第二話 先っぽだけだから!
「――姫様ッ! 有事でございますッ!」
「……でしょうね。でなければノックもなしにわたくしの部屋には入らないでしょ。で? どうしたの、宰相。敵でも攻めてきた? それともわたくしの処刑についてかしら?」
美少女は、メイドの尻を叩いていた。
メイドは、ティーテーブルに両手をついて尻を突き出していた。
幸いどちらも服に乱れはない。着衣プレイだ。その状態は宰相にとっては見慣れた光景。
特に諫めることもせず、息を切らしながら来訪の理由を告げる。
「じきに城が開きます! 無血開城です……! 今すぐにでもお逃げくださいッ」
宰相の顔をじっと見つめた美少女は、優雅に脚を組んで一口紅茶を口に含む。すでにメイドは傍で不動の姿勢で起立している。
「流血開城でないことはよかったわね。それで? そもそもどうして城が開いたからと言ってわたくしが逃げなければいけないのかしら? てか、なに? 敵襲?」
「……帝国の皇子です。この国は帝国の属国になることが決定いたしました。これよりこの王国は皇子の指揮のもと再編が行われます。先の女王であるヴィルヘルミナ様の血を引く姫様の身柄と交換条件に……」
顔面に珠のような汗を浮かべる宰相をよそに、クッキーをひと齧りする美少女。それを紅茶で流し込んでから口を開く。
「まあお母様がおられたからこそ帝国とは互恵関係にあったのだから、お母様亡き今、この国を帝国と対等関係に甘んじさせる必要はないわね。でもわたくしには処刑命令が下されたのでしょう。矛盾してない?」
「……王は乱心されています。血の繋がりがないとはいえ、先代様のお子である姫様の命を奪うなど……ッ」
「王権の暴走を抑えるために、南の共和国みたいに権力を三つに分けるのもいいかもしれないわね」
とまるで他人事のような口ぶりの美少女。
「いずれにいたしましてもッ! 王国の創建時より連綿と継承されてきた御神血をその身に宿される姫様は国の至宝でございます! お逃げください! その血に宿る魔法こそが帝国の求めるもの。姫様さえ生きていただければ、この国の意志は途絶えませぬ……!」
「んー。一応は敵……になるのよね。ならわたくしが切り伏せてもいいんじゃない? 国を護るためだし」
美少女は傍のメイドに問う。
「むやみやたらの殺生はダメです」
「なら皇子だけ。大丈夫、先っぽだけだから! 剣の先っぽをちょっとだけ頭に埋めるだけだから……!」
両手を合わせてメイドに懇願する。
その姿はまるで女を口説こうとしている軟派な男を彷彿とさせる。
「どうせそういいながら奥まで捻じ込むのでしょう? 〝まだ半分だから! 大丈夫! すぐに抜くから! あっゴメン。奥まで入れちゃった。ここまで入れたらもういいよね〟とか言って……」
メイドの看破によって、ぐぬぬ、と呻き声をあげる美少女。
そんな主を差し置いて、メイドは宰相に疑問を投げる。
「それより宰相、王の乱心が魔法による可能性は?」
「否定はできませぬ。しかし女王がご存命のころから、その、王はあまり姫様を……」
口を濁す宰相。
「あのハゲ、わたくしに邪な視線投げてきたからなー。まあ、たしかに連れ子との淫らな関係というものに憧れるのは分かるけど」
「お嬢様、もう少しお上品になさってください。ちなみに私は義母派です。夫に隠れて……という」
「あー、それもいいわね。でも連れ子同士というのもオツじゃない?」
「捻りに欠けるかと。しかもそれが幼馴染や同級生とくれば、もう濡れたものも渇くというものです」
「……あなたのどこが濡れるのよ」
「それはヒミツです」
と唇に人差指を当てて答えをぼかすメイド。
姫とメイドの明け透けな会話に、おほん、と宰相。
「今は性癖論議をしている場合ではございません。速やかなる退避をお願いいたします」
深々と頭を下げる宰相。
「……ほんとにダメ? わたくしがいなくなると宰相や城のみんな、いいえ、愛すべき国民に理不尽が降りかかってしまうわ」
「……申し訳ございません。認めることはできません」
「絶対に?」
「絶対に」
そう、と口を開こうとしたとき、部屋の入り口が豪快に開け広げられた。
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