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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

結んで開いて羅刹と骸

作者: ゐ丁稚五十壱号

挿絵(By みてみん)


 今夜も雪が降りしきり、降り積もる。



 積もった雪は取り除かねば家そのものを破壊し喰いつくしてしまう。



 しかしそんな雪掻きをする事で命を落とす者もときにいる。



 だけどこの冬にはソレよりも、もっと恐いものがある事をあんたは知っているかい?



「何だいお客さん、怖い話でもするのかい?」



 ははは、まぁ聞いてくれるだけ聞いてくれや。



 これも客のわがままというものだ。



「そんな事より気持ちイイことしようよ」



 躊躇なく身を寄せてくる女っていうのは可愛いものだな。



 いい塩梅だ。だけど話はさせてくれよ?



「いいよ。聴かせて。恐かったらイイ事してあげる」



 そうか。では今夜は無礼講。少し時間を貰おう。



 ある田舎の村におミヨという娘がいた。その村は貧しい者達ばかりで生きてくには山賊になるか色仕事で精をだすか。私にみたいに出家するかだ。



「お坊さんだったのかい? お客さん?」



 ふふふ、それはそれでまた別のお噺だ。さて、おミヨの話に話を戻そうかね。おミヨは他の村の娘同様に色仕事で生きてゆこうと村を出ることにした。



 おミヨは大層美しい娘だったそうで、道中は野蛮な輩から声をかけられたものだった。



 猫を被った化物から鬼である事を隠しているお地蔵さんたちにまで「お嬢さん、遊びましょう」とね。



「お客さん、それじゃあもう御伽話(おとぎばなし)の世界じゃないか」



 だけどおミヨは町までいった。そして町で一人の侍と恋に堕ちた。



「なんだい急に色恋話かい?」



 いやいや、でも彼女はそのとき既に色仕事をやっていてね、侍の彼には内緒でしていたのさ。



 彼女は仕事をやめようと主に相談するが、稼ぎ頭のおミヨを辞めさせる訳にはいかなかった。



「ふうん、おもしろい話になってきたねぇ」



 だから店主らの輩はその侍の彼を斬り殺した。それもおミヨの目のまえでな。彼は彼女に呼ばれたから、まさに騙し討ちというものだ。



 彼は息をひきとる時にそれはもう修羅のような形相でおミヨを睨んでいたそうだが、死人に口はなし。その後日成敗された辻斬りが彼を殺した事になった。



 だけど皮肉なものさ、おミヨはその日から姿を消した。



 それは雪の積もる真冬の事。



 店で売れない下品なブスが彼女に嫉妬して秘密裏に殺したとか、誰もいない町はずれの山奥で首を吊ったとか。噂はそこらに広まった。



 実はおミヨには妹がいてね、その娘はおミクといった。彼女もまた姉を追って町にやってきたが、やがてそれも忘れて色仕事に精をだすようになった。だけど彼女は商人の青年と出会い、夫婦となり、子を授かった。つまり駆け落ちをしたという話だ。それからなんとも慎ましい生活をしていたそうだが、ある日突然、彼女の一家全員が行方不明になった。



 ひと月かふた月、そのぐらいになって彼女は発見された。



挿絵(By みてみん)



 手足を何本も生やしたもののけになって。



 彼女は地主立ち合いの元、有能な坊さんに斬られ成敗された。



 しかし巻き添えに6人の武士の命を奪ったという。



 彼女はそりゃもう変わり果てた姿だったものだから、町で晒し物になったって何もおかしくなかった。しかしその場に立ち会った地主はこう言った。



『彼女を晒し物にしては不憫だろう。このまま焼いてしまって土に還そうじゃあないか。彼女がこのような姿になったことも誰にもいうまい』と。



 それで彼女だった怪物(もののけ)は焼かれて葬られた。



 ここから奇妙な噺が続くのだけど、その地主、そして坊主もおミクの成敗に関わった者全員がその年の真冬に不自然な凍死で亡くなった。



 誰もがその突然死に首を傾げたものだが、おミクが怪物(もののけ)になって成敗されたという噂話はその一団にいた男が吹聴したところから広まったものらしい。



 何が真実(まこと)で何が嘘か誰にもわからない。



 ただ最近妙な怪談がでまわっているそうじゃないか。



 この寒い真冬に夜鷹に扮して男を凍死させる「雪女」って奴がこの近辺にいるらしい。



 なんでもそれはもう美しい女だそうで。



 それがおミヨだとかどうとか。



 そういえば、お嬢さんはすごく綺麗で色っぽいよなぁ。



 だけど私はそういうのは興味がなくて。



 いま話した怪物(もののけ)のような怪奇と出会いたいと望む変わり者なのさ。



 こうして女を呼ぶのは初めてだが当たりらしい。凍えるほど嬉しいよ。



 与太話(ざれごと)はここまでだ。



 さぁ。お手を拝借。



 おミヨさん。




「うふふっ、面白いお客さんだねぇ」



 ああ、やっぱりなぁ。



「殺されるのが嬉しいだなんてね」



 純粋無垢ゆえに悪逆非道。



「それではありがたくお命頂戴」



 私もこうして冬に喰い尽くされてしまうのだろう――




∀・)ご一読ありがとうございました。冬ホラーフェス2022「紅白ホラー小説合戦エキシビジョンマッチ」&しいなここみ様主催「冬のホラー企画」に応募した作品になります。何が真実なのか見えない話

になってますが、楽しんで貰えたら幸いです。いつか書こうと思っていたネタでした(笑)米津玄師君、ハチの時代から大好きです(笑)いでっちでした☆☆☆彡

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― 新着の感想 ―
[一言] 昔話のような語り口 読んでいて懐かしさを感じました これは投票に悩みますね どうしたものか…… 面白かったです!
[良い点] いでっちさんが時代劇を書くのは珍しいですね。 ちょっとした推理要素があって面白い作品でした! ペンネームをよく見ると、ちゃんと本人さんの名前だったw 手足がいっぱいの怪物、イメージす…
[一言] おミヨが怨念になる話かと思いきや、妹のミクが化け物になり、さらに関係者が不思議な死を遂げる。  読んでいてわけがわからなくなりましたが、これが作者様の狙いなのでしょうか。  不条理の怖さが…
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