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ほうかごヒーロー!~五時までの、異世界英雄伝~  作者: カメメ
3章 君のことを知りたいんだ! 食べ物いっぱいの国、マーマル王国!
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19 みおちゃんのことを、もっとたくさん知りたいな

 橙花ちゃんの魔法講座も終わり、みおちゃんの折り紙講座も終わりました。みつる君と咲音ちゃんは自分たちの武器をしげしげと眺め、劉生君たち三人は折り紙を持って楽しそうにしています。


「みてみてリンちゃん! 飛行機! 二つも作ったよ!」

「かっこいいじゃない! あたしはね、ぴょんぴょんカエルよ! いいでしょう! ヨッシーは何作ったの?」

「僕は風船ですよ。しかし、折り紙は奥が深いですね。たった一枚の紙でこんな立体的なものができるとは……」


 リンちゃんはみおちゃんと視線をわせると、「色々教えてくれてありがとうね」と素直にお礼を言います。みおちゃんは「これくらい朝飯前よ」といいながらも、照れたように頭をかきます。


「また時間があったら教えてあげるよ! 今度は蒼おねえちゃんも一緒に作ろうね!」

「うん! もちろん!」

 

 みおちゃんの頭を優しくなでます。


「この国を出たら、友之助君と一緒に折り紙折ろうね」

「友之助? ああ、蒼おねえちゃんの友達だっけ?」

「……うん」


 橙花ちゃんはさみしそうに微笑みました。


「きっと、みおちゃんも仲良くできるよ。だから今は、みおちゃんの好きなごはんを頑張って見つけようね」

「えー……」

 

 みおちゃんは不満そうに頬をぷくりと膨らませます。


「みお、食べるのきらーい」

「そんなこといわないで、みおちゃん」

「むう……」


 渋々頷きはしていましが、気乗りしてはいないようです。ふてくされて地面を蹴っています。それでも橙花ちゃんはみおちゃんの好きなものを探さなくてはいけません。そうでなければ、みおちゃんの命がなくなってしまうのです。


 だから橙花ちゃんは嫌がるみおちゃんを宥めて、手を引きます。


「それじゃあ、マーマル王国の周りを歩いてみようか。何か美味しそうなものがあったら、ボクに声をかけてね」


 橙花ちゃんたち一行は、マーマル王国を歩き回ります。


 さすがはグルメな国、マーマル王国です。城の周りも食べ物であふれています。フライドポテトが一面に広がるポテト草原や、何十枚ものピザを絨毯のように並べてあるお店もあります。


 肉まんあんまんピザまんカレーまんが提灯代わりに垂れ下がっていた道もありますし、なんとシチューかけ流しのお風呂もありました。


 みているだけで楽しいですし、食べてみても美味しいです。劉生君たちも喜んでもぐもぐ食べます。咲音ちゃんだって好奇心に目を輝かせてパクパク食べています。


 しかし、みおちゃんはどれを食べても渋い表情をしています。しまいには一口も食べずに折り紙遊びをしはじめてしまいました。これ以上無理に食べさせたら癇癪を起こしてしまいかねないので、ここで一時足止めです。


「……うーん……」


 橙花ちゃんは明らかに沈んでしました。


「劉生君たちのおかげでみおちゃんの機嫌も良かったから、好きな食べ物も見つかると思ったんだけど……」


 リンちゃんも腕組みをして呻ります。


「こんなにあったら一個か二個かは好きなものもありそうなものだけど、本当に見つからないわ……」


 吉人君は首を傾げます。


「これまで食べてきたどんな高級レストランの食事より美味なんですがねえ……」


 やはり味云々の問題ではなく、食べること自体に毛嫌いしているようです。それをどうにかしない限り、彼女の好きな食べ物にはたどりつきません。


 では、どうやって食べることを好きにできるのでしょうか。リンちゃんや吉人君にはわかりません。


「ねえねえ、サッちゃん。何かいい方法あるかな?」

「食べるのが嫌なら、無理して食べさせてはいけませんよ! のんびりと待つのがおすすめです。わたくしのお家で勝っているワンちゃんも、昔は薬が飲めなかったですが、大人になるにつれて飲めるようになりましたからね。時がすべてを解決してくれます!」


 確かに、時がたてば解決することもありますが……。


「それが出来ないから困ってんのよ」


 リンちゃんはあきれてため息をつきます。


「ほんともう、サッちゃんったら抜けてるわね」

「ですが、そこが可愛いですよね!」


 吉人君は一人で嬉しそうに頷きます。


「……ヨッシーって、実はバカだったりする?」

「なっ! そんなことありませんよ! 因数分解できますし!」

「あーはいはい。ヨッシーは天才天才」


 吉人君の純情を適当に流し、今度はミッツンに訊ねます。


「ミッツンはどう思う?」

「……そうだね。うーん……。もう少し、みおちゃんのことを知らないと、どうにもできないかな……」


 みつる君はちらりとみおちゃんの方を見ます。こちらに注意していないのを確認してから、小さな声で橙花ちゃんに質問をします。

 

「ねえ。みおちゃんのこと、もっと教えてくれないかな?」

「……みおちゃんのことを?」

「うん。そうすれば解決方法も思いつくかもしれないし」

「……そっか。うん、そうだね」


 橙花ちゃんは苦悶しますが、深く悩んだ末、小さくうなずきました。


「……わかった。これから話すことは、みおちゃんには内密にしてね。もちろん、ほかの子にも言っちゃいけない。約束してくれる?」


 劉生君たちは迷いなく頷きます。


「……わかった。話すよ」


 橙花ちゃんは一人折り紙遊びするみおちゃんに視線をおくります。相変わらず、みおちゃんは折り紙に熱中しています。橙花ちゃんは優しく微笑み、「勝手に話してごめんね、みおちゃん」と呟きました。


 それから橙花ちゃんは、重い口を開きます。

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