8 VS友之助君アンドみおちゃん!
「幸路君?ゆ、幸路君ー!!!」
劉生君は怒りの目を李火君に向けます。
「許せない、幸路君を、こんな目に遭わせるなんて!」
「いや、半分は君のせいだよ。せめてもう少し幸路君をロボットたちから離してあげてから、爆発すればよかったんじゃない?」
劉生君の理不尽な怒りに呆れながら、李火君はたらりと冷や汗を流していました。
実は、李火君の笛に従ってくれる魚は、そう多くはないのです。
恐竜たち相手なら、子供の手で作られたため、李火君の指示も聞いてくれましたし、優しく接してくれました。
けれど、魚たちは違います。
そもそも、フィッシュアイランドにいる魚たちは、ただの魚ではありません。魔王ギョエイの下で働いていた、歴とした魔物です。
赤黒いオーラや五角形の印はありませんが、その心は未だ魔王を心酔しています。
ですので、李火君に操られるのをこころよしとしない魚の方が多いのです。
そういう事情もあり、本当に弱い小魚たちしか従えることはできないのです。
その魚たちも、爆発に巻き込まれ、倒されてしまいました。
魚ロボも駄目になってしまいました。
つまり、李火君は劉生君と一対一で戦わねばならなくなったのです。
李火君は最年長で、誰よりも長くミラクルランドにいますが、魔法の力はてんで弱いです。
そんな李火君が、魔王や魔神を倒してきた劉生君に勝てるわけがありません。
それくらい、李火君だってわかっています。
さて、どうしようか、逃げてしまおうかと李火君は思案します。
そんなときです。
李火君にとっては救いが、劉生君にとってはあまりよろしくないことが起こります。
「ん……?」
低いエンジン音が響いています。一体なんだろうかと劉生君が辺りを見渡すと、
「わあっ!?」
ゴーカートがドラフトしながら劉生君に突っ込んできたのです。
「うぎゃあ!?」
ひかれる寸前で車は止まってくれました。
「ひええ……」
劉生君は腰が砕けてしまいます。
「な、な、なに!?……ま、まさか!」
そのまさかです。
「じゃーん!!みおだよ!」
「やっぱりみおちゃんだ!」
ジェットコースターから、ゴーカートに乗り換えたようです。
そして、もう一人。
「ここにいたのか、劉生」
友之助君です。助手席から出てくると、劉生君のそばで倒れる幸路君を見て、眉を潜めます。
「……幸路が裏切ったと聞いたが、本当だったんだな」
李火君は複雑そうに頷きます。
「うん、まあ、フレンドリーファイアーされて気絶したけど。しかし、二人が来てくれてよかった。俺一人だと絶対に勝てないからね」
二人が来たことで、数の上で一対三になってしまいました。
しかも、劉生君は幾度も戦って体力が削られている一方で、友之助君とみおちゃんはまだまだ元気です。
李火君はそれなりに戦ってはいますが、そもそも彼は頭脳で戦うタイプですし、先程の戦いも自分の拳を使って戦ったわけではありませんので、足手まといになることはないでしょう。
そんな状況です。普通だったら、少しは緊張感をもつべきですが、劉生君は呑気にぶんぶん手を振ります。
「友之助君!みおちゃん!さっきぶりー!もう戦うのやめる気になった?」
友之助君は大きくため息をつきます。
「そんな急に変わんないわ。逆に聞くが、お前は俺らをそっとしておいて、自分は帰る気になったか?」
もちろん、劉生君は即答します。
「ならないよ!」
「そうか、なら、やるしかないってことだ。みお!」
友之助君の呼び掛けに応え、みおちゃんはポケットから作った金魚の折り紙を取り出します。
「金魚さん、やっちゃって!」