初めての「時を戻す」
意識が遠のく中で、颯太は地面に倒れ込み、最後の力を振り絞りながら叫んだ。「こんなところで...終わるのか...」痛みが体中を駆け巡り、血が滲み出て視界がぼやける中、涼音の無事を祈った。その瞬間、視界が白く輝き、世界が再び暗転した。
目を覚ました時、颯太は自分が涼音と初めて出会った場所に立っていることに気付いた。全身に汗がにじみ、心臓は激しく鼓動していた。見覚えのある風景が目の前に広がり、彼は混乱と驚愕で頭がいっぱいだった。
「ここは...どうなってるんだ...?」
周囲の状況がまるで初めてここに来た時のように戻っていることに気づき、颯太は驚愕した。体には傷一つなく、まるで何事もなかったかのように感じた。先ほどの痛みや恐怖が鮮明に蘇り、彼の体は震えていた。
「夢だったのか?でも、あまりにもリアルすぎる...」
彼は自分の手を見つめ、心臓の鼓動が少しずつ落ち着いていくのを感じたが、頭の中は混乱のままだった。痛みや恐怖がまだ彼の記憶に鮮明に残っており、冷や汗が頬を伝っていた。
「涼音に会わなければ...でも、一体どうなってるんだ...」
颯太は震える手を握りしめ、何とか冷静になろうと努めたが、心の中の不安と恐怖は消えなかった。彼は決意を新たにし、再び涼音と出会う場所に向かった。彼は同じ道を辿りながら、先ほどの出来事を思い返していた。時間を戻せるのか、それとも何か別の力が働いているのか、その真相を確かめるためには、もう一度涼音に会うしかなかった。
しばらく歩くと、颯太は再び涼音の姿を見つけた。彼女は先ほどと同じ場所で彼を待っているかのようだった。涼音は驚いた様子で彼を見つめた。
「あなた、もしかして異世界から来たの?」
同じ問いかけに、颯太は少しの間、言葉を失っていたが、すぐに彼女に事情を説明することにした。しかし、口を開こうとした瞬間、猛烈な頭痛が彼を襲った。まるで頭が割れるような痛みが走り、言葉が喉に詰まった。
「うっ...」
涼音は心配そうに彼を見つめた。「大丈夫?無理しないで。」
「...大丈夫。ちょっと頭が痛いだけだ。」颯太は何とか痛みを抑えようと深呼吸をしたが、頭痛は治まらなかった。何かが彼に話すことを拒ませているように感じた。
「涼音、信じてもらえないかもしれないけど...いや、やっぱり何でもない。」
涼音は疑問の眼差しを向けたが、それ以上は追及しなかった。「わかったわ。でも、もし何かあったら教えて。」
「ありがとう、涼音。今は、ネクロが来る前に準備しよう。」
涼音は頷き、彼の指示に従った。彼らは建物の高い場所に陣取り、ネクロの動きを観察することにした。涼音はナイフを握りしめ、颯太は周囲の状況を注意深く見守った。
「次にネクロが来たら、あの窓から出てくるはずだ。俺が罠を仕掛けるから、涼音はそのタイミングで攻撃して。」
涼音は真剣な表情で彼の指示に従った。彼らは黙々と準備を進め、ネクロが現れるのを待った。
そして、ついにネクロが再び姿を現した。巨体が影の中から現れ、その赤い目が獲物を見定めるかのように光っていた。涼音は緊張で息を呑みながら、ナイフを構えた。
颯太は涼音に手信号で合図を送り、罠を仕掛ける準備をした。心臓は激しく鼓動していたが、今度は恐怖に飲み込まれることなく、冷静に行動を続けた。
涼音が「今だ」と手信号を送る。颯太は息を止めて動き出し、ネクロの隙を突く準備をした。二人の連携は見事に決まり、ネクロを撃退することに成功した。
ネクロが倒れると、涼音は深い息を吐き、安堵の表情を浮かべた。「やった...!」
颯太も同じように安堵し、涼音に感謝の言葉を述べた。「これで少しは安心だね。でも、これからどうする?」
涼音は冷静に答えた。「まずは安全な場所を確保して、情報を集めるわ。この世界がどうなっているのか、そしてあなたの能力の秘密も。」
「わかった。涼音、協力してくれてありがとう。これからもよろしく。」
「こちらこそ、よろしくね、颯太。」
こうして、颯太と涼音は荒廃した未来の地球でのサバイバル生活を共にすることとなった。しかし、その夜、彼らは再び不運に見舞われた。暗闇の中、突然ビルの一部が崩れ落ち、轟音と共に瓦礫が降り注いできた。
「何だ!?また崩れたのか!?」涼音は驚きの声を上げ、ナイフを手に取って周囲を見渡した。颯太もすぐに立ち上がり、瓦礫を避けるために駆け回った。
「おかしい、こんなタイミングで崩れるなんて...」
その時、颯太はビルの影に何か動くものを見つけた。まるで誰かが意図的にビルを崩そうとしているかのようだった。
「誰かが...ここにいる...?」
突然、背後から強烈な衝撃が走り、颯太は地面に倒れた。痛みが全身を駆け巡り、意識が遠のいていく中で、彼は涼音の叫び声を聞いた。
「颯太!しっかりして!」
視界が再び白く輝き、颯太は再び暗転した。