3 橙花ちゃん、お久しぶりです!
それから、劉生君と橙花ちゃんはリンちゃんたちと合流しました。
事の詳細を聞いて、リンちゃんはあきれます。
「ゆっくり来なさいって話したでしょうに」
「だって、橙花ちゃんを待たせたくなかったから」
「待たせるかわりに、助けられちゃった、と」
「えへへ、そういうこと!」
「どや顔しない」
リンちゃんはため息をつき、橙花ちゃんに謝罪します。
「ごめんね。リューリューったら、家のカギをかけ忘れたらしくてね、一旦家に帰っていたの。集合時間までまだあるから、のんびり来なさいって言ったんだけどね……」
「あはは、ビックリしたけど、別にいいよ」
橙花ちゃんはふわりと微笑みます。
「えっと、劉生君以外は、こっちの私に会ったのははじめてだよね? 私の名前は蒼井橙花。よろしくね」
上品な白のワンピースに、おしゃれな麦わら帽子。オレンジ色の花がついた指輪がきらりと輝いています。
清楚な大人っぽい姿に、咲音ちゃんは、目を輝かせます。
「わあ! おきれいですね!」
「そうかな? ふふっ、嬉しい。咲音ちゃんもかわいいよ」
「ありがとうございますっ!」
みつる君も、ちょっぴり照れ臭そうに目を泳がせます。
「なんだか、うん。変な感じがする。なんだか蒼っちって気軽に呼べないよ。蒼さんって呼んでいいかな? むしろ、蒼井さん?」
「どれでもいいよ。あまり気にしなくていいよ」
劉生君はぴょんぴょんと飛びます。
「僕は橙花ちゃんがいいと思います!」
吉人君、いたずらっぽくウインクします。
「それでいきましょうか。橙花さんって呼びますね」
劉生君は満面の笑みで「いいね!」と同意します。1いいねをもらったところで、優しいみつる君がきっちりと橙花ちゃんに遠慮してくれます。
「でも、いいの? その……。あまり橙花ちゃんって呼ばれるの好きじゃないんだよね」
「あはは。けど、もう乗り切れたよ。劉生君がいつも橙花って呼んでくれたおかげで、耐性がついたのかもしれないね」
強がっているわけではなさそうです。
それならばと、リンちゃんや咲音ちゃんも、橙花ちゃんと呼ぶことにしました。
呼び名が決まったところで、吉人君はパチリとウインクします。
「ではでは、暑いことですし、デパートにいきましょうか」
○○○
ミラクルランドの王、ザクロは不思議そうに首をかしげます。
「デパート……?なんだそれは」
物知りレプチレス社長も、デパート云々は知らなかったようです。
即答はできませんでしたが、さすが頭の良いレプチレス社長です。
劉生君たちの会話や風景を観察し、説明してくれました。
「おそらく、商店街のようなものだろうね。蒼たちはそこで買い物をしにいくらしいよ」
「へー、なるほどぉ」
バトルに関係しない名称でしたので、すぐにザクロは興味を失いました。
代わりに、なぜかギョエイが泣き出しました。
『みんなで仲良く買い物に行ってくれるなんて、ボクは嬉しい!!』
『お前はあいつらのなんなんだ。親か?』
リオンはあきれを通り越して、もはや面倒そうです。
トトリなんて、突っ込みさえせずに鏡から視線を外しません。
鏡の中のみんなは、デパートに入り、お目当てのお店にやってきたようです。あの子たちの様子を見てみましょう。