、わたしは鋼のような決意を感じた。


最終学年だ。時間は止まらない。


もう待ちたくない。もう待てない。


「エドワー」


……わたしは言った。思ったより少ししっかりした声で。


彼が止まって、わたしの方を向いた。薄暗がりの中、メガネの向こうの彼の目が、注意深くわたしを見てる。


「何だ?」


わたしは唾を飲み込んだ。いつも活発なわたしの想像力が、もう十数個の拒絶シナリオを投影してる。彼が青ざめる、彼が気まずそうに笑う、彼が振り向いて永遠に去っていく。


「土……土曜日」


……始めた。リュックのストラップにしがみつきながら。


「街の反対側に、遊園地が開いたばっかりなんです。夜の観覧車がとっても綺麗だって聞いたんですけど」


一旦止めて、勇気を全部集めて、吐き出した。


「一緒に……行きませんか? デ……デートとして」


効果は即座で素晴らしかった。


エドワーの厳粛な表情が壊れた。目が少し開いた。激しい赤みが、弱まっていく光の中でも見えて、首から髪の生え際まで上がった。剣がチョコレートでできてるって発表された騎士みたいだった。


「ボ、ボク……」


……彼がどもった。こんなの聞いたことがなかった。


「デ……デート? ……き、君と?」


「はい」


……わたしは確認した。自分の顔も燃えてるのを感じながら。


「デートです。あ、あんたと、わ、わたし。一緒に。アカデミーの外で。楽しむんです」


エドワーが何度も瞬きした。それから、彼の真面目さが戻ってきた。でも、新しい何かで色づけられて。不器用な優しさ。


一度、しっかりと頷いた。


「ああ。行きたい。すごく」


わたしの心臓が嬉しそうに跳ねた。


やった……!


* * *


土曜日は明るい色、甲高い笑い声、綿菓子の日だった。


軽い春のワンピースを着て、それで緊張してたわたしは、入り口でエドワーと会った。彼はカジュアルな服を着てて、それが彼を奇妙なくらい……親しみやすく見せてた。まだ巨大だけど、親しみやすい。


一日は喜びだった。わたしはエドワーをすべての回転するカラフルなアトラクションに引きずった。彼は、いつもの真面目さで、メリーゴーランドやティーカップに、将軍が戦いを指揮してるような表情で乗った。わたしにはそれが無限に面白かった。


「メリーゴーランドでのあんたの顔……!」


……降りた後、息を切らして笑った。


「木馬の戦略的敗北を計画してるみたいだったよ……!」


「予測不可能な敵だったからな」


……エドワーが、とても真面目に答えた。でも、わたしだけが検出できる遊び心のある輝きが目の中にあった。


アイスクリームを食べた。彼はチョコレート、わたしはイチゴ。シューティングゲームで恐ろしく大きなぬいぐるみを獲得した。エドワーは不気味なくらい正確な照準を持ってた。


