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ほうかごヒーロー!~五時までの、異世界英雄伝~  作者: カメメ
2章 みんなで協力しよう! 水中の遊園地、フィッシュアイランド!
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26 リンちゃんのお家に、お邪魔します! 温かいご飯は、心もポカポカになるね!

「お邪魔しまーす! リンちゃん、入るね」

  

 リンちゃんのお家は六人家族で暮らしています。二つあるお部屋のうちの片っぽがリンちゃんと双子ちゃんの部屋、もう片っぽが弟君と赤ちゃん、リンちゃんのお母さんの部屋です。


 お母さんの方の部屋で、リンちゃんは赤ちゃんを宥めていました。


「ごめんねー。びっくりさせちゃったねえ。よしよし。……ああ、リューリュー。あの子たちは?」

「うちでご飯食べてると思うよ!」

「……やっぱりかー」


 リンちゃんは頭を抱えます。


「リンちゃんと赤ちゃんもおいでっていってたよ! 行こう!」

「あたしはいいよ。この子にご飯あげなくちゃいけないし。最近、食べ遊びしはじめたから、さすがにうちで食べさせたいし」

「でも、赤ちゃん寝ちゃったよ」

「え!?」


 さっきまであんなに泣いていたというのに、赤ちゃん目を閉じて寝ていました。


「あー、寝ちゃったかあー。こうなると起きないのよねえ……」

「すごい寝つきいいもんねえ」

「そうそう。前にママが、『この子、眠り病にかかったんじゃないの?』って心配するくらいなんだから」


 がっくりと肩を下すリンちゃん。フォローを入れたい気持ちになりますが、それよりも、話さなくてはならないことを切り出します。


「……その眠り病のことなんだけどさ」


 ついつい声を潜めてリンちゃんに友之助君の件を話しました。全て話し終えると、リンちゃんは戸惑ってしまいました。


「友之助君が眠り病? 一か月前に? けど、ミラクルランドでは元気そうだったわよ。リューリューの見間違いじゃない?」

「本当の本当に友之助君だったよ。だからさ、うちでテレビみてこようよ。ごはんも食べたいし! 赤ちゃんはうちのお布団に寝かせてあげてさ」


 リンちゃんの顔が曇ります。


「さすがに迷惑よ」

「迷惑なんかじゃないよ!」

「……何度も言うようだけどね、おばさんはリューリューのお母さんであって、あたしのお母さんじゃないの。どれだけ優しくしてくれても他人の子供なんだよ。そんなのが押しかけてきても、迷惑でしかないでしょ。お金も一円も渡せてないし」

「えー。でも……」

「でも、じゃないの。本当はあの子たちも引き上げたいくらいなんだから……」


 リンちゃんは断る気満々です。もし、これが吉人君なら、リンちゃんの気持ちを読み取って、「それじゃあ止めておきましょう」といえるのでしょう。

 

 ですが、劉生君はちょっぴり自分本位な男の子でしたので、彼女の気持ちを思いやることはせず、ニコッと笑って手を差し伸べました。


「いこっ!」

「……いや、だから、あたしは」

「でも、お腹ペコペコになっちゃうよ! ほら、いこいこ!!」

「……」


 こうなると、劉生君は絶対に譲りません。


 リンちゃんだってそのことくらい分かっていました。


「……はあ。全く、リューリューったら。ほんと、自分勝手なんだから」

「えっ? そ、そうなの」

「そうよそうよ。人の気持ちってもんを考えてないよね」

「ご、ごめん……。とりあえず、僕んちにいこうか」

「そういうところよ」

「え!?」


 そう言いながらも、リンちゃんの顔は綻んでいます。


「……そうね。あの子たちが食べ過ぎないように見張らなくちゃいけないし。一度行くわ」

「うん! ハンバーグ、半分分けてあげるからね」

「それはリューリューが食べなさい」


 軽く支度をして、リンちゃんは劉生君ちに行きました。


 入ってすぐ、リンちゃんはぺこぺこと劉生君のお母さんに頭を下げます。


「おばさん、ごめんなさい。急に来ちゃって」

「いいのよ。実はねえ、牛乳やら水やら足してたら量増えちゃって、どうしようって思ってたところだったのよ。逆に助かるわ。それよりもあなたたち、ちゃんと手洗いうがいしなさいよ! ……この距離で手洗いうがいって必要なのかしら? まあ、して損はない! 手洗いうがいしてきなさいよ」

「ごめんなさい、お借りします」


 リンちゃんは洗面所に入っていきます。


 劉生君のお母さんは優しいまなざしでリンちゃんを眺めます。


「ほんと、いい子よねえ。劉生もあれくらい気遣いできるようになりなさいよ」

「はーい! それじゃあご飯食べてく」

「手洗いうがい!」

「……はーい」


 しっかりと手洗いうがいをして、食卓につきます。リンちゃんの妹弟たちはもうご飯をむしゃむしゃ食べています。さすがリンちゃんの妹弟だけあって、いっぱい食べています。


「もぐもぐもぐ。おいしい! おかわり!」

「だから、遠慮というものを……」


 リンちゃんが慌てて注意しますが、劉生君お母さんは「いいのよいいのよ! リンちゃんもたくさんお食べ!」とニコニコしています。


 ちなみに、劉生君お母さんは本心で「たくさん食べてほしいなあ」と思っていますし、本心でリンちゃんたち姉弟を歓迎しています。


 お母さんもリンちゃんのお家の境遇を分かっていますし、自分が節約してでも、リンちゃんたちに笑っていてほしいなあ、と思っているのです。


 劉生君の優しい性格は、お母さん譲りなのです。


 スマホをいじる時間と、ゲームをする時間の制限、門限と手洗いうがいさえ守れば、とても優しいお母さんなのです。


 それでもリンちゃんは気が引けるのか、身を縮めてご飯を食べています。給食の時間にはたくさんおかわりするのに、今回は一度もおかわりしません。


 たくさん食べればいいのになあ、なんて思っていたら、テレビのニュースで先ほどと同じ映像が流れました。


 劉生君はちょいちょいっとリンちゃんの肩を叩きます。


「ほら、あれだよあれ」

「……あっ、本当だっ!」


 リンちゃんは息をのみます。正真正銘、友之助君だと分かったのでしょう。


「どういうことよ」

「僕にもどうしてだか分からないよ。どうしよう。吉人君に電話して聞いて見よっか?」

「うーん。この時間は勉強してるんじゃなかった? 確かヨッシーのお家って九時にご飯たべるみたいだし」

「へえ、そんなに遅いんだ!」

「どちらかというとリューリューんちがすさまじく早いだけよ」


 とりあえず明日、学校で聞いてみることにして、ひとまず二人はごはんを食べることとしました。


 ちなみに劉生君のハンバーグは、弟君たちに食べられてしまっていました……。


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