7 お母さんに相談してみよう!
コンコン、と控えめなノックが聞こえました。ようやく劉生君は顔をあげると、担任の先生と、それから劉生君のお母さんもいました。
「お母さん……」
先生は気遣うような笑みを浮かべます。
「赤野、あまり具合よくなさそうだったからな。呼んでおいたぞ」
劉生君のお母さんは不安げに駈け寄ってきます。
「顔色悪いじゃない! 風邪がぶり返したのかしら」
額に手を当てて、「熱はないみたいね」とお母さんはほっとします。お母さんと先生は早退の手続きを取るだのなんだのと話していましたが、劉生君は何も返事をせずに、ぼんやりと成り行きを聞いていました。
そのうち、お母さんが荷物を持ってきてくれました。劉生君の肩を抱えて、お母さんたちは学校をあとにします。
お母さんは気を使って色々と声をかけますが、劉生君は虚ろな目のまま、黙々と頷くばかりでした。
家の近くについても、家の中に入っても、劉生君は変わりません。
お母さんがついつい『勇気ヒーロー ドラゴンファイブ』のグッズをあげる、と声をかけましたが、それでも劉生君は魂が抜けたようにぼーっとしています。
「……劉生」
そのまま部屋に行こうとする劉生君を呼び止め、椅子に座らせます。お母さんはとても心配そうに劉生君を見つめます。
「もしかしてだけど、……何かあったんじゃないの? 先生は風邪がひどくなっているだけって話しておられたけど、私にはそうは思えないわ」
「……お母さん……」
お母さんは、劉生君の異変に気付いていたのです。
劉生君の胸に、希望が宿りました。
「あのね、お母さん。リンちゃんたちなんだけどね……」
「うん」
「ミラクルランドに行っちゃったの」
「……ミラクルランド?」
「うん。エレベーターから行けるの。そのせいで、眠り病にかかっちゃったの。僕、どうしていいか分からなくて、怖くて……!」
劉生君の瞳からボロボロと涙があふれてきました。お母さんは劉生君を後ろからぎゅっと抱きしめて、優しく頭を撫でます。
「そっか。私たちが知らないところで頑張ってたんだね」
「うん、うん……!」
劉生君はお母さんにしがみつき、嗚咽まじりでわんわん泣きます。
どれほどの時間そうしていたことでしょうか。いつの間にか劉生君は泣き疲れて、眠りました。
その時の劉生君の寝顔は穏やかで。
しばらくぶりに、劉生君は悪い夢をみずに眠りにつくことができました。