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ほうかごヒーロー!~五時までの、異世界英雄伝~  作者: カメメ
9章-1 自分勝手な少年の、たった一つの願い事~フィッシュアイランド編~
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2 二度あることは、三度ある?

 

 さてさて、空高く飛んでいった劉生君はどうなったでしょうか?


 視点を劉生君に戻しましょう。


 空に飛ばされ、劉生君はわあわあと叫んでいます。


「落ちちゃう!今度こそ落ちちゃう!」


 そのまま劉生君はざぶんと水の中に落ちてしまいました。


 現実世界だったら、まあ、普通に死んでいます。間違いありません。


 しかし、ご安心ください。ここはミラクルランド。奇跡が起こる世界です。


 特にこれといった衝撃もなく、水の中へダイブ。さらには呼吸ができるおまけ付きです。


「あぶぶぶ。あれ、息できる!って、ここ、フィッシュアイランドだ!」


 珊瑚で出来た門の上には、「ようこそ!フィッシュアイランドへ!」と書いてありました。


「懐かしいなあ。あ、観覧車も元通りになってる!乗れるのかな」


 もしかしたら、リンちゃんたちがいるのかもしれませんし、覗いてみるのも悪くありません。


「おじゃましまーす!誰かいま」


 車輪の喧しい音が聞こえてきました。高速でこちらに向かっているようです。


 なんだろうなあ、とそちらを見ると、


「……ふぇ?」


 ジェットコースターが劉生君に突進してきたのです。


「う、うぎゃああ!!!」


 ダッシュで転がり、間一髪で避けることができました。


 しかし、どうしてジェットコースターが突っ込んできたのでしょうか?車ではないのですし、そうそう人身事故は起きないはずですが……。


 そんな疑問をいち早く解決!


「やっほー!」


 運転席からみおちゃんがひょっこり顔を出します。


「わあ! みおちゃんだ! ジェットコースター運転してたのって、みおちゃんだったの?」

「うん! みおだよ!」


 相手がみおちゃんですし、そうきつくは怒れません。そもそも「怒る」なんて発想すらありませんので、劉生君はすぐに気持ちを切り替えて、気軽に質問をします。


「みおちゃんみおちゃん! リンちゃんたちって、ここにいる?」

「んー、お姉ちゃんたちはフィッシュアイランドにはいないよ。どこにいるかは、みおちゃんよく分からない。李火なら知ってると思うー」

「李火君はいるんだ!あとは誰かいるの?」

「友之助お兄ちゃんもいるよ! あと、聖菜お姉ちゃんと、幸路お兄ちゃんもいる」

「そっか!ムラの子達がいるんだね」


 それならばと、劉生君は笑顔でみおちゃんを誘ってみます。


「みおちゃん! 一緒に元の世界に帰ろうよ!」


 みおちゃんはにこりと笑うと、


「いやだもん!」


 あっかんべーをして、ジェットコースターに戻ります。


 ガタンゴトンと、ジェットコースターが動きます。ぐるりとジェットコースターの頭が劉生君に向くと、躊躇もなく発車しました。


「ふぇ?わあああ!」


 逃げる間もありません。劉生君は新聞紙剣の先をジェットコースターに突きつけます。


「<ファイアーウォール>!」


 炎の壁のおかげで、ジェットコースター攻撃をどうにか耐えられました。


「ちょちょちょちょっと!みおちゃん!危ないよ!!??」


 さすがの劉生君も声を荒げます。しかし、みおちゃんは悪びれもなく、ぷくっと頬を膨らませます。


「もう、素直に当たってよ!」

「嫌だよ!痛いじゃん!」

「だって、みおたち、泣き虫お兄ちゃんを倒さないといけないもん」

「……へ?」


 我が耳を疑います。聞き間違えかと期待した劉生君でしたが、残念ながら、違うようです。フィッシュアイランドの奥から、武装した子供たちが続々とやってきたのです。


 劉生君は囲まれてしまいました。


「ふぇ!?戦うの!?」


 リンちゃんたちと戦う覚悟は渋々ながらつけていましたが、それ以外の子達と戦うとは思っていなかったのです。


「待って待って!戦うよりさ、もとの世界に帰ろうよ!ここにいたら死んじゃうんだよ!」


 説得を試みてみますが、子供たちは動揺もしなければ、答えもしません。


 代わりに返事をしたのは、一人の男の子、


「劉生。俺らは帰らないことにしたんだ」


 友之助君です。


 子供たちの輪から、友之助君が出てきました。


 もちろん、武装していますし、目は剣呑な光を帯びています。


「悪いな、劉生。お前にはちっとばかし眠ってもらう」

「どうして……っ!僕は、友之助君たちと戦いたくないよ!」

「俺らだって戦いたくはねえよ。けど……」


 友之助君はいいよどみ、俯いてしまいます。しかし、ちらりとみおちゃんを見て、覚悟を決めたように顔をあげます。


「……ここにいる連中は、向こうの世界でしんどい思いをした子供たちばっかりなんだ。あっちで生きるよりも、ミラクルランドで力を合わせて過ごしていく方がが幸せに違いない。だから、俺はお前と戦う。そう決めたんだ」


 彼は本気のようです。


 だからといって、劉生君も諦めたりはしません。


「僕だって決めたんだもん。みんなと一緒に帰る。みんなを死なせないって!」

「……そうか。……なら、仕方ないか」


 友之助君はぶどうの拳銃を握りしめます。


 拳銃と剣の闘いです。普通に考えると劉生君に非があることでしょう。けれども劉生君は負ける気がしていませんでした。絶対に勝つ、勝ってみんなで帰るんだという強い思いを抱いていました。


 しかし、残念ながら二人のバトルは開始されませんでした。


「どーんっ!!」


 みおちゃんのジェットコースターが、劉生君を轢いたのです。


「うぎゃああ!!」


 劉生君は上空、遥か彼方へ吹っ飛んで行ったのです。


「えっへっへ! みおちゃん、すごいでしょ!」「……え?」


 ぽかんとする友之助君と、キャッキャとはしゃぐみおちゃんが、その場に残されました。


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