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ほうかごヒーロー!~五時までの、異世界英雄伝~  作者: カメメ
2章 みんなで協力しよう! 水中の遊園地、フィッシュアイランド!
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11 新しい友達ができたよ!

「「まことに申し訳ありませんでした」」

「いや、いいって……」


 林君は氷枕で顔を冷やしていました。彼の前には、土下座するリンちゃんと吉人君の姿があります。


「あたしの勘違いで手をあげてしまい、誠に申し訳ありませんでした……」

「適当なことをいって、誠に申し訳ありませんでした……」

「だからいいって。ちょっと痛いだけだし。……それで、二人はどうして保健室に来たの?」

「あっ、そうだったわ」


 リンちゃんは吉人君の背を押します。


「ヨッシーが手を紙で切っちゃったから、絆創膏をもらいに来たの」

「わかった。ちょっと待っててね」


 林君は消毒液と絆創膏を持ってくると、吉人君の傷に消毒液をささっと吹きかけ、しっかり絆創膏を貼ります。


「これで大丈夫だね」


 吉人君はしげしげと絆創膏が巻き付いた指を見つめます。


「すごいですね。綺麗に貼っています。実は絆創膏は持っていたんですが、うまく貼れなくて困っていたんです」


 リンちゃんはすっと視線を逸らします。


「そ、そういう細かい作業は得意じゃないのよ。……ほら、ミッツン君は保険委員だし、きっとそういうのが得意なのよ」

「ミッツン……? あっ、もしかして俺のこと?」


 鳥谷さんはニコニコしながら頷きます。


「林君のすごいところはそれだけじゃないんですよ! ボタンが外れてたらつけてくださいますし、お料理だって出来るんです! わたくしと林君は料理クラグで一緒なんですが、彼の作るお料理はいつも美味しいんです!」

「いやいや、レシピ通り作ってるだけだよ」


 林君はちょっと照れています。


「……僕も、料理くらいはできますよっ! レシピさえあれば!」


 なぜか、吉人君が対抗してきました。


「あら、そうなんですね! ではではっ、ぜひわたくしと一緒にお料理しましょう!」

「え! 本当ですか! ぜひぜひ!」


 吉人君は顔を緩めています。鳥谷さんも嬉しそうです。


 その二人のかげで、林君が顔をしかめて黙って首を横に振っています。


「……やめたほうがいいよ。うん……」

「? どうしてですか?」

「……それよりも、そろそろ休み時間が終わるから、教室に帰ったほうがいいんじゃない? 赤野君も着替えなくちゃいけないんだし」

「え? ああっ、本当ですね!」


 彼らは時計を見上げます。もうそろそろでチャイムが鳴ってしまいます。


 リンちゃんが頭を抱えます。


「アトラクションの話も、魔王の話も、何もできなかったわね」

「うう……。ごめん、リンちゃん」

「リューリューは悪くないわよ。仕方ないわ、また明日のお昼休みに考えましょ」


 なんて話していると、鳥谷さんと林君がキョトンとして劉生君たちを見ていました。


「アトラクション? 魔王? なんのこと?」「なんだかおもしろそうな響きですね!」


 劉生君とリンちゃんは互いに顔を見合わせます。

 ……言ってはいけないことを言ってしまった気がします。なんとか誤魔化さなくてはなりません。


「へ? え、えーっと、な、なんだっけリンちゃん?」

「ちょ、あたしに振らないでよっ! そのー、あ、あれよ! ど、道徳の時間でそういう授業をやったのよ! 楽しいアトラクションを作りなさいっていうね!」

「ふーん?」


 林君は不思議そうに首を傾げます。


「道徳の授業って、クラスによって違うんだっけ? 俺のクラスではそんな授業じゃなかった」

「「ぎくっ!」」


 さっそくバレそうな気配です。ドキドキしていた劉生君とリンちゃんでしたが、ここで吉人君が救いの手を伸ばしてくれました。


「授業が早く進んだので、レクリエーションをしたんですよ。他のクラスはしていないはずです」

「へえ、そうなんですねえ」「そういうことね」


 二人とも納得してくれました。劉生君とリンちゃんはほっと一息つきます。


 ですが、一難さってまた一難です。安心したのもつかのま、鳥谷さんはきらきらと目を輝かせてこう言いました。


「それでは、みなさんは面白いアトラクションを考えているってことですね!」

「え? そうですね」


 吉人君が頷くと、鳥谷さんは彼の手をぎゅっと握りしめました。


「それじゃあ! 是非わたくしたちにも見せてください!! 何かお手伝いできると思いますし、何より楽しそうです!」

「へ?」

「もしかして、難しいですか……?」


 鳥谷さんがうるうるとした目で吉人君を見上げます。


 そんな目で見つめられたら、奥手な吉人君はイチコロです。


「あ、いえ、だいじょうぶですよ。見せてあげましょう」

「本当ですか! やった!」

「ちょ、ちょ、ちょっとヨッシー!」


 リンちゃんは慌てます。


「何言ってんのよっあんたっ!」

「い、いや、そのー。あれですよ、僕ら三人だけで考えても、偏った意見しか出せません。たくさんの子供たちが楽しめるアトラクションを作るんですから、出来るだけ多くの人の意見を聞かなくてはなりませんって」

 

 吉人君、決死の言い訳です。


 ですが、さすが秀才が頑張って取りつくろった話です。


「確かに、吉人君の言う通りかもしれないね。他の人の意見も聞きたいし」


 劉生君は納得します。


「うむむ、なんか釈然としないけど、ヨッシーの言うとおりね」


 リンちゃんも違和感を覚えつつも納得しました。ひとまず吉人君は心の中でほっとします。


 三人の話が終わるのを見計らい、鳥谷さんはある提案をしました。


「ではではっ、明日の朝はどうでしょうか? お昼は林君も委員会がありますし!」

「……え?」


 林君はきょとんとします。


「いや、俺は別にアトラクションに興味な」

「決まりね!」


 リンちゃんは頷きます。


「朝だったらヨッシーも大丈夫だものね!」

「そうですね。赤野君は大丈夫ですか」

「お、起きれるかな」

「だいじょーぶ! あたしが起こしてあげるからっ! それじゃ、七時三十分にしゅーごっ!」

「「「「はーい!!」」」

「……え? ……え??」


 林君が呆然としている間に、キンコンカンコンとチャイムがなりました。

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