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ほうかごヒーロー!~五時までの、異世界英雄伝~  作者: カメメ
2章 みんなで協力しよう! 水中の遊園地、フィッシュアイランド!
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14 アトラクションを考えよう! アイディアは、ひょんなところで

 一体、どんなアトラクションがいいのだろう。


 朝のホームルームの間も、劉生君は考え込んでいました。


 担任の先生が深刻そうに、「子どもが寝たきりになる謎の奇病が流行っている」とか、「何か困ったことがあったらご両親か先生に相談してほしい」とか言っていましたが、劉生君の頭の中にはあまり残りませんでした。


 吉人君やリンちゃんが提案したように、体験型のアトラクションがいいのでしょうか。


 どういう体験のできるアトラクションがいいのでしょうか。


 いくら頭をひねってもよく分かりません。


 別のことを考えるようにしよう、と思っても、今度は「どうやったら魔王を倒せるのか」と悩んでしまいます。


 魔王の倒す方法ともなると、アトラクションを考えるより一層難しいです。なんだって、劉生君たちは魔王ギョエイに手も足もでなかったのですから。

 

「……はあ……」


 劉生君はため息をつきます。


 悩んでいる間に朝のホームルームが終わり、一時間目の社会が始まりました。先生はのんびりと間延びした声で教科書を呼んでいます。低くしゃがれた声で読むもんですから、リンちゃんは速攻で寝てしまいました。


 劉生君も眠気をおさえながら、教科書を睨みます。


 しばらくは環境、特に温暖化をテーマに授業を進めるようです。教科書には溶けゆく氷の写真が写っています。


 先生曰く、二酸化炭素の量が多くなりすぎて、今の地球は暑くなりすぎているとのことです。そのせいで南極や北極の氷が溶けてしまっています。


 氷が解けるだけではありません。他の動物たちにも影響を及ぼしています。水温があがったせいで魚たちも住処を変えなくてはならなくなってきているとのことです。


 水温かあ、と劉生君は考えます。


 魔王がいる部屋を温泉くらいに温かくしたら、もしかしたら倒せるかもしれません。一瞬そう考えましたが、すぐに厳しいかも、と思い直します。


 劉生君があれほど『ドラゴンソード』を振り回しても、水温は上がりませんでした。


 あの水は相当努力しないと温度が上がらないか、そもそも温度が上がらないようになっているのでしょう。


 またまた劉生君は悩んでしまいます。その間に、先生は教科書の朗読を終えて解説をはじめました。


「このように、温暖化は深刻になってきています。さて、私たちは温暖化にどう対処すればいいと思いますか。答えてもらいましょうか。それでは、出席番号一番、赤野君!」

「ふぇ!? は、はい!」


「そんなに驚かなくてもいいよ」先生は苦笑します。


「それで? どうでしょうか。赤野君は温暖化にどう対処すればよいと思いますか」

「え、えっと、」


 劉生君は頑張って答えてみます。


「温度が上がって困っている動物たちを、動物園や水族館に入れて守ってあげる、とか、ですかね……」

「ありがとうございます。赤野君が答えてくれたことも間違いではありませんね。ですけど、温暖化そのものをどうにかすれば、動物たちも困らずに済みます。温暖化問題を解決する方法も考えてみましょうか。それでは、」


 先生は教室全体を見渡し、ちょっと口元を緩めながら指名します。


「ぐっすり寝ている道ノ崎さん。答えてください」


 隣の子に肩をトントンと叩かれて、リンちゃんは眠たそうに顔を上げます。


「ふぁい? 給食の時間ですか?」

「まだまだ先ですよ」


 クラスの子たちがドッと笑います。


 先生もついつい笑ってしまいながら、もう一度質問を繰り返します。


「温暖化問題を解決する方法について、答えてくれますか」

「おんだんか? うーん、エアコンを外向きにつけておけばいいんじゃないです?」

「残念ながらそれだと悪化しますね」


 エアコンを動かすためには電気が必要です。


 電気は畑でとれるわけではありません。化石燃料を燃やして作ります。化石燃料は燃やすと二酸化炭素が大量に出てしまい、より一層温暖化が深刻になってしまうのです。


 なんて説明を先生から聞いたリンちゃんは、「ふーん」と興味がなさそうに頷きます。実際、興味はないのでしょう。


 リンちゃんの態度に、先生は眉をひそめます。

 

 ここで普通の先生ならぷんすか怒るのでしょう。


 しかし、この先生は前の年もリンちゃんの担任だった先生です。リンちゃんの扱いには慣れっこでした。そのため、リンちゃんがやる気になる、とある一言をつぶやきます。


「ちなみにこれ、テストに出るかもしれないから皆さんしっかりとメモしてくださいね」

「え!? そうなんですか!?」


 リンちゃんはぱっちり目を覚ますと、慌ててノートを開いて黒板の内容を書き込み始めました。


 そんなリンちゃんをみて、先生は含み笑いをします。


 そう、先生は明言はしていないのです。


 実際にテストに出すか、出さないのか。


 そのとき、吉人君はこう思いました。


 この先生、かなり優秀だぞ……! と。


「それでは次の人に質問しましょう。では、鐘沢君」

「っ! はい」

「温暖化の解決方法について、教えてください」


 吉人君、ここは優等生らしくすらすらと答えます。


「二酸化炭素の排出量を減らすために、使わない部屋の電気は消して、クーラーの設定温度を一度上げる、ですね」

「その通りです」

「え? そんな程度でいいの!」


 驚いたのは、話を真面目に聞き始めたリンちゃんです。


「ええ、その程度でいいんです」先生は優しく答えます。


「一人一人が出来ることはとても小さなことです。そのくらいで地球規模の問題を解決できるのか、と思うのも無理はありません」


 ですけど、といって、先生は話を続けます。


「地球にいる人たち全員が協力すれば、出来ない事ではありません。みんなが知恵を出し合って、みんなで協力すれば、温暖化なんて朝飯前ですよ」

「……」


 劉生君はぼうっと先生の話を聞いて、そして、手元の教科書に視線を落としました。

 

 地球温暖化という強大な敵に、立ち向かう方法。それはみんなで知恵を出し合って、力を合わせること。そうすれば敵を倒すことができると、先生は言っていました。


 ……知恵を出して、力を合わせる。


「……そうかっ!」


 劉生君はひらめきました。早く二人に伝えたかったので、授業が終わるとすぐに二人を集めます。


「急にどうしたのよ。ふわあ、眠い」

「次の授業は音楽の授業ですし、早く移動した方がいいですよ」 


 眠たそうに目をこする二人に、劉生君は目をキラキラさせて話します。


「あのね、思いついたんだ!」

「へえ、いい感じのアトラクション?」

「それと、あとは魔王を倒す方法!」

「魔王を倒す方法?」


 不思議そうに首を傾げる二人に、劉生君はたどたどしい口調で彼の意見を伝えました。

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