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ほうかごヒーロー!~五時までの、異世界英雄伝~  作者: カメメ
9章-1 自分勝手な少年の、たった一つの願い事~フィッシュアイランド編~
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13 子供な子供と、大人な子供

 

 みおちゃんは顔を上げます。


 彼女の表情はひどく大人っぽく、どこか冷たい目でした。


「強いなら、困難にも立ち向かうべき。そうでないなら、弱者になる。私は本来、現実世界に戻るべき」


 誰かの言葉を引用するかのように、みおちゃんは淡々と述べます。


「だから私は、……弱い。弱いんだよ、幸路」


 無表情で、平淡とした口調で言うみおちゃん。


 しかし、幸路君はというと、


「……はあ……」


 幸路君はキョトンとしています。クエスチョンマークがはっきり見えるくらい、キョトンとしています。


「よくわからないが、嫌だなあって思うならちゃっちゃとトンズラした方がいいだろ」

「け、けど……。逃げたら、負け犬になるって、いってたよ」

「ほんと、みおの親は厳しい人だよなあ。まあ、俺はそうは思わないがな!嫌なもんは嫌だし」

「……けど、幸路はみおたちを連れて帰ろうとしてるじゃん」

「劉生はみんなを連れて帰りたいみたいだな。俺もどちらかというと、劉生の方が正しい気がする。でも、もしもみおがここに残りたいっていうなら、」


 幸路君は、にこりと笑って手を伸ばします。


「一緒に残ってやろうか?」

「……へ?」


 みおちゃんがぽかんとしている間に、幸路君はペラペラと一人で喋ります。


「その前に、蒼をどうにかしないといけないけどな!今のあいつはちょいとよくない。あんまりいい顔してないし!だから、蒼をどうにかした後で、色々考えるさ」

「……泣き虫お兄ちゃんの味方になった癖に、変なの」


 至極当然の意見ですが、幸路君は不思議そうに首をかしげます。


「そうなのか?俺は頭が悪いからよく分からないが、俺は劉生の味方でもあり、お前の味方でもあるぜ!」

「……」


 みおちゃんは、一歩、後退ります。


 信じられないとでも言いたげに、しかしすがるように、みおちゃんは幸路君を見つめます。


「……どうして……。そこまでしてくれるの?だって、みおは幸路と仲良くなかったのに」

「いやー……。そんなこと言われても困る……。力になりたいって思ったから、力になるだけだ」


 幸路君は頬をかきます。


「けど、出来れば俺はもとの場所に帰ってほしいんだがな。そうだ、みおの両親が面倒なら、俺がなんとかしてやろっか!」

「……どうやって?」

「ふっふっふ、それはだなっ!」


 幸路君はグッと親指を立てます。


「みおの両親と会ってから考える!!」


 つまり、何も考えていないという意味です。


 これぞビックマウスです。


 みおちゃんは怒る云々を通り越して、思わず吹きだしてしまいました。


「もう、幸路ったら。本当の馬鹿だよ。大馬鹿者だよ」

「人のことをバカバカ言うなよ」


 幸路君は唇を尖らせて、ブーブー文句を言います。みおちゃんは大人っぽく微笑むと、小首をかしげます。


「ねえ、幸路。本当にどうにかしてくれるの?」

「おうよ! 誓ってもいいぞ!」

「もしどうにもならなかったら、幸路のこと馬鹿って呼ぶし、大大大嫌いになるよ! いい?」

「え、今までは嫌いじゃなかったのか?」

「うるさい。返事は?」


 幸路君は、迷いなく答えます。


「もちろん! いいぞ!」


 みおちゃんは、小さく笑います。


「なら、幸路の勝ちでいいよ」


 特別だからね、と笑う彼女は、まるで何か吹っ切れたような、明るい笑みを浮かべていました。


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