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双子の同期する思考

人は、他人の物語をどこまで“理解”できるのだろうか。


遠くから見れば、すべては単純に見える。

感情も、選択も、結末さえも。


まるで、整理された“記録”のように。


だが――

その内側にあるものは、決してそんなに整ってはいない。


矛盾し、揺らぎ、壊れかけながら、

それでも必死に形を保っている。


だからこそ、距離を取る。

だからこそ、踏み込まない。


それは賢さか。

それとも、ただの逃避か。


観るだけで済むのなら――

それはどれほど楽なことだろう。


けれど、物語というものは、

時に“観ている者”さえ巻き込んでいく。

(テオ)


昼休みの空教室には、独特の音響があった。遠くで唸る暖房の音、時折きしむ家具、窓に触れる桜の枝を揺らす風のささやき。大半の奴らにとっては、ただの静寂。俺にとっては、いつも頭の中でカタログ化してる秘密のシンフォニーに完璧なサウンドトラックだ。


目の前には双子の妹、テアが弁当箱を置いてる。いつものように机を向かい合わせにして、お互いの顔を見ながら食べられるようにセッティング済み。俺とテアにとって、これは儀式みたいなもんで、その理由は……


俺は自分が美しいって知ってる。そしてテアを見れば、彼女も美しいってわかる。だって、鏡を見てるようなもんだから。


他の奴らには変に聞こえるかもな。だからこそ、これは秘密にしてる。妹に対してナルシストな俺と、兄に対してナルシストなテア。この奇妙な在り方を。


二人とも黙々と咀嚼してる。同じ珍しい灰青色の瞳が、空っぽの教室をスキャンする。まるで朝の会話の残響が見えるかのように。


今日の空気には……期待の味がするな、と思いながら卵焼きを一口。いや、これはただの母さんの醤油かも。でも違う、絶対に期待だ。


内なる視線――いつも録画してる実体のない監視カメラみたいなもん――が巻き戻し始める。


エドワーとマリ。


エドワー、真面目でちょっと不器用な奴が、今朝廊下を通りかかった時のこと。控えめにしようとした視線が、みことアニメーションで話してるマリに注がれた。社交的な一瞥として許される時間より2.3秒長く。反対方向に歩いてる時でさえ、肩の角度が彼女に向かってわずかに傾いてた。先週マリがカバンに躓いた時、エドワーは0.8秒で彼女の側にいた。剣道の戦士に匹敵する反応時間で、普通の生徒じゃありえねぇ。


弁当に向かって微笑む。わかりやす過ぎ。可哀想なエドワーは自分の感情に溺れてやがる。エーテリアルの危機が二人を結びつけた、確かに。でもその絆は変化した。今じゃ自分で自分に縛りつけた縄だ。告白して、三流ツンデレみたいな演技やめりゃいいのに。まあ……黙って苦しんでるの見るのは、結構面白いけどな。


レーダーみたいな頭が、ソーシャルマップの別のデータポイントに移動する。


レンとユキ。


ああ、これは層のある話だ。ドラマチックな玉ねぎみたいな。Dクラスの女子、ユキが教室の前で見張りを始めた初日から気づいてた。あの姿勢はストーカーじゃなく、歴史を背負った番人、待ち続ける者のそれ。そして裏庭への散歩。遠くからでも、二人の背中の緊張と荒々しい手の仕草で「読める」議論。


過去の恋人たちの再会、と頭の中でカタログ化。表面的には有害な関係だが、その核には痛いほど深い相互理解がある。お互いをよく知り過ぎてるから、あんなに正確に傷つけ合える。それでも……また会ってる。レンは成長した。冗談の外で脆弱になる勇気を持ち始めてる。興味深い。


注意は不可避的に、教室の重力の震源地へと移動した。窓際の机。


アレン。


ゆっくり噛みながら、アレンが座る空間を観察する。不在でもオーラが見える。最近、彼の目には激しく新しい決意が輝いてる。去年の不安げな混乱を置き換えて。まるで嵐の中を漂流してた船が、ついに灯台を見つけて、確かな手で帆を調整してるみたいだ。灯台が……複数の光を持ってても関係なく。


