3 リアル世界でも、喧嘩の火種は落ちているものです
男子高校生は、チケットを手に、猛抗議しています。
話を聞く限り、VRを遊べる予約チケットを持っているのに、なぜ入場できないのだと、怒っているようです。
受付の人が、「順番ですから」と
受付の人は困ったように、他のスタッフをちらちら救いを求める視線を送ります。
そこで、男子高校生はあかたも偶然劉生君たちを見つけたかのように、あからさまに驚きました。
「んだよ、俺らの横入りしてんのは、あのときのガキたちか」
「俺らに譲れ譲れ」
喧嘩腰の彼らに、みつる君咲音ちゃん、もちろん劉生君もびびっていますが、さすが血気盛んなリンちゃん吉人君。男子高校生に食って掛かります。
「そっちが横入りでしょ。どうせ、あたしたちの邪魔をしにきただけだろうに」
「ですよ。チケット持っているんですか」
すると、男子高校生たちはその言葉を待ってましたと言わんばかりにニヤリと笑い、チケットを見せつけてきました。
「ほれ、見てみろよ」
チケットには、今の時間が記されています。
偽物ではありません、本物のようです。
リンちゃんと吉人君は顔を見合わせて、黙ってしまいました。
高校生たちは誇らしげです。
鼻高々といった様子ですが、チケットを手に入れた経緯はあまり立派なものではありません。
彼らは劉生君たちに一泡ふかせてやろうと、まずはSNSを開き、VRを遊ぶチケットを売ってくれる人を探しました。
大イベントのチケットならともかく、一地方のチケット、それもゲーセンのチケットなんて、そう簡単には売っていません。そもそも、みんな持っていません。
ですが、高校生たちは地方の子たちのツテをたどり、どうにかしてチケットをゲットしたのです。
代償は大きく、かなりのお金を捨ててしまいました。
来週買おうと思っていた新作ゲームも遊べません。
そんなカッコ悪い経緯がありますが、今の高校生たちは相当偉そうにしています。
「ほれ! 俺らの番だ! さっさとどきな! それとも……?」
高校生は、ニヤリと笑います。
「俺らと対戦するか?」
「はあ?」
リンちゃんは目をつり上げます。
「そんなこと、するわけないじゃない」
「なんだよ、怖いのか? 俺らと戦うのが」
「なんであたしたちが怖がらなくちゃいけないのよ」
「だったら、対戦してもいいだろ?」
橙花ちゃんは、このタイミングで男子高校生たちの意図を気がつきました。
彼らは、劉生君たちを挑発して、戦わせようとしているのです。
そこでぼこぼこにして、いい気になろうとしているのでしょう。
「リンちゃん、」
橙花ちゃんが止めようとしますが、頭に血が上っていたリンちゃんは、もう限界でした。
「いいわよ、やってやるわよ! やってやろうじゃない!!!」
こうして、戦いの火蓋は切って落とされました。