12 少年は悪夢に苦しむ
魔神を倒して、パーティーをして、遊んで、もういい時間になりましたので、帰宅することとしました。
もとの世界に帰ると、「うさぎおいし」の時間もすっかり過ぎ、真っ暗になっていました。
さすがにまずいと吉人君は顔を真っ青にさせて駆けていきましたが、他の子はまだミラクルランドでの興奮が冷めきれません。
少しおしゃべりして、解散してからも、帰り道が近い子同士は楽しいパーティーの話で持ちきりです。
劉生君やリンちゃんも、楽しくおしゃべりします。
「しかし、あのときは驚いたわよ」
車椅子を器用に使って段差を避けて、リンちゃんはいたずらっぽく笑います。
「かくれんぼしてたのに、堂々と見つかりにくるんだもん」
「うっ、わ、忘れてて……」
橙花ちゃんと話している内に、かくれんぼをしていたのをすっかり忘れてしまっていました。
鬼にあっさり見つかり、味方だったみおちゃんに烈火のごとく怒られてしまったのです。
「みおちゃん、すごく怖かった」
「あれは仕方ないわよ。遊びも真剣に!」
「ぐすん……」
もう少し話したかったですが、リンちゃんには家事が待っています。
「ううー。急に現実に戻された感じ……」
リンちゃんは渋々お家に戻ります。
劉生君もやることもありませんので、自宅に帰ります。
リンちゃんとバイバイすると、途端に疲れが襲ってきました。
「ふええ……ちゅかれたなあ……眠い……」
心なしか、体が熱く、だるいような気もします。
うとうとしながら、劉生君は帰宅しました。
門限に遅れましたのでお母さんは大いにお怒りかと思いきや、あまりの劉生君の疲労っぷりに心配して、早く寝るようにと促してくれました。
劉生君も返事する気力もなく、こくこく頷いて、自室に戻ります。
お風呂入る気もなく、ましてや姿見で自分のやつれた顔をみることもなく、そのままベッドにダイブして、目を閉じました。
◯◯◯
白い壁。
窓のない部屋。
無数のベッド。
たくさんの子供達。
劉生君は医者に詰め寄りますが、追い出され。
閉ざされたドアの前で、呆然と立ち尽くします。
ふわりと風景が溶けていき、変わっていき、白の壁が黒くなりました。
色とりどりの可愛らしいお花が囲む、笑顔を浮かべる子供達の写真。
劉生君はみんなの写真の前で立ち尽くします。
涙さえも、既に枯れてしまいました。
ただただ、彼の胸に宿るのは、
悲しみ。
苦しみ。
そして、
憎しみ。
足の先から、頭のてっぺんまで、どす黒い思いで染まっていきます。
劉生君は、感情のまま、あの子のことを呪います。
許さない。
許さない。
僕は、あの子を――。