りん、アヤ、エリザ、かんな、と俺は列挙する。異なる軌道だが一定の四つの衛星。そして今……リリス。


笑みが少し鋭くなる。新しい変数、予測不可能で、冷たい科学的好奇心と、リリス自身も完全には理解してなさそうな何かに満ちてる。アレンの太陽系に新しく到着した惑星、独自の奇妙で金属的な重力を持つ。


科学が多過ぎ、と頭の中で顔をしかめる。計算が多過ぎ、変数が多過ぎ。リリスは頭痛の種だ。防弾ガラスの向こうの危険な実験みたいに、遠くから観察する方がいい。


リリスを脇に置いて、もっとシンプルな領域を好む。


朋也とみこ。


ほとんど聞こえないため息が唇から漏れる。あの二人はクラスの「普通組」、健全な結合組織だった。いや、そうだった。みこの変化は数週間前に検出してた。朋也といる時の笑い声が、半音高い。朋也が何か聞くと、指がペンのキャップで遊ぶ。静かで甘い惹かれ合い、紅茶に溶ける砂糖みたいに。


そしてもう一つのデータがある。みこが知らないやつ。朋也とウェンディへの執着。失敗したテキストメッセージ、男子トイレの鏡の前での告白のリハーサルを見てきた……ああ、俺の耳はそこにも届く。


可哀想なみこ、と思う。残酷さではなく、二人のキャラクターがロマンチックな崖に向かって歩いてるのを見る歴史家の諦めた憐れみで。彼女の心は自由落下の準備をしてる。そして俺は最前列の席を持ってる。期待は美味い。


飽くなき頭は時間を遡り、もうこの廊下を歩かない人々へと飛んだ。


アルム。


いじめっ子。はっきり覚えてる。拳と挑戦の嵐、いつも次の喧嘩を探してた。銀太郎が立ちはだかるまで。暴力じゃなく、あの押し潰すような、静かで絶対的な存在感で。そしてアルムは……消えた。平和主義者になったわけじゃない、それはわかる。闘争はまだ内側で煮えたぎってる。でも今は、押し付けられた敗北の石板の下に封印されてる。卒業式で見た。彼の目にあったのは受容の平和じゃなく、降伏の苦さ、より大きなものへの恐怖から自分の本性を裏切る者の不満足だった。


自分に正直じゃない、と俺は結論づける。笑みが満足げに浮かぶ。そしてその不正直さは、彼が始められたどんな喧嘩よりも興味深い。


遊び心のある笑みが唇に浮かぶ。テアの唇にも同じ笑みが現れる完璧な反射。彼女が俺を見た、片眉がわずかに上がって。


「何考えてんの?」


質問するけど、きっともう知ってる。


「情報のヒエラルキーについて」


と話を逸らす。


「黒田海斗を思い出してた。Aクラス。自称『最高の情報屋』」


明るく嘲笑的な笑いが漏れる。テアがすぐにコーラスする。


「なんて傲慢! あいつの手法は不器用で、情報源は見え見え。おもちゃのトランシーバーでスパイごっこしてるガキが、軍事通信を傍受してると信じてるようなもんだったな」


頭を振る。軽蔑と憐れみが混ざって。


「影に埋もれた。騒がしいライバルにじゃなく、静寂に。もっと効率的で目立たないデータ収集システムの単純な存在によって」


テアと目が合う。俺たちみたいなシステム。


「気づきもせずに無関係の中に消えていった。影にもっと誰かがいたことすら知らずに。ほとんど詩的だ。いや、哀れか」


柔らかく嘲笑的な笑いを抑えられず、空教室に響く。テアが聞かずに同じ笑いを放つ。エーテル的な繋がりで同じ冗談を共有してるかのように。


エーテリアルの危機の間、海斗が小さなノートを持ってあちこち走り回り、神秘的な空気でささやいて、世界の秘密を解き明かしてると信じてたのを観察してた。


海斗の記憶が、もう一人の情報工作員へと導く。もっと有能で悲劇的な。


神代ヨルム。


あいつは面白かった。最初は解読困難なコード。忠誠、野心、深い孤独の層。一年の体育祭を頭の中で再生する。競技場を横切るりんを追うヨルムの視線。りんへの感情的再構成が最も明らかなデータだった。彼のアルゴリズム全体を変えた。脆弱にした。


