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コソダテノコツ

作者: 小雨川蛙
掲載日:2025/12/18

デリケートなお話です。

閲覧には十分に注意を。

 隣の家のA子が筆を折ったと聞いた。

 無理もないことだと思った。

 何せ、隣の家は叱る教育だったから。


 好きで始めたことでも毎日のように「出来ていない」、「何故できない」、「これでは将来プロにはなれない」なんて言われたら心が病むだろう。


 隣の家のA子は可哀想だ。

 大好きなものが大嫌いになって終わったのだから。



 *



 隣の家のB夫が筆を折ったと聞いた。

 無理もないことだと思った。

 何せ、隣の家は褒める教育だったから。


 好きで始めたことでも上手くなりたいのなら厳しく採点をしなければならない。

 何せ、そうしなければいずれ挑まなければならない本物の世界では通用しない。

 幼い頃から現実を教え、それでも挑む覚悟を育まなければダメだ。

 そうでなければいずれ必ず心を病む。


 隣の家のB夫は可哀想だ。

 自分が根拠のない子供騙しの称賛しか受けていないと気づいて辞めたのだろうから。


 子供はいつまでも子供ではないんだ。

 過剰に褒める教育は毒なんだ。



 *



 息子のB夫が筆を折った。


「もう本当にいいの?」

「うん、もう飽きちゃった。と言うか他に興味のあることができてさ」


 そう言ったB夫の目に不自然なものはない。

 心からそう思っていたのだろう。


 隣の家のA子は嫌になって辞めたのに、我が家の息子は飽きて辞めた。


 私は本当に安堵した。

 褒める教育が功を奏したのだ。


 本物になる人間は誰かに褒められたり、叱られたりしたくらいで進むのをやめたりしない。

 とどのつまり才能はなかったのだ。

 A子もB夫も。


 私の見抜いてた通り。


 本物になるのは本当に一握りのものだけ。

 どれだけ親が愛そうともこの事実は変わらない。

 残酷な話だけど。

 どうせ、才能がなく続かない道。

 ならば、叱ったりせず伸び伸びとやらせるべき。

 そう考えた自分を褒めてやりたいくらいだった。


 このバカみたいな考えを後悔する日は来るのだろうか。

 時々、そう思うこともあるけれど、隣の家のA子が心を病んでしまったのを見れば自分も決して不正解ではないと思ってしまうのだ。



どうせ、途中で辞めるのが目に見えているなら『楽しい思い出をたくさん作って』やめてほしい。

果たしてこの考えは良いものか、悪いものなのか分からないです。


だけど、私は好ましくはないと思います。

正しいとか、正しくないとかは別として。

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