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ほうかごヒーロー!~五時までの、異世界英雄伝~  作者: カメメ
9章-4 自分勝手な少年の、たった一つの願い事~アンプヒビアンズ編~
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3 VSリンちゃん! 慎重にかつ大胆に!

 吉人君の質問に、劉生君は「それでも僕は戦う」と答えました。その発言に、嘘偽りはありません。けれど、迷いがない、といったら嘘になります。


 リンちゃんのブーツは、紐で足を固定するタイプでした。紐さえ断ち切れば、自然と靴を脱がす事ができます。


 紐の数は、五つ。全てを切り取らねばなりません。


「まだ攻撃してこないの?だったら、あたしから攻撃するわよっ!」


 リンちゃんは足を大きくあげます。


「<リンちゃんの ゴロゴロサンダーボール>!」


 サッカーボール大のサイズだった電気玉は、なん十倍もの大きくなりました。


 それだけではありません。会場中いっぱいに、無数の電気の玉が浮かんでいたのです。


 どこかでみたことあるような光景です。


 そう、あれはアンプヒビアンズの族長ザクロが、ルール違反をした橙花ちゃんに激怒して放った技でした。


 あのときは橙花ちゃんが返り討ちにしましたが、残念ながら劉生君にはそんな技はありません。


「え、えーい!<ファイアースプラッシュ>っ!」


 数には数で制するべし!


 劉生君は火力をフル回転させて、出来るだけ多くの火の粉を散らします。


「これで、どうっ!」

「全く、劉生ったら。そんな技であたしのボールをどうにかできると本当に思ってるの?いけ、やっちゃえ!」


 怒濤の勢いで電気を帯びた無数の玉が、劉生君に降りかかります。


<ファイアースプラッシュ>が防ごう打ち消そうと懸命に食らいつきますが、慈悲もなく、電気の球は劉生君の技を圧倒し、劉生君に直撃しました。


「っ!」


 電気の連撃に、劉生君は体が痺れ、よろめいてしまいました。


「そして次はこう!<リンちゃんの バリバリサンダーアタック>っ!」


 一瞬の間に、リンちゃんは劉生君のすぐそばに接近していました。


 悲鳴をあげる隙もなく、<ファイアーウォール>で防御することもできず、剣でいなすこともできず、劉生君はリンちゃんのアタックをもろにうけました。


「があっ!」


 まるで金属バットにあたって吹き飛ばされたボールのように、劉生君は飛ばされ、コロシアムの壁にぶつかります。


「っ……!」


 背中を強く打ち、劉生君は呻き声を上げます。


 ですが、痛がっている暇はありません。リンちゃんはこんなところで手を抜くような子ではありません。早く立ち上がり、体勢を整えなければなりません。


 必死に壁にすがり、なんとか立ち上がろうと踏ん張ります。


 ですが、リンちゃんの方が一歩、いえ、何歩も先にいっていました。


 劉生君が立ち上がる寸前、痛みが走り、思わず目を閉じてしまった、ほんのわずかな時間の間に、リンちゃんは劉生君の目の前まで接近していたのです。


 気付いたときには、劉生君の体は宙に浮いていました。


 人間は空中で活動する動物ではありません。


 身動きもうまく取れず、劉生君はただ青空を見ることしかできません。


 青空を遮る人影が、視界に写りこんできました。


 雷を身にまとう少女、リンちゃんです。


「これで、どう!」


 リンちゃんは足を上にあげます。かかと落としをするつもりです。よりによって、ブーツで強化された右足で攻撃してこようとしています。


 劉生君は慌てて剣を構え、炎を新聞紙の剣に集めます。


「<ファイアーウォール>っ!」


 炎の壁が築かれます。触れれば火傷をする炎の壁ですが、リンちゃんは一切の躊躇もなく、そのまま右足を振り下ろしました。


 <ファイアーウォール>の抵抗は、ほんのわずかな時間だけでした。炎の壁はリンちゃんの攻撃を受け、粉々に砕けてしまったのです。


「なっ!」


 リンちゃんの右足は、固まってしまった劉生君の腹部にあたりました。


「……がぁっ!」


 劉生君は血反吐を吐き、地面に叩きつけられました。


 地面は、まるで隕石でも落ちたかのように窪んでいます。その中心にいるのが劉生君です。


「……っ……」


 すぐに立ち上がらねばなりません。でないと、さっきのように、リンちゃんから追撃を受けてしまいます。


 けれど、身体中を走る痛みのせいで、地面の上をのたうち回ることしかできません。


「……さすがに、これだけじゃ倒せないよね」


 ボロボロな劉生君のすぐそばまで近づくと、リンちゃんはため息まじりで劉生君を睨みます。


「それじゃあ、これで最後よ。……あっちに帰ったら、お母さんたちによろしくね」

「……っ!」


 こんなところで。


 こんなところで、負けるわけにはいきません。


「ぐう……!」


 劉生君は新聞紙の剣に炎を点火させて、振り回します。リンちゃんは避けましたが、リンちゃんを遠ざけるための攻撃でしたので、それも想定済みでした。


 リンちゃんが着地する地点を見極め、劉生君はさらに火力を高めます。


「早さで負けるなら、力で押すのみ! えーいっ! <ファイアーバーニング>!!!」


 魔神の力を借りずとも、劉生君の魔力は強大です。人一人もいない会場が炎の熱気で暑くなっています。


「あんなに傷ついて、まだそこまで力が出せるのね……。なら、あたしも全力を見せてあげる」


 リンちゃんは深く息を吸います。


「はあああああ!!<リンちゃんの ビリビリサンダーキック>っ!」


  リンちゃんの足に電気が集中します。


「さらに、<リンちゃんの バリバリサンダーアタック>っ!」


 今度は全身に電気が走ります。


「か、重ねがけ!?そんなことができるの!?」

「蒼ちゃんからもらったブーツのおかげでね!驚くのはまだ早いわよ!<リンちゃんの ゴロゴロサンダーボール>」


 重ねがけどころではありません。今度は電気のボールを呼び出しました。


 小さな無数のボールが、リンちゃんの手や足のまわりを高速でぐるぐると回転します。


 決め細かな電気の粒子に囲まれたリンちゃんは、まるで雷で出来たコートを着ているようです。


「いくわよ……!」

 

 目にも止まらぬ早さで、リンちゃんは近づきます。


「っ!させないっ!<ファイアーバーニング>!!!」


 避けることもできない、巨大な炎の剣を振り下ろします。


 しかし、リンちゃんは雷のコートをひらりと舞い、剣をいなします。


 それどころか剣の上を走り、劉生君のすぐそばに降り立ちます。


 大きな剣を扱う劉生君、すぐ近くまで来られたら、対処の仕様がありません。


「これで、もう一度吹き飛んでけ!」


 全身の電気を右足に凝縮し、思い切り蹴りあげました。


「ぐぁっ!」


 悲鳴をあげる劉生君。


 リンちゃんは満足げな笑みを浮かべます。


 このままコロシアムの壁に再度叩きつけてやろうと足に力を込めます。


 ですが、リンちゃんの思い通りにはなりませんでした。


「っ……!また同じ目には、あわないよ……!!」


 リンちゃんの右足を、全身で受け止めたのです。

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