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ほうかごヒーロー!~五時までの、異世界英雄伝~  作者: カメメ
ミラクルランドと現実世界!
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4 本当の本当の、お別れが迫っているようです

 

 みおちゃんの体調も万全、橙花ちゃんが笑顔になってくれて、ミラクルランドにいるギョエイは安心したように顔を綻ばせます。


『蒼はいい友達に巡り会えて、よかったね』


 あの子達なら、蒼を任せられると、ギョエイは思いました。相変わらずのお父さんムーブです。レプチレス社長は小さくため息をつきます。


『この子供好きは一旦置いておくとして、……トトリ姫。どうかしたのか?』


 社長の一言で、王たちの視線がトトリに集まりました。いつもは気だるそうにしている彼女ですが、今のトトリは、深刻そうに、じっと鏡を見つめていました。


 鏡から視線をそらさず、トトリは口を開きます。


『さっき、あの医者がこう言っていたよね?みおちゃんの後遺症は治りかけ、今日の発作は偶然だ、と』


 ザクロはキョトンとして首をかしげます。


『そうだったか?全く聞いてなかったから、分からないぞ!』

『……』


 トトリは、ザクロを無視することにしました。


『だけど、違う。あの医者の判断は間違っている』


 きっぱりとした言い方に、リオンはムッとします。


『ほう。お前は魔法に長けていると聞いていたが、医学の知識もあったのか。それは知らなかった。王を辞めて、医者にでもなったらどうだ?』

『ワタシは医者ではない。だが、魔法はそれなりに自信がある。だから分かる。……鏡を通じて、ミラクルランドの魔力が向こうの世界に流れ込んでいる』

『……魔力が?』


 リオンは顔をしかめ、その勢いでレプチレス社長を睨みます。


『この鏡には、そんな効果もあるのか?』

『いや、ないはず。ないはずだが……。まさか……』


 ザクロが、『あっ、そうか!』と、声を上げます。ザクロは間違い探しをいち早く見つけた子供の様に、ルンルンで話します。


『あの子供が発作? か何かで座っていたとき、靄みたいなものがあの子供を包んでいたな。あれがミラクルランドの魔力だったのか!』


 本当にそうなのかと、リオンが目でトトリに尋ねます。トトリは迷いなく頷きます。


『ついでにいうと、ギョエイがあっちの世界に呼びかけたときも、靄みたいなものが発生していた。あのときも、ミラクルランドの魔力が、あっちの世界に流れ込んでいたんだろうね』

『ちょ、ちょっと待って』


 ギョエイは戸惑ったように鏡とトトリを見比べます。


『その靄のせいで、みおちゃんが後遺症を発症したんだったよね? だったら、あの子たちが話していた後遺症って、もしかしてミラクルランドのせい……?』


 レプチレス社長が考えながらも、つらつらと答えます。


『きっと、そうだろう。ミラクルランドにいるせいで眠り病に罹ってしまうように、ミラクルランドにいたせいで、後遺症に罹ってしまっている。一番あり得るのは、こういう理由だろうね』

『……』


 ギョエイは、じっと鏡を見つめます。


『……原理は分からないけど、この鏡は向こうの世界と津上がってしまう。つながっていると、向こうの世界に戻った子供たちが、後遺症で苦しんでしまう。そういうこと?』

『さすがギョエイ皇帝。物わかりがいい』

『……つまり、この鏡はもう壊してしまった方がいい。そういうことだよね』

『ああ。その通り』

『……』


 ギョエイは黙ります。


 あの子たちがミラクルランドからいなくなってから、ギョエイはフィッシュアイランドを再建しながらも、心の片隅では、あの子たちは今どうしているかな、向こうの世界で頑張っているかな、誰かにいじめられていたら、と悩んでいました。

 

 ですので、レプチレス社長から、向こうの世界を見る鏡があると教えてくれたときには、本当に嬉しくて、ついついはしゃいでしまいました。


 けれど、鏡のせいであの子たちが苦しんでいるのなら、


 ……もう、鏡は使えません。


 あの子たちの姿を見ることはできません。


『……わかった』


 我儘をいうつもりは、ありません。


『鏡を壊そう。どう処理すればいい? ボクたちの力を合わせて壊したほうがいい?』

『いや、そこまでの魔力はいらない。なんなら、壊す必要もない。あともう少しで鏡の電池が切れるから、放っておいたらあっちとの回線が切れる』


 ザクロが『どれぐらい持つんだ?』と尋ねると、レプチレス社長は鏡のまわりをぐるぐるまわってから、きっぱりと言います。


『あと二時間、向こうで太陽が沈み始めた頃だね』


 ギョエイが、ぽつりと呟きます。


『……そっか。あと二時間か』


 あと二時間で、


 ……本当に、あの子たちと、橙花ちゃんたちとお別れです。


 他の王たちも、複雑そうに鏡をみています。


 子供があまり好きそうでなかったリオンでさえも、真剣な目をしていました。


 王たちが見つめる中、鏡の向こうの彼らは、とても楽しそうに笑っていました。


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