#02.飛舞
問題発生。
背中の組織を摘出されたせいで羽に力を入れるだけで結構痛い。いくら痛みに慣れているとはいえど痛いものは痛い。
「でも、バレたら水の泡。そう。」
必死に羽を動かす。傷口が開いて血が出るかと思うほど痛くなった。そのとき、バサッと風をたたせ飛んだ。
でも、まあ、そう簡単に飛べるわけもなく。
「全然、窓にッ、いけないんだけど!」
なんとか窓枠を掴んで開ける。初めて、外に出た。まだ、朝早い時間だから見られる可能性は低いけど、とにかく早く蝶のところから離れたほうがいいのは確かだ。
なるべく音を立てないように研究所の敷地から出て、全力で走る。といっても、健康上に問題のない程度に運動していただけなので対して速くないし体力もない。
少し走ると、看板を見つけた。ご丁寧に華の都の場所の方向が示してあった。
道の横にある鬱蒼とした木々の中を走る。道なんかに堂々といたらバレる確率が異常なまでに上がるのは目に見えている。
邪魔くさいけど、こっちの方が良い。
走るのに疲れ、歩く。太陽が昇っている。街並みが変わったのを感じる。森が途切れた。
「…お腹空いた、」
人気の無い路地裏に入る。地べたに座り込む。今はまだ朝。多分バレてないと思う。もし、バレていた場合怖いから、離れ続けるしかないんだけど。
「僕みたいな奴、追う価値もない…考えても無駄か。」
そんなことを考えて憂鬱になっていたとき、路地裏の奥から人の気配を感じた。その方向を見ると確かに人だったが、触角も羽もなかった。
「もしかしてて…華?」
触角と羽が無いのが華なんだよな。いや、蝶じゃないってだけか。とにかく、離れられた。
安心したのか、お腹がなる。そういえば、なにも食べずに来てしまった。
「どっか、開いてるところ。」
路地裏を彷徨っていると、錆びた階段の上に扉が開いてる部屋があった。
部屋に入ると、中には大量の段ボール箱。中には毛布や水、非常食などが入っていた。盗むのは心が痛むけど生きるため。ここでこれからどうするか考えよう。