5 誰かの灯に、導かれて
劉生君は重力に逆らえず、どんどん下へ下へと落ちていきます。
「ぎゃあぎゃあ!どうしよう!?このままじゃ絶対大怪我だよね!?」
大怪我だけで終わる訳ありません。もういまの時点で、高層ビルの上から下まで落ちています。
「どうしよう、どうしよう、僕にできることは……。っ!そうだ!」
リンちゃんとの戦いで編み出した技、足から炎を出して素早く移動する技を思い出しました。
「よーし、えいっ!」
ロケットが発射するようなイメージで、足に炎を噴射しますが、バランスが崩れてしまったのでしょう。
「あぎゃ!」
思いっきり壁に頭を打ち付けました。
「ひええ……。いふぁい……」
頭がくらくらしている間に、お尻から地面に着地しました。
「あぎゃ!いたい、いた……くない?」
立ってみて、お尻を触ってみます。
たんこぶもありませんし、血も出ていません。
「あれれ……?」
地面を触ってみます。クッションになっていたから、痛くなかったのかと、劉生君が考えたのです。
しかし、実際にはその逆、地面は石畳でできていました。
「んー?」
劉生君が何らの技や願いを込めたなら、この状況も頷けます。
しかし、劉生君はなにもしていません。
なら、橙花ちゃんが細工したのでしょうか?
それも違うでしょう。
確かにこの穴は、橙花ちゃんが送ってきた青い魔物が作りました。
けれど、魔物たちは別にこの場所を狙って攻撃してはいませんでした。
それに、本当に橙花ちゃんのせいなら、もう既に仕掛けてくるに違いありません。
それならば、いったい誰が……。
劉生君の疑念を晴らすかのように、ぽん、ぽん、ぽんと火が点りました。
横に道があるようです。しかも、天井から壁、床に至るまで石が敷き詰めています。まるでトンネルです。
ふわふわと宙に舞うランタンは、石畳の道を照らします。
「……」
前に、レプチレス社長(見た目は李火君)が、レプチレス内部を案内していたとき、劉生君たちにこう注意しました。
「ミラクルランドの深淵には、恐ろしいものが潜んでいるかもしれない。だから、道に迷わないように」
この道は、レプチレス社長が話していた、「恐ろしいもの」に繋がっているやもしれません。
劉生君の胸に、若干の不安が宿ります。
しかし、上に飛ぶにしても、途中で魔力がつきてしまうでしょうし、もう進むしかありません。
「よ、よし、……いくぞ……!」
剣をぎゅっと握りしめ、おそるおそる足を踏み出しました。