9 劉生君の宣戦布告!
エレベーターが導いた場所は、いつもとは違う場所でした。
「あれ、ここは……?」
地面には桃色の雲がふわふわしています。
見覚えがある光景を眺めていると、劉生君はポンと手を叩きました。
「わかった!ここ、僕たちが最初に来た場所!わあ、なつかしい!」
ふわふわの雲を撫でてみて、ごろんと寝転びます。
「んー、寝心地いいねえ」
雲の感触は、始めてきたときと同じでした。
ただ、あの時とは違うものがひとつあります。
空に描かれる、五角形です。
魔王の印であった赤い五角形は、劉生君たちが消しさり、今や青色の五角形です。
「そういえば、なんで青なんだっけ?橙花ちゃんの角が青だからだっけなあ……?」
そうだったような気がします。
「けど、橙花ちゃんは青よりもオレンジの方が似合ってるよね……」
なんて独り言を呟いていると、がさりと足音が聞こえました。
立ち上がってそちらを見るなり、劉生君はパアッと笑顔になりました。
「噂をすればなんとやら!橙花ちゃん!やっほー!」
右側だけに生えている角はいつも通り青くピカピカ光っています。
ゆったりとした白い服は、まるでゲームに出てくる魔法使いさんのようでした。
橙花ちゃんは、劉生君を見ると、ほっとしたように微笑みます。
「よかった。戻ってきてくれたんだね。それにしても、どうしてここに出たんだろう?君が来るときは、ムラに直接これるように魔法をかけたんだけど……。まあ、それはいいか」
橙花ちゃんは手をさし伸ばします。
「それじゃあ、いこうか」
もちろん、劉生君はその手をとりません。ニコニコ笑顔のままです。
「あのね、橙花ちゃん!僕、ここには残らない!」
「……え?」
「僕だけじゃないよ!みんなも一緒にもとの世界に帰るの!橙花ちゃんもだよ!」
「……」
橙花ちゃんは思わず口を閉ざします。
言葉の意味を噛み締めて、橙花ちゃんは顔をあげました。
「……前にいったよね。ボクらを連れて帰ろうとするのは、君の我儘でしかないって」
「うん。でも、我儘でもいいの。みんな、もとの世界に戻るの!」
「断る。君だけ帰ればいい」
魔王にしか見せなかった、冷たい眼差しを劉生君に向けます。
それでも、劉生君は笑顔を絶やしません。
「ふっふーん。嫌だもん!」
劉生君は剣を軽く振ります。
誰のためではない、
自分のために。
自分勝手な少年は、たったひとつの願い事を宣言します。
「五時までに、みんなで帰るんだもん!!」