そして太陽が沈み始めたとき、わたしたちは大きな観覧車の足元にいた。照らされたゴンドラが藍色の空に輝き始めてた。


「最後のやつ」


……わたしは言った。期待を込めて観覧車を指差しながら。


「街の光を見るんです」


エドワーが頷いた。


列は短かった。すぐにガラス張りのゴンドラに入って、上昇を始めると優しく揺れた。


世界が遠ざかった。遊園地の騒音が遠くのざわめきになった。ゴンドラの中には、機構の柔らかい軋みだけで破られる親密な静寂が支配してた。


街の光が足元にダイヤモンドを散りばめたマントのように広がってた。


わたしは景色を見たけど、注意は完全に、向かいに座ってるエドワーにあった。


エドワーも窓の外を見てたけど、姿勢が硬直してて、手が手すりを掴んでた。……緊張してるみたいだった。


今しかない。シーンは完璧。心臓は強く打ってるけど、恐怖じゃない。期待で。


「エドワー」……始めた。同時に彼も言った。「マリ」


黙った。驚いて。見つめ合った。


「あんたが先」……彼が素早く言った。


「ううん、あんたが先」……わたしが主張した。


もうひとつの沈黙。


わたしは深呼吸した。わたしの想像力は、一度だけ、真っ白だった。存在するのは真実だけ。


「ボク……ずっと君に言いたいことがあって」

「わたし……ずっとあんたに言いたいことがあって」

……二人同時に始めた。


止まった。エドワーの目が大きく開いた。わたしの目も。


「君は……?」

「あんたは……?」

また、同時に。


緊張した笑いがわたしの唇から逃げた。エドワーが恥ずかしそうな笑顔を浮かべた。顔全体を照らす本当の笑顔。わたしがめったに見ない笑顔。


「どうやら……同じこと考えてたみたいだな」


……エドワーが呟いた。いつもより柔らかい声で。


わたしは頷いた。勇気が溢れてくるのを感じながら。


「一緒に言いましょう。三つ数えて」


エドワーが頷いた。彼の手が手すりを離して、膝の上に置かれた。緊張して。


「1」……わたしは言った。彼の目をじっと見つめて。


「1」……エドワーが繰り返した。視線を外さずに。


「2」……同時に言った。声が溶け合って。


ため息。共犯者のような笑顔。


それから、観覧車の上昇の頂点で、世界が足元にあって星空が頭上にある中、二人の真実を空に放った。完璧に同期して。


「好きです……!」/「好きだよ……!」


言葉がゴンドラの中で響いた。明確で甘く。


一秒間、呆然とした沈黙。


それから、わたしは笑いが喉の中で泡立つのを感じた。純粋な安堵と喜びの笑い。エドワーも笑った。低くて本物の音。わたしには一番美しい音楽に聞こえた。


「なんて不器用なんだろう、わたしたち……!」


……わたしは叫んだ。目尻から笑いの涙を拭きながら。


「二人とも同じこと計画してたなんて……!」


「みたいだな」


……エドワーが認めた。まだ笑顔が残ってて、顔を照らしてた。


「ボクは……ずっと君に言いたかったんだ、マリ。君がボクの後ろじゃなくて隣を歩き始めたときから。君が昼食でボクのスープの麺を盗み始めたときから。君の笑い声が、ボクが毎日一番聞きたい音になったときから」


わたしは息が足りなくなった。こんな風に話すエドワーは、わたしの感情の大量破壊兵器だった。


「そして、わたしは……」


……言った。震えてるけど明確な声で。


「わたしの避難所になることを決めた壁に恋をしました。ボールペンを直せる真面目な男の子に。完璧な照準を持ってる人に。彼の隣だと、わたしの身長が関係ないって感じさせてくれる人に。なぜなら、わたしがもっと背の高い人たちに囲まれてても、彼の視線はいつもわたしを見つけてくれるから」


近づいた。存在の最も深いところから来る力に突き動かされて。ゴンドラが優しく揺れた。エドワーは動かなかった。わたしを見てた。彼の目が街の光と、もっと何か、温かくてわたしだけのための何かを反射してた。


