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ほうかごヒーロー!~五時までの、異世界英雄伝~  作者: カメメ
2章 みんなで協力しよう! 水中の遊園地、フィッシュアイランド!
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13 アトラクションを考えよう! ―吉人君、ついでに劉生君編―

 偉そうな吉人君に、前回発表者のリンちゃんはムッとして噛みつきます。


「何がまだまだなのよ!」

「あの遊園地への理解が、まだまだなんです」

「理解……? どういうことよ」

「それではまず質問しましょう。赤野君、あの遊園地のアトラクションはどんな特色があると思いますか」


 劉生君は一生懸命頭を捻ります。


「うーん……。なんだろう……」

「ずばり、あの遊園地は激しいアトラクションばかりなんです」

「あー、言われてみればそうかも」


 フィッシュアイランドのアトラクションは、ジェットコースターやお化け屋敷みたいなスリリングな乗り物ばかりです。


「ああいうのは子供も喜びますが、同時に飽きも早い。ですので、スリリングではないアトラクションを考えました」


 吉人君の発表のはじまり、はじまり、です。


「僕が考えたアトラクションは、『駆け巡れ! スタンプラリー!』です。といっても、普通のスタンプラリーではありませんよ」


 観客はスタンプを集めるために遊園地の中を回ります。しかし、スタンプ台はそこらへんに置いてあるわけではありません。


「スタッフを探して、クイズに答えたら、スタンプをもらえます」


 リンちゃんは首を傾げます。


「スタッフを探す? どっか隠れているの」

「ええ。普通に見つけるのは難しいでしょう。ですから、子供たちには指南書をお渡しします」


 指南書には、こう書いてあります。


『あの魚は狭い場所が好きな魚。岩陰を探してみよう!』『この魚はあったかい海にいる魚だよ。サンゴ礁を探してみよう!』などなど。


 子供たちはこの指南書を頼りに、魚たちを探しに行くのです。


「見つけるだけではいけませんよ? クイズに答えなくてはなりません」


 クイズは魚に関するクイズです。指南書の内容がほとんどですが、それ以外にもちょっとした魚のなぞなぞや、ちょっとした迷路が出題されます。


「クイズに正解したらスタンプをもらえます。全て集めると、豪華景品をプレゼントです! さあさあ、どうですか? 僕のアトラクションは?」


 劉生君はグッと親指をたてます。


「ナイスだよ吉人君!」

「ですよね! ではでは、得点をどうぞ!」


 みつる君は二点、咲音ちゃんは三点をあげました。みつる君は「面白そうだけど、大変そう」と考え、一点減点しました。


 リンちゃんはガッツポーズで喜びます


「やった! あたしの勝ちね!」

「いやいやっ! 一緒ですよ!」


 吉人君、慌てて否定します。


「あらそうなの。じゃあ、リューリュー次第でどうなるかって感じね」

「わくわくしますね!」


 鳥谷さんもニコニコ微笑んで、劉生君の発表を心待ちにしてくれます。


「頑張りなさいよー」「楽しみにしてますね」リンちゃんと吉人君がエールを送ってくれます。


 みんなの視線が劉生君に集まります。劉生君はあまり注目を受けるのが好きではありませんので、ドキドキしてしまいます。


 ですが、これも橙花ちゃんを救うため、そして子供たちを救うためです。劉生君は勇気を振り絞って立ち上がります。


「よ、よーしっ! は、発表するよ!」


 さあ待ちに待った劉生君の発表です! 

 真打たる彼は、一体どんなアトラクションを考え付いたのでしょうか……!


 劉生君は不安そうにしていますが、読者の皆さんは心配することなんてないでしょう。今まで言及はしていませんが、実は彼、今作品の主人公なのです。主人公が有終の美を飾るのは古くからの定めですから、きっと、いや、絶対に良き案を出してくれるでしょう!


 主人公補正という神の加護を与えられた劉生君は、口を開きました。


「僕はね、僕が楽しいなって思えるものを考えてきたよ!」


 劉生君が考えたのは、乗り物に乗って探検するタイプのアトラクションです。お客さんたちがトロッコに乗ると、アトラクションスタートです。


 トロッコは暗い洞窟を抜けていきます。カタカタ、コロコロと車輪が回る音だけが響きます。


 そして、洞窟を抜けた先にあるのは、


「そう! 『勇気ヒーロー ドラゴンファイブ』の等身大フィギュアたちです! フィギュアの周りをぐるぐると回った後! 向かう先は『勇気ヒーロー ドラゴンファイブ』の敵役の等身大フィギュアがっ」

「はいたんまたんま!!」

「タイム! タイムです!」


 颯爽とリンちゃんと吉人君が話を割って入りました。


「あんたねえ! よりにもよってヒーローもの!? 何考えてるんよ!?」

「期待して損しましたよ!!」


 残念なことに、劉生君の『勇気ヒーロー ドラゴンファイブ』好きはあまりに強大でした。あまりに強大で、主人公補正さえも効きませんでした。残念無念……。


「はい、それじゃあ採点しましょうねえ!」

「ええ!? ま、待ってよリンちゃん! まだ話は途中だよ!」

「今後一切『勇気ヒーロー ドラゴンファイブ』の話が出ないなら、話して構わないわよ」

「……」

「はい採点!」


 一点! 一点! 一点! 一点!


「はい終了! お疲れさまでした!」

「待って! 理由! 理由きかせて!」


 鳥谷さんと林君は戸惑いながら答えます。


「「『勇気ヒーロー ドラゴンファイブ』って、何……?」」


 劉生君は衝撃を受けます。


「そんなっ! 知らないの!? 分かった! 今から説明するね! 『勇気ヒーロー ドラゴンファイブ』っていうのは日曜の朝からやっているヒーローもので」


 リンちゃんは慌てて二人の背を押します。


「ミッツン! さっちゃん! もう帰った方がいいわよ!!」


 吉人君も全力で頷きます。


「ええ!! 授業の準備を進めた方がいいですよ!!」


 なんだかよく分かりませんが、鳥谷さんと林君は二人の意見に従うことにしました。ちょっぴり嫌な予感もしたからです。


「そ、それじゃあね赤野ッち! みんなもね!」

「わたくしも失礼します」


 二人はささっと逃げました。

 残ったのは、不満そうに唇を尖らせる劉生君でした。


「ちょっとちょっと! せっかく『ドラゴンファイブ』仲間を増やせるチャンスだったのに!」

「リューリュー、あんたね、もうちょっと『ドラゴンファイブ』好きを抑えなさいっての!」

「そうですよ。僕と道ノ崎さんにならいいですけど、他クラスの子にまで被害を広めてはいけませんよっ!」


 結構な圧で怒られました。劉生君、しょんぼりです。


「全く……。それで、ヨッシー。あたしの案とヨッシーの案、どっちにするの?」

「……うーん。同じ点数でしたからね。選ぶのが難しいですね」

「だからといって、もう一度考え直すのもねえ。これが最高傑作なわけだし……」


 二人は頭をひねって考え込みます。劉生君は蚊帳の外でしたが、彼も彼で頭をひねります。


 リンちゃんと吉人君には批判されてしまいましたが、劉生君も劉生君で本気で考えて作り上げたアトラクションです。これ以上の物を作りだせる気がしません。


 どうすればいいのだろう。劉生君は悩みに悩みます。


 ですが、三人で悩んでも残念ながらいい案が出てきません。そうこうしているうちに時間も過ぎ、他の生徒が来てしまいました。三人はこれ以上の話をするのを諦めて、授業の準備をすることとしました。

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