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ほうかごヒーロー!~五時までの、異世界英雄伝~  作者: カメメ
9章-5 自分勝手な青年の、たった一つの願い事
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9 主人公チート回です! やっぱり主人公は強くなきゃ!

 

 劉生君が落ちてしまった後、魔物たちと対峙するリンちゃんたちはというと、大苦戦をしていました。


 王たちは何とかして魔物を退けようとしますが、数で押す魔物たちに成すすべもなく、じりじりと退却を強いられています。


 子供たちも、王の背中に乗り、彼らの補助をしますが、単純に魔物も強いですし、特にリンちゃんは劉生君のことが気がかりで、戦闘に集中できていません。


「道ノ崎さん、下ばかり見ていると危ないですよ!」


 吉人君が大声で注意すると渋々顔を引っ込みますが、それでも少し経つと、また下をのぞきこみます。


 劉生君のことが、心配で心配で 仕方ないのです。


 あんなところに落ちて、怪我をしていないか。もし無事だとしても、魔物たちの攻撃に巻き込まれてはないかと、不安がっていました。


 劉生君のことで頭一杯で、リンちゃんは、魔物の動きを読めていませんでした。


 魔物たちはピタリと動きを止めると、片角を輝かせました。


『っ、来る!』


 王たちはいっせいに退去します。ザクロも避けようと走りますが、急に動いたせいでしょうか、背中に乗るリンちゃんが、ぐらりとよろめき、


「あっ、」


 ザクロの背中から、転げ落ちてしまいました。


『なっ、』

「み、道ノ崎さん!?」

「きゃ、きゃあああ!!」


 ザクロが慌てて回収しようと宙を蹴りますが、遠くに逃げてしまったため、リンちゃんを助けにいくには間に合いません。


 リンちゃんは、魔物たちを見ます。


 しかし、もう魔物の姿は見えません。リンちゃんの視界に映るのは、青い青い光だけです。


 いえ、青い光だけ、でした。


 光が接近し、リンちゃんをに襲い掛かる刹那、リンちゃんの目の前に、真っ赤な何かが横切りました。


 次の瞬間、リンちゃんは空を飛んでいました。


「……え?」


 リンちゃんはぽかんとして、下を見ます。


「え、ええええ!!!」


 真っ赤なウロコに、トカゲみたいな尻尾、コウモリのような翼を持つ動物が、リンちゃんを背中に乗せて飛んでいるのです。


 なんだこれはと呆然とするリンちゃんに、その生物は、るんるんで話しかけてきます。


「よかった、間に合って!! リンちゃん、怪我はない?」


 聞き覚えのある、子供らしい声に、リンちゃんはおそるおそる尋ねます。


「もしかして、……りゅ、リューリュー?」

「うん!! えへへ、どう? かっこいいでしょ!」


 劉生君、基、ドラゴンはガオガオと嬉しそうに吠えます。


「かっこいいってか、なんというか、ど、どうしてそうなっちゃの!?」

「未来の僕に力をもらったんだ!」

「……ごめん。何言っているか分からない」

「実はね、魔神さんは未来の僕なんだよ!」

「もっと訳分からなくなったわ! 何がどうなったらそうなるの!?」


 とんでもなく端折った説明をする劉生君に、混乱するリンちゃん。はてなマークが飛び交いますが、悠長に説明している暇はありません。現に、魔物たちが突進やムチの攻撃を繰り出してきました。


「こ、細かい話はあとにしましょう!」

「だねだね! よーし、倒しちゃうぞ!!」


 劉生君は大きく息を吸うと、思いきり吐き出しました。ドラゴンと言ったら、炎。炎と言ったらドラゴンです。劉生君ドラゴンも息とともに、灼熱の炎を放ちました。


 その威力の凄まじいこと!


 魔物たちは火に飲まれ、次々と倒れていきます。


 青い角を振りかざして、劉生君を攻撃しようとする魔物もいましたが、今や鉄壁のウロコを持つ劉生君。魔物の攻撃なんて屁でもありません。力も中々なものですので、ちょいちょいと尻尾を振ったら、魔物が弧を描いて吹き飛んでいきます。


「これで止めだ、おりゃああ!!」


 劉生君の頭に生えていた牛の角が、煌々と輝きました。翼を目一杯広げて咆哮すると、真っ赤な光のビームが魔物めがけて放たれました。


 あまりの輝きにリンちゃんはぎゅっとドラゴン、あらため劉生君にしがみつき、目を固く閉じます。


 光が収まり、リンちゃんがおそるそおる瞳を開くと、


「ま、魔物が……」


 最後の一匹が、ゆらりと地面に倒れ、青い光の粒子となりました。劉生君はその真っ赤に光る眼を凝らして、じっと、魔物が復活しないかどうか観察しました。


 どうやら、劉生君の心配するようなことはないようで、それ以降、魔物は一匹たりとも出てきませんでした。


 劉生君はほっとして、翼を閉じて地面におりました。


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