3 学校にて!
学校につき、教室にはいると、吉人君が既に椅子に座っていました。
「ああ、赤野君。どうも」
体調を気づかう言葉もなく、劉生君を見る目は恐ろしく冷たいものでした。劉生君は思わず棒立ちになります。
けれど、劉生君がミラクルランドに行けると告げると、一転、柔らかい笑みを浮かべます。
「ならよかったです。友之助君たちも喜びますよ」
「……友之助君……」
ここで、劉生君は眠り病患者の悪化のニュースを思い出します。
重体になった子が友之助君やみおちゃんたち、橙花ちゃんの可能性だってあるのです。
「ねえ、吉人君。眠り病の患者がとっても悪くなったって、テレビで言ってたよね。どういうことなんだろう?」
「へえ、そうなんですか」
「うん!吉人君が読んでる新聞ではどう書いてあったの?」
「読んでいません」
「へ?そ、そうなの?なら、テレビは?」
「見てませんよ」
吉人君は関心なさそうに言います。
「そんなものみて、なんの意味があるんですか?」
「……え?」
前に、吉人君はこう言っていました。
受験勉強のため、いや、社会勉強のためにも、テレビや新聞は読んでおいた方がいいと。
しかし、目の前の吉人君は当然とばかりに否定しています。
「それよりも、ミラクルランドですよ。先日は新レプチレス・コーポレーションを見せてもらいましたが、いやあれはすごかったです!万博にいっている気分でした」
「だよねー!あたしもマーマル王国でたくさんお着替えしてもらった!本当に楽しかった!」
二人が盛り上がるなか、劉生君はついていけず、ただただ立ちすくんでいました。
◯◯◯
リンちゃん吉人君のおかしな点はこれで終わりではありませんでした。
授業中、いつも積極的に授業に参加している吉人君ですが、今日は手もあげず、鬼気迫る様子でノートに何か書き込んでいました。
先生に怒られても、「すみません」と口にするだけして、またノートに書き込みます。
何を書いているのか聞くと、笑顔でこう答えます。
「レプチレス・コーポレーションで作ってみたい恐竜がいるんです!楽しみですねえ」
目は血走り、ミラクルランドのことしか考えられないようです。
リンちゃんだってそうです。
大好きな体育の授業も、お昼ご飯の時間も虚ろな目で淡々とこなしています。
リンちゃんや吉人君が唯一元気になるのは、ミラクルランドの話題だけです。
「……」
おかしいです。
明らかに何かがおかしいです。
一昨日、魔神と戦った後は普通だったのに、今じゃ何かがおかしいです。
もしかして、昨日ミラクルランドで何かあったのでしょうか。
魔王トトリのように、直接何かに働きかけるタイプの魔法にかかったのかもしれません。
それならば、みつる君や咲音ちゃんたちが、何か知っているかもしれません。
劉生君は休みの間を使って、二人に会いに行くことにしました。
みつる君たちの教室にスピーディーに突撃します。本当は他クラスの教室に入っては行けませんが、問答無用で足を踏み入れ、二人を探します。
二人はすぐに見つかりました。楽しそうに歓談しています。
「みつる君!咲音ちゃん!!」
二人は劉生君をみました。
その目は、
猟奇的な色を帯びていました。
「ああ、赤野っち」「どうしてミラクルランドに来なかったんですか?」
「……」
リンちゃんと吉人君のような、返答。
今日ミラクルランドに行くと話すと、笑顔になる二人。
「……」
劉生君は、固まってしまいました。