ほとんど聞こえないため息が唇から漏れる。


「結局、痛みは彼の方程式で高過ぎる定数になった。最も過激な解決策を選んだ。環境から変数を消去。転校した。戦略的撤退か、哀れな逃走か。角度次第だな。現状のデータが取れないのが残念」


戦略と撤退に言及すると、もっと恐るべき存在が思考に侵入し、思わず背筋に震えが走る。


「銀太郎……」


低く名前を言う。まるで召喚できるかのように。変数じゃない。力だ。アカデミーの自然法則。元生徒会長の存在は、雷鳴の残響のように廊下に重くのしかかってる。俺は知ってる。操り人形に触れずに糸を見てきた者の絶対的確信で。銀太郎が影の建築家だったことを。エーテリアルのこと、アカデミーの秘密、盤上の各プレイヤーの弱点を知ってた。餌を用意し、駒を配置し、自分自身と対局する神の冷静さで出来事の連鎖を解き放った。


知り過ぎてた、と思う。久しぶりに小さく感じた。取るに足らないからじゃなく、対比で。俺自身の知識は受動的、観察的。銀太郎のは能動的、創造的、決定論的。


今どこにいる? エリート大学で秘密結社を再編成してるのか? それとも暗い場所で、俺でさえ嗅ぎつけてない謎を解明してるのか?


その考えは同時に魅惑的で恐ろしい。


もっと世俗的な安堵を求めて、頭が鉄王征一郎に突き当たる。ひめかのAクラスの小さな独裁者。ほとんど憐れみを感じる。旧システムが残した真空に、規律と恐怖の帝国を築こうとしたガキ。世界がもう変わってることに気づかず。おもちゃの暴君で、壮大なヒーローじゃなく、クラスメートの単純な社会的圧力で打倒された。卒業はした、ああ。でも良くて悲劇的なピエロ、悪くて無関係ないじめっ子の汚名を背負って。


弁当を食べ終え、満足げなカチッという音で閉じる。顔を上げてテアを観察する。ナプキンで几帳面に唇を拭いてる。生きた鏡で自分自身を研究するように、彼女を研究する。外見的にも内面的にも、ほとんどの面で、彼女は俺の完璧な反射だ。同じ顎の正確なライン、同じ眉の曲線、表面だけじゃなくその下のデータ層まで見えそうな同じ瞳。


いつものように、目の前の生物に対して深い美的・知的賞賛を感じる。


自己中心的? 多分な。でも反射が文字通り完璧な時、賞賛しないわけにいかないだろ?


お互いに微笑む。相手に向けた笑顔じゃない。相手というプリズムを通して自分自身に向けた共有された笑顔。相互賞賛と絶対的理解の閉じた回路。


確信してる。俺たちの頭は似たように考える。繋がってる……だろ、テア?


* * *

(テア)


そう、テオ。あなたが何を考えているか、見ているだけでわかるわ。これが双子を持つ奇妙さ?それとも、世界の誰も持っていない、新しいレベルの相互理解?


テオがファイルの変数と権威の人物を見直している間、わたしの心は違うデータセットをナビゲートしていた。同じく広大だけど。思考はテオと同じように系統的だったけど、特定の……異常に関しては、もう少しニュアンスのある直感で色づけられていた。


弁当は空っぽ。でも、観察の宴は続いていた。


視線は窓に向けられていたけど、何にも焦点を合わせていなかった。実際には内側を見ていた――個人データベースの最も不穏なレコードへ。


アレクサンダー・アッシュフォード。


その名前は口の中に金属的な後味を残した。まるで電池を噛んだみたいに。わたしとテオは正しい場所に……いや、間違った場所に、正確なタイミングでいた。中庭の茂みと大きな木の幹の後ろ。見られずに観察していた。


アレクサンダーがくるみ先輩を追い詰めるのを見た。空気が冷たくなるのを見た。既知の物理学すべてに逆らう何かの火花が、あの磨かれた木片――彼が「杖」と呼ぶもの――の先端から生まれるのを見た。


