表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ほうかごヒーロー!~五時までの、異世界英雄伝~  作者: カメメ
3章 君のことを知りたいんだ! 食べ物いっぱいの国、マーマル王国!
84/297

36 性格も悪いが、力も強い! 苦戦! 魔王リオン!

 ぽかんとする劉生君に、巨大になった魔王のしっぽが襲います。


「う、わああ!」「リューリュー!」


 リンちゃんが押し倒してくれたおかげで、間一髪のところで魔王の攻撃を避けられました。


 魔王のしっぽが当たった場所は陥没していました。もしあそこにいたらと思うと、劉生君の背筋が凍りました。


「あ、危なかった……」

『一撃目で安心されては困るな』


 魔王は含み笑いをすると、また高速で移動し、劉生君の背後をとりました。


『<メタボリックシンドローム>っ!』


 今度は右の前足を巨大化させると、劉生君を踏みつぶそうと思いきり飛び掛かってきました。


「うぎゃあ! <ファイアーウォール>っ!」


 炎の壁で防御してなんとか耐えましたが、魔王は容赦なく体重と力を込めてきました。炎の壁ごと劉生君をつぶそうとしているのです。


『ふっ、いつまで持つかな?』

「ぐうっ……!」


 桁違いの魔力を持っているとはいえ、<ファイアウォール>はかなり力をもってかれてしまう技です。劉生君の額にも汗がたらりと垂れます。


「劉生君っ! このっ!」橙花ちゃんが杖をふると、魔王リオンはあっさりと劉生君から離れます。杖がむなしく空振りしました。


「くっ、どこに逃げた!」

『だから、オレサマは逃げるなんて真似はしない。戦略的撤退しているまでだぞ?』


 すぐに魔王は姿を現すと、またもや劉生君を攻撃します。体の一部を巨大化する技、<メタボリックシンドローム>も使ってくるので、劉生君は反撃もできず翻弄されています。橙花ちゃんが助力しようとすると、魔王はすぐに高速で移動し、四方八方から劉生君を襲います。


 これには劉生君もうめき声のような悲鳴を上げます。


「ううっ、全然倒せないっ!」


 手も足もでない状況に、橙花ちゃんも歯を食いしばります。魔王リオンは防御が極端に弱いので、一撃さえ与えられればこちらの勝利に近づけます。しかしここまで逃げられては、その一撃すら入れられません。

 

「これじゃあ、劉生君が危ない。何とかしないと……っ!」


 けど、どうやってやればいいのでしょうか。橙花ちゃんには思いつくことができません。


 劉生君の体力もそのうち限界が来てしまいます。橙花ちゃんは焦りはじめました。


 攻撃技を橙花ちゃんが使えていたらまた別だったのでしょうが、残念ながら彼女の魔法はすべて補助技です。さらに、橙花ちゃんの攻撃を防ぐためでしょう。地面に石ころの一つでも落ちていません。


 これでは、何らかの飛び道具を投げ、橙花ちゃんが時を早める技、<ススメ>で攻撃することもできないのです。


 どうしようか悩む橙花ちゃん。万策尽きたとついつい思ってしまいましたが、ある一人の子がくやしげにぽつりと呟きました。


「俺の力を使えば、あのライオンの動きも止められるのに……!」

「っ! みつる君、何か案があるの!?」

「え? まあ、でも、もう力が出ないから……」

「……いや、それなら大丈夫」


 具体的な案を聞く暇はありませんし、今の橙花ちゃんは子供たちを共に戦う仲間としてみていたので、わざわざ詳細を聞こうとはしませんでした。


 橙花ちゃんはみつる君の案に賭けてみることにしました。


「吉人君! みつる君に回復魔法をお願いできるかな!」

「分かりましたっ!」


 吉人君はキャンディーの杖をみつる君に向けます。


「<ギュ=ニュー>!」


 白いキラキラとした光がみつる君を包み込みます。みつる君は身体の奥底から力が湧きあがることを感じました。


「よし! これなら足止めできる! ……そのまえに、あの魔王の動きを止めなくちゃだけど……」

「わたくし、やってみますよ! まだ不思議な力を使えますから!」

「お願いできる?」

「ええ!」


 やる気に満ちあふれている二人に、魔王リオンはゴミを見るような目を向けます。


『時計塔ノ君やそこにいるモヤシならまだしも、小さくか弱いお前らに後れを取るオレサマではない。おとなしくしてればいい。痛い思いはしたくないだろ?』


 明らかに咲音ちゃんたちを下に見ています。それでも咲音ちゃんは笑顔を崩しません。


「わたくしたちの力があれば、大きな大きなライオンさんも倒してしまいますよ。それでは、いきますよお」


 図鑑をぺらりとまくり、咲音ちゃんは優しくささやきます。


「おいで、わたくしの大好きな子、<イワシ>さん!」


 本は桃色に輝くと、白銀の魚が本から飛び出してきました。魚たちは波のように魔王リオンに襲い掛かります。


 魔王リオンはめんどくさそうに軽く舌打ちをします。


『数でオレサマを倒すつもりか? ふん。そんなもんで、このオレサマが倒せるとでも?』


 リオンはぎろりと魚の大軍をにらむと、大きく息を吸いました。


『あまりこの技は使いたくなかったが、仕方ない。自分の身のほどをしっかりとわきまえろ。<コレステロール>っ!』


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