1 いざ、トリドリツリーへ!
木の葉は心地よい音を奏で、遠くで鳥たちは音楽を歌います。
「本当だ、いつの間に着いていたんだね。ありがとうリオン!」
笑顔で振り返る劉生君でしたが、
「って、いない!」
いませんでした。いつの間に帰ってしまったのです。
「そんなっ!挨拶くらいしてもいいんじゃないの!?」
さすが俊足のリオンです。とても早いです。
それにしても、帰ってしまうなんて酷い王です。それほどまでに劉生君を運ぶのが嫌いだったのでしょうか。それとも、トトリのすぐ近くにいたくなかったからでしょうか。おそらく、その両方でしょう。
リオンと一緒にある程度までトリドリツリーを攻略できると思っていましたので、劉生君は唇を尖らせます。
「むう、仕方ないか。……よーし、いくぞっ!」
頬をパンパンと叩いて気合いを入れてから、劉生君はぶんぶん腕を振り、トリドリツリーに向けて突撃し、
「あぶっ!」
何らかの壁にぶつかり、転がってしまいました。
「ううっ、いったいー」
一体何にぶつかったのかとキョロキョロ辺りを見渡します。しかし、目の前には何もありません。試しにおそるおそる手を伸ばすと、指先が何かの壁にぶつかりました。
どうやら、透明な壁が張っているようです。
「あー、そういえばトリドリツリーの壁は音楽で開くんだっけ?」
試しに歌を歌ってみます。
「るんるんるるらんるるらららん!」
開きません。
「らんらんるるるーるるるるるっ!」
開きません。
「らんらんらん!らんらんらん!」
開きません。
「……よし、」
劉生君は剣を抜きます。
「ていや!」
壁を叩き割りました。
「よしっ!突破!」
橙花ちゃんもトリドリツリーに攻めるときは壁を壊していたと言っていました。
トトリは壁を壊すのを嫌そうにしていましたが、まだトトリも目覚めていないわけですし、仕方ありませんね!
「さて、行こう行こう!咲音ちゃんに会いに行こう!」
劉生君は鼻唄を歌いながら、トリドリツリーの領土に足を踏み出しました。