「じゃあ……?」……わたしは尋ねた。囁きのような声で。


「じゃあ……」……エドワーが言って、手を伸ばした。手のひらを上に向けて、わたしたちを隔ててる空間の上に。招待。橋。


「ボクの彼女になってくれないか、マリ? 約束するよ……君の壁になる、君の避難所になる、そして群衆の中でいつも君を探す人になるって」


わたしは自分の手を、小さくて柔らかい手を、彼の手の上に置いた。接触は電気的だった。でもパニックじゃない。家の感覚。


「はい」


……言った。その言葉が約束のように聞こえた。


「そして、わたしはあんたの麺を盗む人になります。下手な冗談に笑う人に。そして絶対に、絶対に、あんたを自分の真面目さの後ろで孤独に感じさせない人に」


エドワーが彼の指をわたしの手の周りに閉じた。彼の力を否定する優しさで。それから、ゆっくりと、わたしを怖がらせることを恐れるみたいに、前に傾いた。


わたしは目を閉じた。彼の温かい息を感じた。メガネの軽い接触、それから……唇の接触。


柔らかくて、恥ずかしがり屋で、不完全なキスだった。恐怖を置き去りにすることを学んでる二人の間の、中途半端なキス。


わたしにとって、閉じ込められてる感覚はなかった。ただ、まさにいたい場所にいる温かい安心感だけ。


離れたとき、二人の顔の赤みは遊園地の光と競い合ってた。


観覧車が下降を始めた。地面に戻していく。でも、二人の間の空気の中で、何か根本的なものが変わってた。


アカデミーへの帰り道、ほとんど空っぽの電車の中で、わたしはエドワーの肩に頭を預けた。彼の腕がわたしの肩の周りにあった。しっかりと、守るように。わたしは彼のもう一方の手の指と、ぼんやりと遊んでた。


恐怖に勝った。一日でじゃない。小さな一歩で、忍耐で、そして、わたしの幽霊への完璧な解毒剤になった男の子の静かな助けで。


分析して、理性化して、それが正確な瞬間に正面から攻撃することを可能にした。誰かに触れたいという欲望が、触れられることへの恐怖を超えた瞬間に。


わたしの人生が変わった。群衆の中で怯えた少女から、教室で震えてた女の子へ、そして今、愛してる男の子と手を繋いで歩く若い女性へ。彼の大きくて安全な手のひらがわたしのを包んでるのを感じながら。


未来を見つめて、いつも豊かなわたしの想像力が、発射した……


* * *


エドワー、大人になって、フォーマルなスーツを着て、小さなアパートのキッチンでわたしのために料理しようとして、ご飯を焦がしながら極度の集中の顔をしてる。わたしが笑って、彼の手を取って、やり方を見せてる……


わたしが、未来の子供たちに話してる。子供たち……! それを考えただけで顔が燃えた。パパがどれだけ背が高くて、どんな棚にも届けるか、そしてママは踏み台を使わなきゃいけないけど、パパが何か必要なときはいつもママを持ち上げてくれるって……


エドワー、年を取って髪が白くなっても、まだわたしの隣を歩いてて、まだわたしを小さくて守られてるって感じさせてくれる。そして、わたしは、まだ彼の影の中に同じ慰めを見つけてる……


* * *


微笑んで、彼の手を握りしめた。


「何考えてるんだ?」


……エドワーが尋ねた。耳の近くで低い喉を鳴らすような声。


「未来のこと」


……わたしは認めた。恥ずかしがらずに。


「あんたとの未来。そして……すっごく、すっごく、すーっごくいい感じです」


エドワーは何も言わなかった。ただ肩をわたしに押し付けた。静かで完全な同意のジェスチャー。


電車が進んでた。次の駅へ、学校生活の最後の区間へ、共有される最初の多くになると約束する夏へとわたしたちを運んでた。


わたしは目を閉じた。車両の振動、エドワーの温かさ、そして、ついに、世界からの避難所だけじゃなくて、人の中の家を見つけたっていう静かな確信を感じながら。


大きくて、しっかりしてて、素晴らしくわたしのものの家を。

次回――


アレンは二回目の挑戦に直面する。今回はアヤと一緒に。


言葉にしようとした瞬間、

現実が歪み始める。


逃げ場のない空間。

向き合わされる“自分自身”。


強さも、弱さも、過去も――

すべてが形を持って迫ってくる。


壊すことはできない。

無視することもできない。


ならば、どうするのか。


本当に向き合うべきものは、

目の前の敵ではない。


心の奥にある、“認めたくない自分”。


それを受け入れたとき、

ようやく出口は見えてくる。

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