そして、あのデバイス。


催眠的な青い光。


くるみの表情。最初は恐怖、次に完全な混乱、そして最後には虚無。


本物の、不快な悪寒がわたしの背骨を走った。


魔法を目撃したんじゃない。侵害を目撃したの。心の、記憶の、現実そのものの侵害。


くるみ先輩、可哀想に……


箸を強く握った。


あれだけの努力、あれだけの調査が、……あれによって無に還元された。


そう。あれ。


それが適切な言葉だった。


アレクサンダーは「彼」じゃない。「人」という用語は人間的すぎる、温かすぎる。アレクサンダーは「あれ」。異なるルールの下で動作する存在、わたしが理解できない、理解したくもない道徳を持つ存在。


呪文の前に捉えた会話の断片から知っていた。「七家」のこと、「アカデミー・エンディミオン」のこと。


それが意味するのは、泳ぐには深すぎる、暗すぎる水だということ。観察者としてでさえ。


距離を保つのが最善ね……


心の中で、ドクロとクロスボーンでマークされたファイルを閉じるように決めた。


ゴシップの中には、入場料に見合わないものもある。


心は対照を求めて、それを見つけた。強力だけど深く人間的な別の人物に。


武蔵。


元生徒会長。偽りの王。いや、冠をかぶった駒。


わたしは彼を、病んだシステムによって腐敗した野心の標本として分析していた。でも、最も興味深いのは彼の鎧の亀裂だった。


レミー。


十分に調査した。レミーと武蔵の幼馴染関係。「アカデミー」という言葉が建物以上の何かを意味する前に築かれた絆。


階層システムが彼らの友情のアルゴリズムを破壊した。武蔵は定数レミーよりもポジションを優先した。壊滅的な評価ミス。


でも、わたしは感情パターンを見る目を持っている。もっと見えていた。


レミーは彼のマトリックスに残っている。痛みを伴うデータポイントだけど、残留する忠誠心も含まれている。そして武蔵……彼のコードは後悔で溢れている。


好奇心に満ちた、ほとんど期待するような笑みが唇で遊んだ。


もうすぐ。処理されていないエラーの圧力が臨界点に達する。彼は接続を再初期化しようとする。痛くて、不器用で、完全に人間的。


そして、わたしはそれを見たいの。


森宮杏奈を思い浮かべると、良い気分は消えた。


元生徒会の秘書。縮こまって、目に見えなくて、世界でできるだけ少ないスペースを占めようとしている。その精神的イメージだけで、ある種の実存的な吐き気を引き起こした。


あれほどの臆病さ、あれほどの諦め。飛び方を忘れて、空を切望することさえしない鳥を見ているみたい。


苦手……


後悔なく、自分自身に認めた。


彼女の弱さは伝染性。


でも……


笑みが戻ってきた。違う、もっと計算的な笑み。


思い出した。誰かがいた。


完士。


彼は彼女を見始めた。家具としてじゃなく、人として。小さなスペースを与えた。間接的な励ましの言葉。


彼女はまだ気づいていない。いや、気づくことを許していない。でも、変化はそこにある。潜在的に。


そして目覚めたとき……ああ、その臆病さがついに割れたとき、ダムが壊れるような力になる。


痛み、そう。でも成長も。


そして、わたしはそこにいる。ポップコーンを持って。


窓を見上げた。春の太陽が木々の影と遊んでいる場所。


思考は最終バトルの仲間たちへと飛んだ。


小次郎。


現生徒会長。


本物の賞賛を感じた。いつもの皮肉から清められた賞賛。


小次郎はアレンの完璧な補完だった。アレンが心、感情的な磁気の中心なら、小次郎は背骨、実用的な構造。エーテリアルが残した混沌を機能的な秩序に変えている。暴君の気取りなく、巨大な内面の強さを物語る静けさで。


もう一人のアレンを見ているみたい……でも、感情の方程式をもっと整然と解決した人。いや、もしかしたら、ただもっと上手くファイリングしているだけかも。


視線はテオに向いた。


双子の弟。もう一人のわたし。


最後の米粒を噛んでいた。思考に耽っている。横顔はわたしと同じ。


その瞬間、わたしたちを支配する奇妙なシナジーが作動した。


テレパシーじゃない。もっと深い、もっと生物学的な何か。存在の同期。


「……テア?」


顔を上げた。その目がわたしの目を見つけた。


「気づいてる?今日の空気……ファイリングされてる感じ。終わった物語と、最初の行を書こうとしている物語で満ちてる」


彼と同じ角度で首を傾けた。


「うん。でも、最も興味深いファイルはいつも目の前にあるもの。わたしたちのもの。二つの同一のデータセット、同じ世界を処理している。冗長?それとも……神のバックアップ?」


