表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ほうかごヒーロー!~五時までの、異世界英雄伝~  作者: カメメ
8章 少年は誰がために剣を振る?
203/297

9 劉生君の宣戦布告!

 

 エレベーターが導いた場所は、いつもとは違う場所でした。


「あれ、ここは……?」


 地面には桃色の雲がふわふわしています。


 見覚えがある光景を眺めていると、劉生君はポンと手を叩きました。


「わかった!ここ、僕たちが最初に来た場所!わあ、なつかしい!」


 ふわふわの雲を撫でてみて、ごろんと寝転びます。


「んー、寝心地いいねえ」


 雲の感触は、始めてきたときと同じでした。


 ただ、あの時とは違うものがひとつあります。


 空に描かれる、五角形です。


 魔王の印であった赤い五角形は、劉生君たちが消しさり、今や青色の五角形です。


「そういえば、なんで青なんだっけ?橙花ちゃんの角が青だからだっけなあ……?」


 そうだったような気がします。


「けど、橙花ちゃんは青よりもオレンジの方が似合ってるよね……」


 なんて独り言を呟いていると、がさりと足音が聞こえました。


 立ち上がってそちらを見るなり、劉生君はパアッと笑顔になりました。


「噂をすればなんとやら!橙花ちゃん!やっほー!」


 右側だけに生えている角はいつも通り青くピカピカ光っています。


 ゆったりとした白い服は、まるでゲームに出てくる魔法使いさんのようでした。


 橙花ちゃんは、劉生君を見ると、ほっとしたように微笑みます。


「よかった。戻ってきてくれたんだね。それにしても、どうしてここに出たんだろう?君が来るときは、ムラに直接これるように魔法をかけたんだけど……。まあ、それはいいか」


 橙花ちゃんは手をさし伸ばします。


「それじゃあ、いこうか」


 もちろん、劉生君はその手をとりません。ニコニコ笑顔のままです。


「あのね、橙花ちゃん!僕、ここには残らない!」

「……え?」

「僕だけじゃないよ!みんなも一緒にもとの世界に帰るの!橙花ちゃんもだよ!」

「……」


 橙花ちゃんは思わず口を閉ざします。


 言葉の意味を噛み締めて、橙花ちゃんは顔をあげました。


「……前にいったよね。ボクらを連れて帰ろうとするのは、君の我儘でしかないって」

「うん。でも、我儘でもいいの。みんな、もとの世界に戻るの!」

「断る。君だけ帰ればいい」


 魔王にしか見せなかった、冷たい眼差しを劉生君に向けます。


 それでも、劉生君は笑顔を絶やしません。


「ふっふーん。嫌だもん!」


 劉生君は剣を軽く振ります。


 誰のためではない、


 自分のために。


 自分勝手な少年は、たったひとつの願い事を宣言します。


「五時までに、みんなで帰るんだもん!!」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