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6 劉生君と、……。


 夕日をバックに、劉生君は眠っていました。


 観覧車が動く音も、アナウンスの声も、橙花ちゃんの独り言も、聞こえなくなっていました。


 劉生君の意識は、深く、深く、ずっと深くに沈んでいき、


 ちらりと、光がみえました。


「ん……?」


 劉生君は、眼を開きました。そこは観覧車の中ではありません。そもそも、現実味すらない場所でした。


 周りは真っ黒で、何もありません。


 しかし、ある一点だけ違います。


「あ、あれ?」


 赤黒い光がぼんやりと灯っています。光は人の形をしていました。実体もありませんが、劉生君は咄嗟に悟りました。


 劉生君は、まるで幼稚園のときの知り合いと出会ったかのように、気軽に手を振りました。


「久しぶり、魔神さん!」

「……」


 光が微かに動きました。


「……お前は、なんだ」

「ええ! 忘れたの? 僕だよ僕! 赤野劉生!」

「……ああ、お前か」

「心配してたんだ! どう? 元気にしてた?」

「……そうだな。もうすぐ存在が消えそうなくらい、元気だな」

「そっか。元気なのかってええっ!? 消える!? どうして!?」

「知るか」


 だるそうに魔神はあしらいます。


「それで、お前はどうしてここに来たんだ」

「んー」


 そんなこと言われても困ります。劉生君だって、来たくて来たわけではありません。答えられないでいると、魔神は苛立ったように言葉を続けます。


「皆を助けられたんだろ。だったら、ここに来る必要もない」

「……あっ、そういえば、」


 ここで、劉生君はあることを思い出しました。


「魔神さんが力をくれたおかげで、みんなを元の世界に戻せたんだ! ありがとうね!」

「……別に構わない。どうでもいい」


 本気でそう思っていますので、魔神は迷惑そうです。もちろん、劉生君は魔神の意志なんて端から配慮せずに、ぽん、と手を叩きました。


「そうだ! 橙花ちゃんがね、僕にこれ、くれたの。本当は僕が持っておきたいけど、あの時のお返しだからね。どうぞ!」

「……なんだそれは。それに、『トウカ』って誰だ」

「えー!! また忘れたの!?」


 劉生君は頬を膨らませます。


「橙花ちゃんは橙花ちゃんだよ! 魔神さんが蒼って呼んでた子!」

「……蒼。……ああ、蒼。そうか、そんな名前だったか」

「もう忘れちゃダメだよ」


 なんて釘を刺して、プレゼントを渡しました。


「はい、どうぞ!」

「……」


 魔神は、アクセサリーを受け取りました。


「……それで、蒼は、……橙花も、助けたのか」

「もちろん!」

「……そうか」


 ぎゅっと、アクセサリーを握ります。


「……不思議、だな。あの女の子とは、あんなに憎んでいたのに、……助けたとお前がいうと、心が、暖かくなる」


 アクセサリーから、オレンジの光が放ちました。赤黒い、まがまがしい魔神の光が、オレンジ色に浄化されていきます。


 光はどんどん小さくなっていき、そして、


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