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ほうかごヒーロー!~五時までの、異世界英雄伝~  作者: カメメ
9章-3 自分勝手な少年の、たった一つの願い事~レプチレス・コーポレーション編~
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2 お次の問題にレッツトライ!

 

「ぎゃあ!」


 劉生君の頭にクリティカルヒット!!これは痛い!!


 さらにさらに、墨汁が並々と入ったバケツがひっくり返る!!これは黒い!!!


「うぎゃあ!!これじゃあ魔神(鏡に写る姿)になっちゃうよ!!水、水!」


 しかし、ここは石がごろごろと転がる不毛な地です。近くに川一本もありませんし、ちょっとした池さえもありません。


 トトリなら魔法で水を出すこともできますが、薄目を開けて劉生君を一瞥しただけで、その後はスヤスヤ眠ってしまいました。


「うう……。仕方ない。墨は我慢して、解きなおさないと」


 渋々諦めて、計算式と睨めっこしなおします。計算し直します。けれど、何度計算いても、同じ回答になります。


「もしかして、言い間違えた? よーし、もう一回言ってみよう! 146!!」


 ワンモア、タライ!!


 ワンモア、墨!!


「ぎゃあ!! 言い間違いじゃなかった! 本当に違うんだ!!」


 これで確証がつきました。劉生君の計算が間違えています。


「けど、どこが違うんだろうなあ。うーん。こういうとき、吉人君ならどんなヒントをくれるかなあ」


 ふわふわと思い出してみました。


 算数で分からない問題を吉人君が出題したとき、てんで分からない劉生君とリンちゃんに、吉人君がこうアドバイスしていました。


 分からないときは、リンゴや鉛筆など具体的なものに置き換えて、文章にしてみればヒントが導き出されるよ、と。


「よし、僕の大好きなかっぱ巻きに置き換えてみよっかな!!」


 16×3といったら、16個入りのかっぱ巻きパックを3つ買った、ということになります。


 25×2といったら、25個入りのかっぱ巻きパックを2つ買った、ということになります。


「そうなるとかっぱ巻きの合計は……。あれ、98個? 数字が違うなあ。どうしてだろう? ……あっ!!」


 劉生君はようやく授業の内容を思い出しました。


「そういえば、掛け算と足し算が混じってたら、先に掛け算を解くんだっけ? それから足し算を解くんだった気がする! つまり、本当の答えは98!!」


 劉生君が叫ぶと、扉は「大正解!」と叫び、ガラガラと音を立てて上に上がりました。


「押すタイプでも引くタイプでもなくて、上に上がるタイプだったんだ! シャッターみたいな感じね!!」


 問題が解けて、劉生君の心は晴れ晴れとしています。


「よーし、これでようやくレプチレス・コーポレーションに入れるぞ!! いざ、出陣!」


 劉生君はるんるんでレプチレス・コーポレーションの敷地に入っていきました。


 砂地に残ったトトリは、奥へと消える劉生君の背中をちらりと見ます。頭のてっぺんからつま先まで真っ黒になっていて、かっこいいとはいえない姿です。


『……あんな問題さえ分からない子供が、本当に蒼たちを救えるのか?』


 どうにも怪しいものです。しかし、もうあの子だけしか頼りにできないのです。


 トトリは心配そうにレプチレス・コーポレーションを見上げます。


 劉生君が不甲斐無いだけではありません。トトリにはある心配の種がありました。


 今までレプチレス・コーポレーションで感じたことがない、強大な魔力の塊が存在しているのです。


 吉人君の魔力ではありません。彼とは別の存在です。


 魔法の力が王の中で一番強いトトリと互角か、それ以上の力を持っているのは間違いありません。


『……はあ。頼んだぞ、赤野劉生』


 トトリは願いを込めるように、レプチレス・コーポレーションを見つめました。


 〇〇〇


 前にレプチレス・コーポレーションに来た時、道案内をしていたレプチレス社長はこう言いました。『ここはお金こそが正義』、と。


 その言葉を借りるなら、吉人君がトップとなったレプチレス・コーポレーションは『知識こそが正義』でしょうか。


 劉生君の目の前には幾重もの障害が待ち受けていました。通せんぼする岩、扉、トカゲ、ヘビ、子供たち。


 彼らは武器を一切持っていませんし、攻撃的ではありませんでした。


 ただ、例外なくクイズを出してくるのです。間違えると、どこからともなくタライやら水やらが降ってきます。


 劉生君はあまり頭のいい方ではありませんので、ほとんどの問題に一発回答できませんでした。


 そんなわけで、


「うう……。全身が痛い……」


 吉人君にまだまだ会っておらず、戦闘だって一度もしていないにも関わらず、劉生君の身体はボロボロになっていました。


 そもそも、今どこにいるのかさえもよく分かりません。


 前に黄色のヘビことレプチレス社長に案内してもらったときは、入り口から入ってすぐに線路だらけのホームに出ました。


 今回もそうだと思っていましたが、どうやら吉人君が作った入り口はまた別の場所に通じているようです。


 前回来たときには全く歩いたことのない道をくねくねと、頭をフル回転させて懸命に進んでいましたので、もうクタクタです。


「この道の先は、どこに繋がってるんだろう?やっぱり、レプチレス・コーポレーションの社長がいたところかな」

 

 その答えは、すぐに判明しました。


 細い道は唐突に終わり、広い空間に出ました。入ってすぐ目についたのは、バスケットボールのゴールくらい大きな卵サイズの真っ白な宝石です。


 その周りには、宝石や岩石を端正に磨き加工した美術品がぼつんぽつんと置いてあります。


「あー、ここ知ってる。博物館だ」


 子供達の作品を高値で購入し、展示する場所です。


「けど、こんな大きい卵は見たことないなあ」

 

 まじまじと眺めていると、上の方でピカピカと光が点滅しました。何だろうと見上げてみると、白いつららのようなものが天井に張り巡らされていました。


「おー、見覚えある。鍾乳洞の中にあった白い石だ!」


 李火君(inレプチレス社長)に案内され、閉じ込められた鍾乳洞の石です。


 白くスベスベとした綺麗な石ですが、ミラクルランドの鍾乳洞はそれだけでは終わりません。


 なんと、テレビやスマホのように映像をうつせる優れものです!


 ちなみに、李火君(inレプチレス社長)はこの白い石を指して、「これは人の心を写す鏡」と言っていましたが、あれは嘘ですので、お間違いないよう。


 そんな石に、何か文字が写っていました。劉生君は目を凝らして文字を読んでみます。


「何々?『では、最終問題です』?おお、ここでラストなんだ!」


 だから行き止まりだったのです。


「ふむふむ、文章問題かあ。よーし、今度こそ一発で解くぞ!」

 

 意気揚々と文章を目で追う劉生君でしたが、文章の意図を理解した途端、顔色がさっと変わります。


「これって……」


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