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ほうかごヒーロー!~五時までの、異世界英雄伝~  作者: カメメ
9章-3 自分勝手な少年の、たった一つの願い事~レプチレス・コーポレーション編~
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1 ようこそレプチレス・コーポレーションへ! さて問題です!

 




 いつからでしょうか。吉人君が勉強を苦だと思い始めたのは。


 最初は違いました。テストで百点をとり、先生からは誉められ、同級生からは称賛の眼差しを受け、吉人君は得意げでした。


 変わってしまったきっかけは、一体何だったでしょうか。


 優秀な妹が、自分では答えられないクイズの正解を答えたときか。


 頑張って勉強した算数のテストで平均点しかとれず、先生が微妙そうな表情をしたときか。


 将来の夢は恐竜博士と口にしたとき、親に「そんな非現実的な夢は諦めなさい」と説教されたときか。


 どれが境目となったかは吉人君本人でさえも分かりません。けれど、様々な悩みが次々と重なり、苦しみもがき、ついには現実世界に嫌気が差してしまいました。


 そして、吉人君はここ、ミラクルランドに逃げ込んでいます。


 もう悩むことはありません。


 好きなだけ恐竜と戯れ、好きなだけ宝石を採掘して、レプチレス・コーポレーションにいる子供達を指導すればいいだけです。


 楽しい日々。ストレスもない、平和な日々。


 しかし、いま、その平穏が崩されようとしています。


 入り口付近を撮らえるモニターには、劉生君と魔王トトリの姿が写っていました。


「……赤野君……」


 今年になってはじめて友達になった男の子です。


 友達思いのいい子ですが、『勇気ヒーロードラゴンファイブ』関連の話になると異常に盛り上がり、自己中心的になります。


 癖はありますが、大変気持ちのよい男の子で、吉人君は好ましく思っています。


 今でもそうです。劉生君とは出来れば喧嘩をしたくありません。


 だけど、劉生君が秩序を乱すのならば、それを排除せねばなりません。


「……すみません、赤野君」


 吉人君はレプチレス・コーポレーションにいる子供や魔物たちに指示を出します。


「侵入者発見、侵入者発見、職員は速やかに規定の行動をお取りください」


 ○○○


 内部ではバタバタとトカゲや子供達が走り回っている中、トトリはレプチレス・コーポレーションの目の前でのんびり羽繕いをしていました。


『んー。疲れたし、一眠りしよっかな』

「いいの?だってここは他の魔王の家なんでしょ?怒られないの?」

『入り口だからセーフ。そもそも、レプチレスはそういうのにこだわらないし。それじゃあ、おやすみー』


 近くの岩の上でグーグー寝始めました。砂ぼこりがトトリの頭に積もっていようと、構わずスヤスヤです。


「すごいなあ。僕ならこんなところじゃ寝れないよ……」


『勇気ヒーロードラゴンファイブ』のぬいぐるみがなければ、知らない場所では眠れない劉生君、本心から尊敬の眼差しを向けます。


「さてっと!いくぞいくぞー!吉人君を助けにいくぞー!」


 意気揚々と乗り込もうとする劉生君でしたが、そんな彼の前に強大な敵が立ちふさがります。


 その敵とは……。


「この扉開かない!!」


 入り口です。強固な扉は『ドラゴンソード』では傷一つつきません。そもそもノブすらついていません。上の方に「ここは入り口です」と書いてありますが、それが本当かどうかさえ怪しいものです。


「うーむむむ。どこかに鍵があるのかな?」


 目を凝らして扉を観察してみると、扉にある文字が彫ってあるのに気づきました。


「なになに?16×3+25×2の回答を答えよ……?」


 劉生君は首をかしげます。


「……算数……?」


 その通り、算数です。


 吉人君はクイズを出すのが好きで、よく劉生君やリンちゃんに問題を出題していました。


「この問題を解決したら、扉が開くのかなあ。ふふっ、すごく吉人君っぽい」


 劉生君の脳裏に浮かんだのは、ウキウキでクイズを出す吉人君の姿です。


 あのときの吉人君は本当に楽しそうでした。


 また、ああして一緒にお喋りしたいです。そのために、劉生君はこの問題を解かねばなりません。


「よーし、やるぞやるぞ!」


 劉生君は今までの授業を振り返ります。確か、こんな感じの問題を学校で習ったような気がします。


 懸命に思いだし、思いだし、そこら辺の石を拾って砂地にメモをして、劉生君はポンっと手を叩きました。


「わかった!16×3は48、48+25は73、73×2は146だから、146!!」


 そう叫ぶと、どこからか、「不正解ですっ!」と聞こえてきました。


「あっちゃー。間違えちゃったかー」


 あははと照れ笑いをしていると、頭上から物音がしました。


「うん?」


 見上げてみると、


「……ふぇ?」


 桶が降ってきました。

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