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ほうかごヒーロー!~五時までの、異世界英雄伝~  作者: カメメ
3章 君のことを知りたいんだ! 食べ物いっぱいの国、マーマル王国!
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30 バトル! みつる君の技、初披露!

 大きく飛んで上の階に飛ぶと、魔王は大きな声で吠えます。


『みなのもの! こいつらを倒してやれ!』


 いうや否や、魔王レオンは颯爽と逃げていきます。


「ああ! ちょっと! どこ行くのよ!! 卑怯者!」


 リンちゃんの怒鳴り声にも答えず、魔王の姿は見えなくなりました。その代わりとばかりに、牛や猪が劉生君たちに突進してきたのです。


「あ、蒼おねえちゃん!」

「大丈夫。ボクの後ろにいてね」


 みおちゃんや劉生君たちを守るように、橙花ちゃんは魔物の前にたちふさがります。


「時よ、<トマレ>!」


 あと数秒で劉生君たちに鋭い角が突き刺さってしまう、その寸前。


 牛や猪が、ぴたりと動きを止めました。まるで時が止まったかのようです。みつる君たち二人がびっくりしている間に、リンちゃんは魔物に向かって飛び出してきました。


「いくわよっ!<リンちゃんの バリバリサンダーアタック> 」


 リンちゃんの体に電気がまといます。スピードもどんどん上がると、雷の速さで魔物の群れに突っ込みます。


『ぎゃあああ!』『しびれる!!!』


 強力なアタックに、魔物たちは次々と倒れてしまいます。


『人間め。調子に乗るなっ!』 


 ゴリラの魔物がリンちゃんに殴りかかってきました。咲音ちゃんが「危ないですわ

 !」と叫び、みつる君は怖くなって目を閉じました。


 ですが、リンちゃんは不適な笑みを浮かべます。


「大丈夫よ、サッちゃん。あたしが片付けてやるわ!」


 リンちゃんが軽くジャンプをすると、両足が雷の力に包まれました。


「<リンちゃんの ビリビリサンダーパンチ>!」


 ゴリラの拳とリンちゃんの蹴りがぶつかります。劉生君たちの世界では、ゴリラの力に人間の子供が敵うわけありません。


 しかし、ゴリラはぶるりと体を震わせると、なんと吹っ飛んでいったのです。


「さすがあたし! かっこいい!」


 自画自賛するリンちゃんの背後から、そろりそろりと巨大なクマが近づいてきました。リンちゃんは気づいていないようです。


 クマはニンマリと笑うと、巨大な手を振り下ろします。だがしかし、クマの攻撃はりんちゃんには届きませんでした。突然、クマの体が動かなくなったのです。


『……ぐう?』


 ぱちぱち目を瞬かせるクマ。彼の目の前には粉がふわりと待っていました。


「全く、道ノ崎さんは。敵地で油断してはいけませんよ」


 吉人君は緑と白の飴を軽く振ります。


 この技は、吉人君の技、<マッチャ=ラテオーレ>。かけた相手を状態異常にする技です。今回は麻痺にしているようです。吉人君が「赤野君、今のうちです!」と叫ぶと、劉生君はクマに飛び掛かります。


「やあ! <ファイア―バーニング>」


 劉生君は軽々とクマを倒し、ついでに周りで麻痺っている魔物たちも倒していきます。


 橙花ちゃんやリンちゃん、劉生君の猛攻に、吉人君のフォローが加わり、次々と魔物が屠られていきます。咲音ちゃんとみつる君はあっけに取られるばかりです。


「す、すごいですね」「うん。あんな数を次々と……」


 呆然と眺める二人は、傍目から見ると『巻き込まれてしまって困っている弱そうな獲物』と認識されても仕方ありません。


 イタチたちはこずるい笑みを漏らします。


『ふっふーん。オイラたちはこの子供たちを倒すぞ!』

『そうだそうだ! やっちまえ!』


 気が付くと、みつる君たち二人はイタチの兵隊に囲まれてしまいました。


「ひ、ひい! いつの間に!」


 怯えるみつる君に、橙花ちゃんは豹の魔物と戦いながら大声で叫びます。


「みつる君! 咲音ちゃん! 武器を使って戦ってみるんだ!」

「ぶ、武器っていったって……。さ、咲音っち、先どうぞ!」


 そくさくと譲るみつる君ですが、咲音ちゃんは複雑そうに首を横に振ります。


「わたくし、生きもの委員会ですので、敵とはいえ動物を傷つけられません……」

「ええ! そうなの!?」


 これでは、みつる君しか頑張れる人はいません。こうなっては仕方ありません。みつる君は覚悟を決めて懐から彼の武器を取り出しました。


「よ、よーし! やるぞ。いでよ、俺の武器!」


   巨大な黒い何かが現れます。イタチたちは一体どんな武器なのかと身構えましたが、みつる君の武器を見て、大笑いをしました。


『なんだよそれ! フライパンかよ!』『それで戦うつもりか! はっはっは!』


 揶揄うイタチに、みつる君は苦笑いをします。


「そういいたい気持ちは分かるけど、これは普通のフライパンじゃないよ」


 みつる君が小さい頃から大事に使っている、思い入れのある大切なフライパンです。だからこそ、この世界では彼をまもる武器に変わってくれるのです。


「いけ! <クッキング=アンセーフ>!」


 フライパンの上に料理が現れました。表面に焦げ目がついている美味しそうなお餅です。みつる君はフライパンを小刻みに揺らすと、魔物に向かって投げつけました。


 そのときです。


 突然、餅が魔物にからみつきました。


『うわああ!?』『なんだこれ!?』『とれないぞ!』


 いくらもがこうとも動きません。足や手が餅にくっついてしまっているのです。パニックになる魔物たちに、みつる君はバツが悪そうに頬を書きます。


「あー、お餅が思ったよりくっつくなあ。<クッキング=アンセーフ>って技名の通り、危ないものが出てくるんだね……」


 みつる君の技<クッキング=アンセーフ>とは、一歩間違えると命の危機に関わる恐ろしい料理で敵を攻撃する、とても危険な技です。 


「みんな、このお餅は食べちゃダメだよ! のどに詰まっちゃうよ!」


 みつる君の呼びかけに、劉生君はモモンガの魔物に翻弄されながらも、首を傾げます。


「お餅が喉につまっちゃったら、どうなっちゃうの?」


 リンちゃんはバッサリと答えます。


「死ぬわよ」「……え?」


 息ができなくなるので、何も対処しなければ命を失ってしまうのです。みつる君は何とも言えない表情になります。


「お餅は美味しいし、腹持ちはいいんだけどねえ。ご高齢の方は注意して食べないとね」


 もちろん、小学生も中高学生も大学生だって、お餅をうっかり喉につまらせると大変危険です。お餅は美味しいですが、慌てずによく噛んで、ゆっくりと注意して味わいましょう。


 慌ててじたばたしていると、完全にダウンしてしまうことでしょう。実際に、イタチの魔物はもがきにもがいたせいで、体がうまく動かなくなってしまいました。

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