5 VS李火君! さすが最年長! 狡猾ぅ!
ふわふわな茶色の髪の毛、どうみても小学生にすらなっていない幼い顔立ちと身長ですが、実際は中学校三年生、橙花ちゃんよりも年上な最年長さんです。
幸路君はカンカンに怒ります。
「お前が操ってたのか!手を出すなよ!これは男と男の」
「そう言われても、このまま放っておいたら負けてたじゃないか」
李火君は悪びれもなく言い放ちます。なんなら、若干呆れ顔をしています。
怒っているのは、もちろん幸路君だけではありません。劉生君も必死にロボットから逃げながら、涙ながらに怒ります。
「ひどいよ、李火君!意地悪!!そういうの良くないんよ!!!チートってやつだよ!!!」
「これは作戦。君のようなのがチートって言うの。……さてとっ、」
李火君が軽く笛を吹くと、魚の乗り物たちが輪になって劉生君に接近しました。
切ろうにも切れず、劉生君は右往左往するばかり。ついには囲まれてしまいました。
「うう、どうしよう。<ファイアーウォール>ではじく?でも、そしたら爆発しちゃうし……」
「そうだ、劉生君」
李火君はハニカミながら話しかけてきました。
「あとひとつだけ言い忘れてたことがあったんだ」
劉生君、それどころではありません。魚たちは劉生君めがけて押し寄せてきます。
「いいから、この機械止めてっ!」
劉生君の必死の訴えを一笑にふし、李火君はとんでもないことを口にしました。
「その機械、実は自爆するんだ」
「……へ!?」
「ちなみに笛をもう一度吹けば、爆発するんだ」
「なんだって!!??」
劉生君、気づかぬ間に大ピンチに陥っていました。
これにびっくりしたのは、劉生君だけではありません。味方であるはずの幸路君も驚いています。
「そうなのか!?俺は聞いてないぞ!」
どういうわけかわかりませんが、幸路君はご立腹のようです。目をつりあげ、怒鳴っています。
批判めいた幸路君の訴えに、李火君は極めて冷淡です。
「こんな手でも使わないと、劉生君は倒せないよ」
李火君は笛を加え、劉生君の様子を注視します。躊躇している訳ではありません。タイミングを見計らっているのです。
それが分かっているからこそ、幸路君は固まってしまっていたのです。
劉生君はなんとか逃げようと、懸命にもがいています。けれど、うまくはいかず、満員電車に乗っているようなぎゅうぎゅう詰めになっていました。
「うぐにゅー!」
今、爆発されたら、劉生君といえども堪ったものではありません。
だからこそ、李火君は息を大きく吸い、そして、
「やめろ、李火!」
叫んだのは、幸路君でした。