7 男子高校生と接触する、怪しい影!
王たちがそれぞれ考えを巡らせて鏡を見ていますが、鏡の中の子供たち、現実世界の劉生君たちは彼らの思いを露とも知らず、勝利の余韻を噛み締めています。
「さすがリューリュー、橙花ちゃんコンビね!」
リンちゃんはVRを外すと、真っ先に二人をたたえます。
「それに比べて、あたしったら、すぐに負けちゃって……。自分が不甲斐無いわよ」
「リンちゃんは悪くないよ。タイミングが悪かっただけだよ」
橙花ちゃんはすぐさまフォローを入れます。その表情は優しいものでしたが、男子高校生に視線を移すと、酷く冷たい表情に一変していました。
「これで満足した?」
「……」
男子高校生は何も言えません。それもそうでしょう。ありとあらゆる大人げない戦法を使ったにも関らず、あっさり負けてしまったわけですから。
結局、「いこうぜ」と誰かが声をかけ、ぞろぞろと去っていきました。
敗走する彼らの背中を、リンちゃんは不愉快そうに睨みつけます。。
「あたしたちにあんなに迷惑かけておいて謝りもしないなんて、あっちの方が子供じゃない。ああいう大人になっちゃダメよ、リューリュー!」
「う、うん。わかった」
劉生君は頷きます。
しかし、リンちゃんにはこう言いましたが、実際、自分が高校生になったら、どんな人になっているのでしょうか。想像もつきません。
ふと頭をよぎったのは、ミラクルランドで出会った、魔神の姿でした。
魔神は、自分自身を劉生君の未来の姿、と話していました。
あのときの劉生君は、魔神の言葉は本当なのか、嘘じゃないのかと疑っていました。
半信半疑、どちらかというと信じてあげよっかな、くらいでした。
ですが、鏡を見たり、アルバムを見たりする中で、「ああ、魔神ってやっぱり僕だったんだな」と感じる瞬間が増えてきました。
今では、魔神は自分の未来の姿、橙花ちゃんたちを助けられなかった自分なのだと、噛み締めることができています。
きっと、ときが経てば、劉生君も魔神のような背丈になることでしょう。
けれど、魔神のようにはならない、そう確信していました。
だって、今の劉生君は、橙花ちゃんを含めて、みんなを助けているのですから。
「……」
ここで、劉生君はある疑問を抱きました。
では、みんなを助けられなかった自分は、今、どこで何をしているのだろう、と。
考えても仕方ないことなのでしょうが、どうしても、劉生君は何となく思い悩みました。
○○○
劉生君たちに惨敗し、男子高校生たちはとぼとぼと歩きます。
「あいつら、強すぎだろ」「チートでも使ってんじゃねえのか?」「それな……」
お互い顔を見合わせ、ため息をついています。
思えば、あんな小さい子供相手に小遣いをはたき、ネットで攻略法を調べるなんて、どう考えても時間の無駄でしかありませんでした。
がっくりとしながら歩く彼らに、ある人物が、声をかけてきました。
「ねえ、君たち」
男子高校生はむしゃくしゃしていました。八つ当たりをするかのごとく、彼らは話しかけてきた人物を睨みました。
「なんだよ、おま、」
ですが、彼らはすぐに言葉を止め、あんぐりと口を開きました。
「あ、あなたは……!」