4 あのときとは違うけど、やっぱり楽しいショッピング!
劉生君は誇らしげに橙花ちゃんにお店を紹介します。
「どう!このお店が僕らの思い出の店!駄菓子屋さんだよー!」
小さな小さなチョコレートや飴がふんだんに並び、派手なおもちゃが「我こそが一番!」と誇らしげに展示されています。
橙花ちゃんは物珍しそうに駄菓子屋さんを眺めます。
「へえ。デパートのなかに駄菓子屋さんがあるんだ。どうして思い出の場所なの?」
劉生君が嬉しそうに答えます。
「あのねあのね、『ドラゴンソード』の故郷なんだ!でねでねっ!リンちゃんのぬいぐるみの故郷でもあるの!」
「……故郷?ここで買ったの?」
「もらったんだよ!」
「……?」
劉生君、いつものざっくばらんな説明を繰り出してきました。
橙花ちゃんは救いを求めるようにリンちゃん吉人君を見ます。
二人は慣れた様子で、丁寧に説明をしました。
「僕たち、ここのオープンにあわせて来たんです。そのとき、オープン記念でくじ企画をやっていたんです 」
「それで当てたのが、あたしの武器だったぬいぐるみリュックだったの。で、リュックを包んでいた新聞紙が、リューリューの武器ってこと」
「ちなみにですが、僕の武器、棒つきキャンディーもくじの景品でした」
ちょうど、吉人君が買った棒つきキャンディーが売っていました。
吉人君はミルクの飴と抹茶の飴を手にとると、軽く振ります。
「なつかしいですね。元々飴は好きですが、ミラクルランドに行って以来、しょっちゅう買っています。先週も十本買いました」
なんて言いながら、買い物かごのなかにごっそりと飴たちをいれました。かごのなかには、二十本以上の飴がころころと転がっています。
橙花ちゃんは苦笑しながら、かごを持ち、飴を入れます。
「なら、私も買おうかな」
橙花ちゃんを皮切りに、他の子供たちも買い物かごを片手に物色を始めます。
咲音ちゃんはにんじんのお菓子をまじまじと見つめます。
「中に何か入っていますね……。もしや、ニンジンの種!ニンジンの種って、食べられるんですね!」
ちなみに、本当の中身は種子ではなく、ポン菓子です。
ですが、訂正してくれそうなみつる君は、色とりどりのカルメ焼きを眺めるのに忙しそうです。
「カルメ焼きってどうにもうまく作れないんだよなあ。コツつかみたいな」
なんて呟いています。
そして、リンちゃんはというと……。
「……車イスじゃ中に入れないじゃない!」
駄菓子屋さんの魅力といったら、歩くスペースがないほどにたくさん積まれたお菓子たちですが、今のリンちゃんにとっては、それが逆効果になりました。
歯軋りして、細い細い通路を睨みます。普通の子でしたら、それだけでどうにも悲痛な気持ちを抱いてしまいそうなものです。
怪我をした当初のリンちゃんでしたら、唇を噛み締め、悲しみにくれていましたが、ミラクルランドで苦難を乗り越えたリンちゃんは違いました。
すぐに悔しい気持ちを納め、劉生君にこうお願いしました。
「リューリュー、あたしのお菓子を代わりにとってきてくれる?」
劉生君も慣れたように、すぐ頷きます。
「わかった! グミと飴だよね?」
「あと、小さいチョコも食べたいかも」
「おっけー!」
お菓子のかげから、心配そうにリンちゃんを眺めていた橙花ちゃんは、安堵のため息をつきました。