2 懐かしい人が登場です!
劉生君、吉人君は見覚えがありました。そう、みつる君のお店で酔っぱらって、みんなに嫌な思いをさせ、橙花ちゃんのお兄ちゃんに懲らしめられた中年男性さんです。
彼はこの病院で勤めるお医者さん、それも、眠り病担当のお医者さんでした。ですので、みおちゃんの顔をみて、目を見張ります。
「君は……? どうかしたの?」
今がチャンスとばかりに、李火君が説明をします。
みおちゃんが突然体調が悪くなってしまったこと、薬を持っていないことを伝えると、先生さんの顔色が変わります。
「……分かった。ちょうど今は手があいているから、ちょっと診察しようか」
医療事務の人が、「いいんですか?」と戸惑っていますが、先生さんは、「何かトラブルがあったら、私が処理します」ときっぱり言い放ちます。
意外にも、事務の人はあっさり引いてくれました。先生さんは看護師さんに空いている病室を聞いてから、みおちゃんを手招きします。
「な、なあ!」幸路君が心配そうに駈け寄ります。
「俺も、付いていっていいか?」
みおちゃんはむっと頬を膨らまします。
「えー、ついてこなくていいよ。ついてくるなら、李火がいいー」
「つっても、お前一人じゃ、難しい話分からねえだろ」
「友之助おにいちゃんも分からないでしょ?」
「おいおい、俺を見くびんなよ。俺はな、結構頭いいんだぞ! 漢字テストも六十点だ!」
あまり点数がよくなさそうですが、幸路君はドヤ顔です。
みおちゃんはまるで大人かのように腕組みします。
「むー、仕方ないなあ。特別だよ?」
「おう! んじゃ、いってくる!」
みおちゃんと幸路君は先生さんに連れられて、診察に入りました。橙花ちゃんはホッと息をつきます。
「よかった。これで、何とかなりそうだね」
李火君も安心したようで、表情が柔らかくなります。
「ああ、そうだね。……さて、どこで待つ? 十分程度なら、ここで待ってようか」
近くにはベンチがありますし、廊下の向こう側には小さな売店もあります。一休憩入れるのも、悪くはないかもしれません。
「でもさあ……」
みつる君は肩身狭そうに身を縮めます。
「この人数で、ベンチを占領したら、迷惑じゃない……?」
確かに、その通りです。
劉生君たちは大所帯、そのうえ子供たちだけで病院に乗り込んでいるわけです。他の入院客も不信そうにジロジロ見てきていますし、眉を顰める入院患者もいらっしゃいます。
他の患者さんの迷惑にもなりますし、ここではないどこかで待っていた方がいいかもしれません。
「あ、そうだ!」
ここぞとばかりに、劉生君が提案します。
「それならさ、みんなで屋上に行ってみない!? お花、見に行こうよ!」
別段、反対意見もありませんでしたので、みんなはぞろぞろと屋上へと向かいました。