お互いを見つめた。同じ笑み――斜めで、共有された秘密に満ちた笑みが、両方の顔に咲いた。


虚栄心に満ちたジェスチャーだった。世界に向けてじゃなく、もう一人の中にある生きた鏡に向けて。お互いを通して自分自身を賞賛していた。


「科学は、一卵性双生児がDNAの100%を共有するって言ってる。でも、魂も共有してる?それとも、わたしたちは分裂した一つの魂で、今は自分自身の反射に魅了されて観察してるの?」


「観察?それともナルシシズム?別の人間の中に自分の顔を賞賛するのは、自己中心主義の極みだよな。でも、俺たち両方がやってたら、相殺される?それとも増幅?」


テオは完璧な髪に手を通した。


わたしも同時に同じジェスチャーをした。


「わたしたちは究極のゴシップ。誰にも話さない唯一のゴシップ。プライベートファイル、二重セキュリティ、双子の暗号化付き」


笑った。柔らかく同期した音が教室を満たした。


シュールで、コミカルで、深くて、同時に些細な会話だった。何キロも離れて同じことを考える双子の研究について、違おうとしても同じ服を着てしまう奇妙なファッションについて、最もプライベートな思考の中でさえ決して一人じゃない不快感と快適さについて話していた。


* * * * * *


「究極の双子クエスチョンってやつさ」


と俺は切り出した。


「もし俺たち二人のうち、どちらかが完璧な犯罪をやらかしたら、もう一人は感じ取れるのかな?それとも、知らないうちに完璧な共犯者になっちまうのか?」


「わたしは共犯者説に賭けるわ」


とわたしは答えた。


「アリバイはないけど、精神的な証人はいる。無実なのに、限りなく怪しい」


互いを見つめ合った。同じ唇のカーブ、同じ目の輝き、同じ微妙に傾いた姿勢。相手を見ることは、自分自身を見ることだった。


互いに賞賛し合う。それは個人的な虚栄心じゃない。共有された自己愛。ナルシストか?もちろんそうさ。でも俺たちのエゴは二重の存在、二核細胞みたいなもんだ。自分を愛することは相手を愛すること。その逆も然り。完璧な回路。自己完結していて、永遠に魅力的。ただし、メンバーはたった二人だけ。


「面白いわね」


とわたしは口を開いた。会話がメタ的になる時の、あの思索的なトーンで。


「双子のシンクロニシティ。研究によれば、遺伝的相関、同一の環境曝露、無意識のマイクロシグナル……」


「……でも、その深さの理由は説明できねぇんだよな」


と俺は続けた。リズムに乗って。


「なんで理論上同じインプットを受ける二つの別々の処理ユニットが、似たようなアウトプットを出すだけじゃなく、リアルタイムで思考プロセスまで共有することが多いんだ?」


「テレパシー?」


とわたしは修辞的に問いかけた。


「神秘的すぎる。データ不足」


と俺は却下した。


「でも、このアカデミーで起きたこと全部見た後じゃ、もうどんな可能性も否定できねぇけどな」


「他人には知覚できないほど微妙なボディランゲージとマイクロ表情で、双子ユニットだけが瞬時にデコードできる言語?」


「その方が可能性高い。それでも、この……二重性の中の一体感を説明するには不十分」


沈黙が訪れた。自分たち自身という謎を楽しんでいた。これは俺たちのお気に入りのテーマ。完全なデータを持っているのは俺たちだけなのに、それでも完全には解けないパズル。


