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ほうかごヒーロー!~五時までの、異世界英雄伝~  作者: カメメ
3章 君のことを知りたいんだ! 食べ物いっぱいの国、マーマル王国!
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25 第三回戦! 料理の腕をふるうは、……みつる、君?

 おとなしくて優しいみつる君が急に大声をあげたので、みんなびっくりして言葉をひっこめます。


 自分の思いを吐露するように彼は吠えかかります。


「確かにここのごはんは美味しいよ! けどね、もっと美味しいものなんていっぱいあるよ! 今からそれを証明してみせる。やいそこの魔王!」

『な、なんだ?』

「キッチン出して」

『……キッチン? なんだその料理』

「料理じゃないよ、キッチンはキッチン! 厨房ともいう! 今から料理作る!」

『そんなもんしなくても、思い描けば最高の料理を作ってやろう』

「違う! それが違うんだ!」


 ビシッとみつる君は魔王を指さします。


「料理ってのはね、味だけじゃないんだよ! うまけりゃいいってもんじゃない!」

『……ふん。何言ってるんだ。この世界は栄養なんてものはいらないんだから、味さえよければいいんだ。そんなことも分からないのか』


 魔王は威厳を示そうと低く呻ります。がしかし、ノリに乗ったみつる君には脅しの一つも効いていません。


「そういうことじゃないって! ともかく出して! キッチン!」

『お、おう』


 魔王、渋々頷いて赤い光を放ちます。光はみつる君たちの周りを囲むと、銀色に輝く立派なキッチンが現れました。みつる君はコンロやらなんやらをみて、満足げに頷きます。


「よし! それじゃあ材料も出して。あとエプロン。七枚ね」

「七枚?」


 劉生君はキョトンとします。


「みつる君ったら、そんなたくさん着るの?」

「違うよ。みんなの分だよ」


 みつる君はにっこりと微笑みます。


「みんなで作るんだからね」

「……へ?」


 ぽかんとする劉生君に、エプロンを差し出しました。


「赤野っちはこれね。道ノ崎っちはこれ!」


 吉人君にも、咲音ちゃんにも渡して、橙花ちゃんとみおちゃんにも渡しました。


「……ボクも作るの?」「みお、料理なんて作りたくないよ」


 戸惑う橙花ちゃんと文句を言うみおちゃんですが、みつる君は「いいからいいから」といって、みおちゃんに水玉模様のエプロンを着せます。


「せっかくみんなで作るんだし、カレーにしよっか!」


 カレーと聞いて、劉生君の耳がぴくりと動きます。


「やったあカレー! ねえねえ、ハンバーグカレーにしようよ!」

「そうだね。せっかくだし、トッピングもいろいろ作ってみようか。その前にまずはカレー作りだね。劉生君はじゃがいもむいてくれる?」

「はーい!」


 よくお母さんの手伝いやてちますので、手際よくむいていきます。よっぽどカレーが好きなのでしょう。ハートのエプロンを着ているというのに、テンションが上がっています。


「それじゃあ、鐘沢っちは玉ねぎをみじん切りにしてくれるかな」

「え、ええ。わかりました」


 葉っぱのエプロンをバタバタと着て、包丁で玉ねぎを剥き始めます。あまり慣れていない様子でしたのでみつ君はコツを色々と教えてあげてから、道ノ崎ちゃんの方を見ます。


「道ノ崎っちはカレールー作っててくれない?」

「か、カレーソース?」


 リンちゃんはたじろぎます。


「あの固形のルーじゃなくて?」

「それも使うけど、ソースから作ると味に深みが出るよ」

「へえー。どうやって作るの? 香辛料をいためるとか?」

「そういうのもあるかもしれないけど、俺のとこは小麦粉とバターをいためて作ってるよ。ホワイトソース作るみたいにね」


 ホワイトソースなんてものは何に使うのかは劉生君と吉人君には分かりませんが、料理経験豊富なリンちゃんは納得してくれたようです。「あーはいはいなるほど。想像ついた」といって、ちゃちゃっと作り始めました。


「よしよし。それじゃ、蒼っちとみおちゃんはニンジン切ってくれないかな?」

「ニンジン?」みおちゃんは眉間にしわを寄せます。「みお、ニンジン嫌いー」

「食べるのはともかくとして、むくのは楽しいよ!」


 みつる君はニンジンとピーラーを渡します。みおちゃんは嫌そうにニンジンとピーラーを見て、橙花ちゃんにあげます。


「はい、蒼おねえちゃん」

「あはは……。ひとまずちょっとやってみよっか」


 みつる君もやらせたがっていましたし、少しだけでもみおちゃんにやらせてみようと、一度ピーラーとニンジンをみおちゃんに返します。


「ピーラーの使い方は分かる?」

「わからない」

「それじゃあ教えてあげるね」


 みおちゃんの片手にニンジン、もう片手にピーラーを持ってもらいます。橙花ちゃんは自分の手をピーラーを持つみおちゃんの手に重ね、切り方を教えます。


「こうして、こうするんだよ」


 ピーラーは切れ味の良いものを出してくれたようです。気持ちよくスッとニンジンの皮がむけ、鮮やかなオレンジ色の面が顔をのぞかせました。


「わあ、綺麗!」

 

 みおちゃんは目を輝かせて、次々とむいていきます。全部剥き終わると、「終わったよ!」といって、橙花ちゃんにつるつるのニンジンを渡しました。


「はい、どうぞ!」「ありがとう」


 皮の残りもなく、きれいに剥けていました。


「さすがみおちゃん。上手だね」橙花ちゃんがよしよし頭をなでてあげると、みおちゃんはまんざらでもない笑みになります。


「みお、きよーだもん!」

「うんうん、きよーさんだね」


 ついつい橙花ちゃんも微笑みます。


「もっとむく!」「あ、ちょっと待って」


 みつる君に何本むいてほしいか訊ねてから、みおちゃんと一緒にニンジンの皮むき作業を再開します。


「みてみて! すごく長く皮むけたよ!」「すごいすごい!」


 二人でわきゃわきゃ楽しそうにしています。なんだかほほえましい光景です。ひとまず任せておいても大丈夫だなと、みつる君は満足げに頷きます。


「さてさてっと。咲音っちにはお米を研いでもらおうかな」

「はい! わかりました! 砥石はどこですかね?」

「……包丁でもとぐの?」

「お米を研ぎます!」

「……いやあ……」


 彼女には任せておいてはいけないな、とみつる君は思ったのでした。ひとまず洗剤を使わせないように奥の方に隠しておきます。


「それじゃあ、俺はハンバーグでも作ろうかな」


 最初は戸惑っていたみんなでしたが、とんとことんとこと作っているうちに段々楽しくなってきました。

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