表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ほうかごヒーロー!~五時までの、異世界英雄伝~  作者: カメメ
9章-1 自分勝手な少年の、たった一つの願い事~フィッシュアイランド編~
213/297

10 改めまして、勝負再開!

 

 ジンベエサメの背中に乗っていたのは、聖奈ちゃんでした。


 彼女は友之助君たちから一定の距離を取ると、ジンベエサメを優しく撫でます。


 ジンベエサメはこくりと頷くと、ペッと劉生君を吐き出します。


 唾液まみれでべとべとになっていましたが、齧られた跡もなく、無事でした。


 聖奈ちゃんから受け取ったハンカチで汚れを拭きとって、劉生君は笑顔で聖奈ちゃんにお礼を言います。


「聖奈ちゃん、助けてくれてありがとう!」

「……ううん、別にいいから。それと、これ、飲んで」


 サメからふわりと飛び降りると、劉生君に小瓶を渡してくれました。


「……マスカットのジュース。……元気が出るよ」

「やったー!ちょうど喉が乾いてたんだ!」


 ごくごくと飲んでみました。


「んっ、おいしいー!」


 不思議と体の中から力が沸き上がってきました。


 アンプヒビアンズで飲んだメチャマズ元気ドリンクより効き目は薄いですが、それでも傷は多少癒えました。


 聖奈ちゃんはもう一本の小瓶を懐から取り出すと、近くで倒れていた幸路君に飲ませました。


 ごくりと嚥下すると、幸路君は薄く目を開きました。


「あ、れ……?聖奈?」


 幸路君は悔しげに唇を噛み締めます。


「……そうか。俺が気絶してる間に、劉生はやられて、俺らは捕まったのか。畜生、俺がもっとしっかりしていたら……」

「……違うよ。捕まってないよ」


 聖奈ちゃんはふるふると首を横に振ります。劉生君もひょっこりと顔をのぞかせます。


「僕だって、まだ倒れてないよ!元気満タン!劉生君だよ!」

「へ?じゃあ、どうして聖奈が……」


 幸路君は息をのみ、目を輝かせます。


「まさか、こっち側についてくれたのか!けど、どうしてだ?」

「いい質問だね、幸路君」李火君は顔をしかめます。「俺もちょうど聞きたかったんだよ。聖奈まで裏切るなんてね」


 ため息交じりで聖奈ちゃんを睨みます。


 みおちゃんだって、ムッと眉を吊り上げます。


「聖奈お姉ちゃん、ひどい!みお、泣いちゃうよ!友之助君もそう思うでしょ!」


 友之助君は、固い表情をさらに固くさせて、聖奈ちゃんを複雑そうに見つめます。


「聖奈。どうして……」

「……李火が、弱い魔物たちを操って、劉生を倒そうとしてた。それは嫌だっていったのに」


 李火君は顔をしかめます。


「仕方ないじゃないか。そうでもしないと、劉生君は倒せないんだから」

「……魔物たち、嫌がってた。なのに、李火は無理やり操った」


 聖奈ちゃんは、ちらりと幸路君に視線を送ります。


「……魔物たちだけじゃない。戦いに納得できてない子も、戦場に参加させてる。……そんなやり方で守った楽園は、本当にみんなが幸せになれる場所なの?」


 私はそうは思わないと、聖奈ちゃんはゆるくかぶりを振ります。


「……だから、私は劉生君に賛成」


 間髪いれずに、友之助君は低く呻くように言います。


「それが、蒼を裏切ることになるとしてもか?」


 少し言葉が詰まりますが、覚悟を決めたように聖奈ちゃんは頷きます。


「……うん」


 聖奈ちゃんは、ふんわりと笑います。


「……蒼ちゃんと私は、友達。蒼ちゃんの願いを叶えてあげたいって思ってた。……でも、今の蒼ちゃん、とても辛そうで、見てられないって、そう思ったの。だから、私は劉生君たちの味方になる。そう決めた」


「……そうか」


 友之助君は俯きます。


 李火君みおちゃんは憮然とした表情でため息をつきます。


「ぶーぶー、この裏切り者めー」「めーめー!」

「めーめー!」「めえめえ!」


 なぜか劉生君と幸路君も唱和しています。


「……二人とも、ひどい」

「あっ、すまん。ついノリで……」


 こほんと、幸路君は咳払いをして気を取り直します。


「おーしっ!これで三対三!ここは男らしく、一騎討ちだな!俺はみおを倒す!劉生は友之助を、聖奈は李火を頼む!」


 返事をする間もなく、幸路君はみおちゃんに飛びかかっていきました。


「おりゃりゃりゃりゃりゃりゃ!!みお!!勝負だ!」


 みおちゃんは非常に嫌そうに顔をしかめます。


「幸路、近づかないで。うざい!」

「そういうなって!!」


 劉生君も劉生君で、新聞紙の剣をノリノリで振り回して、友之助君と対峙します。


「友之助君!さっきの戦いすごくよかったよ!強くなったんだねえ!」

「……」

「でも、僕だって負けられないんだからね!」

「……俺も、負けられない。絶対にな……!」


 四人が臨戦態勢を整えました。


 残された聖奈ちゃんと李火君は、互いに顔を見合わせます。


「え?なに?俺、聖奈と戦わないといけないの?いやちょっとやめてほしいなあ。俺は非戦闘用員なんだし」

「……私だって、そう。……あまり、戦うのは得意じゃない。でも、幸路君に頼まれたから、頑張って戦うね」

「はあ……」


 不承不承ながらも、李火君は笛を軽く握って、聖奈ちゃんと向き合います。


「仕方ない。やってあげるよ

「……手加減は、しなくていいからね」

「する気もないから、安心して」


 三組のバトルが、今、幕を切りました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