「わたしたちは一つの観測者存在なのよ」


とわたしは最終的に言った。


「感覚範囲を倍増させるために二つの身体に分割された。データ収集のための効率的な進化戦略」


「それとも俺たちは二つの別々の存在で」


と俺は悪魔の代弁者を演じた。


「類似性があまりにも正確すぎて、一体性の錯覚を作り出してるだけかもな。肉と骨の蜃気楼」


「違いって重要?」


声が重なった。そして微笑んだ。質問とそのシンクロこそが答えだったから。


黙り込んだ。共有された沈黙を楽しんでいた。宇宙のデータ収集システムの二つの半分である確信を。


これまで色々見てきた。色々知ってる。そしてその大部分は俺たちだけのもの。宇宙的ゴシップ、人間ドラマ、超自然的謎の秘密の宝物。自分たちだけのプライベートな楽しみのためにアーカイブされている。


わたしたちを満たす興奮は単純な喜びじゃない。コレクションが決して完成しないと知っているコレクターの貪欲な好奇心。


寮で、部活動で、クラスメートの心の中で、どんな新しいストーリーが生まれているのか?先生たちはどんな秘密を隠している?この三年目の見かけ上の日常の下で、どんな陰謀が展開されるのか?


期待感は美味しかった。


また声を出して笑った。空っぽの机の間に響く、絶対的な共犯のサウンド。


まさにその瞬間、教室のドアが開いた。


アレンが最初に入ってきた。続いて、特に赤面していて視線を避けているりん、猛スピードで喋るアヤ、何かのメンタルノートを取っているエリザ、優雅な影のように静かに歩くかんな。


グループは急停止した。机に座った俺たちを見て。領土を占領した二匹の猫みたいに。


アヤが最初に反応した。腰に手を当てて。


「ねぇ!あんたたち二人、ここで何やってんの?陰謀?それとも『観察と不介入部』のセッションが昼休みにあるわけ?」


俺とわたしは同時に振り向いた。同じスピード、同じ角度で。顔には同一の至福で秘密めいた無邪気さが浮かんだ。


「陰謀?」と俺は言った。わたしの声と完璧にエコーして。


「わたしたちはただ……」とわたしは続けた。


「……昼飯食ってただけだぜ」と俺は締めくくった。


そして微笑んだ。


アヤの広くてオープンな笑顔でもない。りんの恥ずかしそうな笑顔でもない。エリザの計算された笑顔でもない。


俺たちの笑顔。


すべてを見て、すべてをアーカイブして、次に何が来るか待ち望んでいる者の笑顔。


あんたたちのドラマは俺たちのエンターテインメント。そして俺たちは、あんたたちが持つ最も注意深く静かな観客だ、と語る笑顔。


アレンが一瞬俺たちを見た。奇妙な直感が目を通過した。それから、ただ頷いた。また一つの小さな謎を受け入れるように。グループを席へと導いた。


俺とわたしは最後の視線を交わした。同一の目に満足の輝きが宿った。


ショーは、いつも通り、続いていく。


そして俺たちには最高の特等席がある。


世界は未完の物語で満ちている。収集すべきデータ、予測可能で驚くほど予測不可能な方法で相互作用する変数。


そして俺たち、双子、沈黙のアーキビスト、エゴイスティックで完璧にシンクロした観察者は、ネットワークの中心にいる。すべてを見て、すべてを記録して、共有された心の親密さの中で静かに笑っている。この栄光に満ちた、複雑で、永遠にエンターテイニングなスペクタクルに。


カサンドラ、新しい演劇部の部長の物語を見るのを待っている。Aクラス……しずくがいたクラスの鈴木健二の物語も。もうここにいない生徒たち、キバやノーランド・グリムストーンの物語も。


最後に微笑んだ正確な瞬間、グループの注意が逸れる直前……最初に話したのは俺だったか?それともわたしだったか?


それとも声があまりにも完璧に融合して、質問自体が意味を持たないのか?


謎は、俺たちを取り巻くすべての謎と同じように、アーカイブされた。


観察者の裁量で。

次回――


ついに、アレンの人生を変える最初の一歩が踏み出された。


言葉にしなければ、伝わらないものがある。


どれだけ迷っても、

どれだけ怖くても、

それでも――踏み出さなければならない瞬間がある。


選ぶということは、何かを捨てることなのか。

それとも――


すべてを抱えたまま、進むということなのか。


静かな場所で、

ずっと抱えてきた想いが、ようやく言葉になる。


それは綺麗なものではない。

完璧でもない。


それでも、確かに“本物”だった。


そして――

その言葉が届いたとき、

何かが変わり始める。

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