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ほうかごヒーロー!~五時までの、異世界英雄伝~  作者: カメメ
9章-4 自分勝手な少年の、たった一つの願い事~アンプヒビアンズ編~
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8 動きだす、彼女。


 長き戦いが終わり、ようやく、劉生君の勝利が決定いたしました。


 とはいえ、劉生君は素直に喜べないようです。血相を変えてリンちゃんを抱え込み、心配そうに顔を覗き込みました。


「リンちゃん! だ、大丈夫!?」

「馬鹿ね。あんたがやったんでしょうが」

「そうだけど……」

「大丈夫よ。なんだって、一回しか当たってないもの。どっちかというと、ロングブーツのせいで力が尽きちゃった感じね」

「そっか……。ならよかった。あ、でも負けは負けだからね!」


 劉生君はキッとリンちゃんを睨みます。


「ミラクルランドに残るのはだめだからね!」

「分かってるわよ。あたしは約束を守るわよ」

「そっか。よかった……」


 心底ほっとした表情を浮かべます。さっきまでは怒って、今度はほっとして、コロコロと変わる劉生君の表情に、ついついリンちゃんは笑って、ごろんと横になります。


「あーあ。文字通り死ぬ気でミラクルランドに行ったのに、結局負けちゃうんだもんね。元の世界に戻っても、あたしは何にもないのに」

「そんなことはないよ!」


 劉生君は胸を張って、堂々と答えました。


「だって、リンちゃんには僕がいるんだから! 僕はリンちゃんが走れなくても、一緒にいるよ!」

「……本当に、リューリューったら」

「ふぇ? あ、リューリューって呼んでくれた! やっぱりそっちの方がいいよ!」


 ニコニコ笑顔で劉生君は喜びます。リンちゃんは頬を赤らめながら、深くため息をつきます。


 根本的な喪失感が解消されたわけではありません。不自由な足を持ちつつ、これから先どう生きていくか、何も決まっていません。


 けれど、劉生君の側にいると、不思議と前を向く気力が湧き上がってきます。


 リンちゃんは微笑みながら、劉生君の鼻を軽く摘まみます。


「そういったからには、ちゃんとあたしのサポートしなさいよ」

「ふぎゃふぎゃふぎゃふぎゃ!」

「はいはい。分かったわかった」


 じゃれあう二人の頭上には、青い青い空が広がっています。空に浮かぶ五角形の青い光は既に消え去り、黄色の五角形へと代わっていました。


 全ての封印が解かれました。


 残るは片角の少女、蒼井橙花ちゃんだけです。


 劉生君にとっては、あともうちょっとで、みんなを助けられると安堵できる状況です。


 しかし、当然といったら当然ですが、彼女にとっては、蒼井橙花ちゃんにとっては、黄色の五角形は逆の意味だと捉えていました。


 橙花ちゃんは、とある場所から、空を仰いでいました。


「そっか。リンちゃんもやられちゃったんだね。……けど、ボクは諦めない」


 杖をぎゅっと握りしめ、橙花ちゃんはアンプヒビアンズの方向を睨みました。


「この楽園が気に食わないなら、君が出ていけばいい。そうだよね、劉生君?」


 そして彼女は、


 杖に魔力をこめました。

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