敵との初遭遇
颯太が目を覚ますと、薄明かりの中、涼音が周囲を警戒している姿が見えた。彼女は窓の外をじっと見つめ、緊張した表情を浮かべていた。颯太は眠気を覚ますように顔を叩き、彼女の隣に立った。
「おはよう、颯太。よく眠れた?」
「うん、ありがとう。でも、まだ何が起こっているのか信じられないよ。」
涼音は颯太の言葉に頷き、真剣な表情で答えた。「これからもっと危険なことがあるわ。特にネクロには注意しないといけない。」
「ネクロ?」
「この世界には異形の生物が徘徊しているの。人間を見つけると襲ってくるわ。準備して。」
突然、遠くから異様な咆哮が聞こえてきた。涼音は瞬時にナイフを手に取り、颯太にも警戒するように指示した。
「来たわね...ネクロが。」
その言葉と同時に、巨大な獣のような姿をしたネクロが現れ、颯太たちに襲いかかってきた。ネクロの目は赤く光り、その体は異様に大きく筋肉質だった。皮膚は硬質で、まるで鎧をまとっているかのようだ。全身は黒い鱗で覆われ、鋭い爪と牙が凶悪な武器となっている。
颯太はその異形の存在に息を呑んだ。ネクロの動きは素早く、その一歩一歩が地面を揺るがす。恐怖で体が動かなくなる中、涼音は冷静にナイフを構えた。
「まずは静かにして。奴らの動きを観察して、動きを読むのよ。」涼音は窓の外をじっと見つめ、ネクロの姿を確認しようとしていた。薄明かりの中でその巨大な影が揺れるたびに、颯太の心臓は激しく鼓動した。
「奴らの動きに合わせて行動するわよ。音を立てずに慎重にね。」涼音はそう言いながら、颯太に手信号で指示を出した。彼女の動きは熟練しており、颯太は彼女の指示に従って身を潜めた。
ネクロが徐々にビルに近づいてくる。颯太の心臓は激しく鼓動し、冷たい汗が背中を流れた。涼音は一瞬の隙を見逃さず、ナイフを構えたまま静かに待機している。
涼音は手信号で「今だ、動くわよ」と指示した。颯太は息を止めて行動を開始した。彼らは慎重にビルの奥へと進み、ネクロの視界から逃れようとした。しかし、運命は彼らに容赦しなかった。
突然、ビルの一部が崩れ、大きな音を立てた。その音に反応したネクロが、一気に彼らの方に向かってきた。巨体にも関わらず、その動きは猫のようにしなやかで素早い。涼音は目を見開き、ナイフを握り締めた。
「くそっ!」涼音は息を潜めながら、颯太の手を引いて逃げようとした。しかし、ネクロのスピードは想像以上であり、すぐに追いつかれてしまった。
「こんなところで終わるわけにはいかない...!」涼音は必死にナイフを振りかざし、ネクロに立ち向かった。だが、その力に圧倒され、彼女は壁に叩きつけられた。
「涼音!」
颯太は自分の無力さに歯がゆさを感じながらも、何とか涼音を助けようと必死になった。しかし、ネクロの一撃で致命傷を負い、その場に崩れ落ちた。体中に痛みが走り、血が滲み出て視界がぼやける。
「涼音...俺は...」
息をするたびに胸が激しく痛み、視界がどんどん狭まっていく。体が重くなり、手足が冷たくなっていく感覚が彼を襲った。全身の力が抜けていくのを感じながら、颯太は地面に倒れ込んだ。
「こんなところで...終わるのか...」
視界が暗くなる中で、颯太は涼音の無事を祈った。その瞬間、視界が白く輝き、世界が再び暗転した。