第四話 ご褒美を期待してもいいですか
玉座に降り立った瞬間、ドリアーヌやティファニーといった八陣の面々に取り囲まれるシャルロット。
「姫様ぁぁぁぁ! お疲れさまさまぁっ」
「姫ちゃん、ウチ頑張ったよね? 活躍したよね?? おっぱいおっぱい♪」
「……姫様。あたしもがんばった、よ? 料理たべてほしい」
「へっ、一丁前に『神』ってか。成長したもんだ」
「神? 神ってあの神か、お父様? それは成長というのか?」
「マジかよ……? あの酒飲みでおっぱいが大きいだけのシャルが姫で……神?」
わいわいとした中、元の姿に戻ったアンテロスが一礼し主を迎える。
「お見事でございました、お嬢様」
アンテロスの言葉によって喧騒は鳴りを潜め、主と従者の会話に集中する一同。
その姿を視界に収め、シャルロットが従者に問う。
「この結末が最初から見えていたの?」
「いいえ。正直なところ、三か月ほど前から未来は不透明でした。それがなぜかはわかりませんでしたが、おそらくは悪魔の干渉によるものでしょう。ベリアルとベヒモスの介入も、あの剣も、神である私が知らないものでした」
それじゃあ、とシャルロット。
「運命を覆した――と思っても良いのかしら?」
期待を込めたシャルロットの眼差し。しかし、
「いいえ。過程はどうであれ、お嬢様が帝国の皇子を打倒し、玉座に座る未来は運命に定められしものです。つまり運命は運命のままです」
冷徹な答えが返ってきた。
「なぁんでよぉぉぉぉっ」
頬を膨らまし地団太を踏むシャルロット。威厳の欠片もない。
「わたくし頑張ったわよ? 慣れない策略を張り巡らしたし、ばばーんと登場もしたわっ。悪魔とやらも倒したし、全力も出したわ! それでも運命は変えられないのっ??」
「左様でございます。お嬢様の奮闘はとぅーびーこんてぃにゅーでございます」
「澄ました顔と言い方がむかつくっ」
パシンっ、とアンテロスの後ろに回り大きなお尻をスパンキング。
「おっふ、ご褒美スパンキングナイスです。悪魔を倒したことを加点して九十五点」
「そこはお世辞でも百点でしょうがっ」
もう一度、今度は強めに叩くシャルロット。
「――おっ!? この背骨にまで響く感じ、大変良きです。百点を差し上げたいところはやまやまなのですが、運命は変わらず運命なので――九十五点を維持で」
「維持で――じゃないのよ! わたくしはもっと褒められたいのよぉぉっ」
スパパパンっ、とまるで太鼓のように従者の尻を叩きまくる姫。
「おおぉぉお?? この絶え間ない快楽っ!? なんだか新しい扉が開きそうです! カモンカモンっ」
主と従者の変態なやり取りを見ながら、ルードは上空での決戦について思う。
シャルの臣下を名乗る者たちが一致団結してベヒモスという怪物を倒したのも束の間。戦いの場を王都上空に移したシャルとベリアルの戦いはまるで神話の再現のようだった。
いくら魔法が使えるといっても浮遊し続けているシャルにも驚きだが、ベヒモスと同じくらい恐怖を覚える怪物を呼び出したベリアルも恐ろしかった。
シャルが負けるとは思いたくないが、万が一負けたとしたらあの怪物が降ってくる。
そう考えるだけで身がすくむ思いだった。
そのように玉座の間で震えているルードを鼓舞したのが、髭面が特徴的な親父――剣神だった。
「――安心しな坊主。姫さんはお転婆で緊張感のないお嬢様だが、一度決めたこと、口にしたことは必ずやり遂げる女だ。〝国を取り戻す〟と言ったんだ――信じてやれよ」
炎線が玉座に向けられて放たれた時、ふらっと現れてはベリアルの無情な攻撃を一刀のもとに掻き消した傑物。
その男が、あの空で戦っている姫を信じろという。
しかしルードはぎこちなく、それでいて懸命に強気を装って剣神に言い切る。
「へ、へへっ、俺は姫様やってるシャルを知らないんでね。酒場でエッチに絡んでくる巨乳のお姉さんを信じますよ。そのお姉さんが俺を〝助ける〟と言ったんだ。俺はその言葉を信じるだけっすよ」
ルードの言葉に眦を下げるヤギュー。
「その震える足さえなければ完璧のぺきだったんだがな」
かかっ、と一笑に付す。
そしてルードの頭を再度わしゃわしゃと撫でる。
「しかしよくぞ言った若人よ。その信じる心は、その恐怖は、必ずや今後の人生に生きる経験となる。今の気持ち――忘れるんじゃねぇぞ?」
「は、はいっ!」
なんだかシャルが上空でとんでもない大きさの光の剣を掲げているが、もはやルードには恐怖はない。
あるのは、シャルが必ず勝つという確信のみ。
シャルの臣下も同様に主の勝利を信じて見上げている。
……アオイと名乗った女性だけは剣神に「わらわは? わらわの人生にも生きるのか? どうなのじゃ?」と問うているが。
そうして神とやらになり、悪魔を屠ったシャルだが、その語り口も見た目も酒場で見慣れたお姉さんには変わりない。
ルードは確かに口角が上がるのを自覚した。
そうして意識を今に戻すと、和気藹々とした弛緩した空気の中、シャルがルードに向けて思いもよらない言葉を投げた。
「あ、そういえばルード。あなたにご褒美をあげるから、今度服を脱いで待機してなさいね」
は、と息が漏れる。
ゆっくりと肺に息を入れる。そして叫ぶ。
「はああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!??」
お読みいただき、ありがとうございます!
この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や下の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると幸甚の至りです。
よろしくお願いします!!




