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ほうかごヒーロー!~五時までの、異世界英雄伝~  作者: カメメ
8章 少年は誰がために剣を振る?
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2 なんだかおかしい友達の様子

 

 朝御飯も早々にすませ、劉生君は家を飛び出します。リンちゃんに話を聞くためです。


 バタバタと階段をかけあがり、リンちゃんの家をノックします。


「リンちゃん!!いる!!」


 開けてくれたのは、リンちゃんの弟さんです。


「姉ちゃんは、……もう学校にいったよ」

「ええ!?でも、僕、会ってないよ?」


 劉生君はリンちゃんといつも一緒に登校しています。先にいってしまうことなんて、今まで一度もありませんでした。


「どうしたんだろう……」


 戸惑う劉生君ですが、そんな彼に、弟さんはすがるように劉生君を見つめます。


「今日だけじゃない。昨日からおかしいんだ。ワケわからないこといって、真夜中なのに赤ちゃんと俺たちを連れてどっか行こうとしようとしたんだ」

「え……?、どこかってどこ?」

「なんか、ミラクルランドっていってた」

「……ミラクルランド?」


 ミラクルランドといったら、あそこしかありません。


 前にリンちゃんは「みんなをミラクルランドに連れていきたい」と話していましたが、それにしたって真夜中に連れていくのはリンちゃんらしくありません。弟さんが戸惑うのも無理はありません。


 劉生君はなんだか不安になってきました。


「リンちゃんって、今いったばかり?今から走ったら追い付けそう?」

「多分……」

「わかった!じゃあ、直接聞いてくるね!」

「すまねえ、頼む」


 劉生君は猛ダッシュで走ります。


 通学路を全力で走って、走って、走ります。登校中の子供達もいましたが、「どいたどいた!」といって、突進していきます。


 文句を言われても無視して走っていると、ようやくリンちゃん匂いつきました。


「いた! リンちゃん、リンちゃん!!」


  リンちゃんは車椅子を止め、首だけ振り返ります。


 ぜいぜいと息を整えてから、劉生君は顔を上げます。


「はあ、はあ。おはよう、リンちゃん」

「ああ、うん。おはよう」


 淡々と挨拶を返すと、すぐにきびすを返して学校方向に行ってしまいます。


「へ?ちょ、ちょっと待ってっ!」


 必死に声をかけると車椅子を止めてはくれますが、どこか眼差しは冷たいです。


「え、えっと……。僕、何か悪いことしちゃったかな……?」


 知らず知らずのうちに怒らせてしまったのでしょうか?


 縮こまる劉生君を、なぜかリンちゃんは睨みます。


「……昨日」

「……昨日?」

「どうしてミラクルランドに来なかったの?」

「えっと、熱が出ちゃったの」


 リンちゃんは「ふうん」といって、小バカにするように鼻で笑います。


「普通、熱が出てもいかなきゃダメじゃない?」


 よくわかりませんが、昨日ミラクルランドに行けなかったことを責めているようです。


 弟さんの言う通り、いつものリンちゃんではありません。少しおかしいです。


 けれど、追求する余力は劉生君にはありません。


 いつも優しいリンちゃんの苛立ちに、劉生君は混乱してしまっています。


「あっ、ご、ごめん。今日は行くから……」


 すると、リンちゃんはがらりと笑顔になりました。


「そうなの?ならよかった!」


 先ほどまでの不機嫌はなくなり、優しい笑顔をみせてくれました。


 やはり、弟さんが言うとおり、リンちゃんはどこかおかしいです。


 けれど、劉生君は疑問を投げ掛けませんでした。そこまでの余力がなかったのです。リンちゃんが笑ってくれたので、劉生君は安心しきっていたのです。


 そうなると、劉生君はひとつ、気になることがありました。


「なら、吉人君も来れるの?」


 劉生君は首をかしげて尋ねます。


 しかし、リンちゃんは不思議そうにキョトンとします。


「当たり前じゃない。昨日のリューリューじゃないんだし、これない理由がないわよ」

「へ?け、けど、吉人君は受験勉強しなくちゃいけないから……」


 吉人君は勉強が忙しいですので、一週間に何度もミラクルランドには行けないはずです。


 そう伝えますが、リンちゃんは呆れるばかりです。


「勉強なんて、ミラクルランドにいかない理由にはならないわよ。そんなくだらないこと話してる暇があったら、ミラクルランドで何をしたいか考えましょ」

「……う、うん……」


 リンちゃんは有頂天でミラクルランドのことをつらつら話します。


 リンちゃんはしっかりと劉生君に向かって話しています。けれど、リンちゃんは自分の興味があること、ミラクルランドのことばかりマシンガンのようにわめき散らすだけです。劉生君が違う話題に変えようとしても、すぐに話を戻されてしまいます。


 すぐ隣にリンちゃんがいるのに、まるで遠く離れた場所にいるような気分です。


 もっと、僕のことをみてほしい。


 僕と話をしてほしい。


 そんな思いを告げようと口を開きかけて、閉じます。


 またリンちゃんが怒りだして、リンちゃんでない別人のようになってしまうのが恐かったのです。


 風邪が治ったのに、憂鬱で重々しい足取りで、学校へと向かいます。


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