表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ほうかごヒーロー!~五時までの、異世界英雄伝~  作者: カメメ
7章 最終決戦、VS魔神!!―みんなのために、みんなのために!―
192/297

10 怖い怖い魔物はいなくなり、ミラクルランドは平和になりました!

 

「……せいくん、劉生君!」


 ハッと瞼を開けると、橙花ちゃんが不安そうに覗きこんでいました。


「よかった。気がついたんだね」

「……とうか、ちゃん」


 喉がカラカラで、うまく声が出せません。


 橙花ちゃんが飲み物を渡してくれました。一気に飲み干そうとして、思わず吐き出します。


「まっず!!なにこれ!?」

「アンプヒビアンのドリンクだよ。ほら、前に吉人君が飲んでた」

「あー……」


 元気はでるけど、えらくまずい飲み物だったはずだ。


「ほらほら、飲んで飲んで」

「うっ……」


 嫌々ながら、劉生君は胃に飲み物を流し込みます。


「……ぐぅ」


 まずい。


 すごくまずい。


 饒舌に尽くしがたき不味さです。


 テンション駄々下がりの劉生君をみて、橙花ちゃんはくすりと笑います。


「はい、口直しだよ」


 さすが橙花ちゃん、ひょいと杖を振って、マカロンを出してくれました。


「わー、ありがとう!」

 

 力強い甘みが口の中に広がり、噛めば噛むほど苦味を消してくれます。


 ゆっくりかじって、すべて食べ終わる頃には、ドリンクの効果も出て、疲れも怪我も癒えていました。

 

「えへへ、ありがとう、橙花ちゃん」

「どういたしまして」


 元気になったおかげで、周りを見る余裕ができました。


 二人がいるのは、今まで見たことのない、変な場所でした。


 空もなく、遮蔽物もなく、床もありません。


 ただただ、青いです。


 まるで絵の具の青で世界を塗りつぶしているように、青く染まっています。


 そんな世界に、唯一ある物体は時計くらいでしょう。


 上に、下に、右に、左に、いろんな場所に時計が浮かんでいます。


 普通の目覚まし時計や、大きな古時計、液体のようなとろりとした時計もあります。


 その場所を一言で言い現すとしたら、変な空間。それ以外はありません。


「ここどこ?」

「ムラの時計塔だよ」

「へー!あれ?時計塔の中って入れるの?」


 ずいぶん前に聞いたので朧げの記憶しかありませんが、確か橙花ちゃんしか入れないと言っていたような気がします。


「見ての通り、ここは良く分からない場所だからね、他の子が間違えて入ってこないようにロックしてたんだ」

「そうなんだ……」


 確かに、うっかり入ったら、混乱して取り乱すこと間違いありません。


「けど、ここは居るだけで不思議と疲れがとれるから、劉生君を招いたんだ。どうかな?」

「んー、わかんないかな」

「そ、そっか……」

「……僕ね、早く出て、みんなと会いたいなあって思うの……」


 劉生君はふるりと震えます。疲れこそとれていますが、妙な形の時計を見ていると、あの悪夢が蘇ってくる気がしてならないのです。


 夢の中で、劉生君は「誰かの記憶の世界に来ちゃったんだなあ」と思っていました。


 けれど、今までリンちゃんとずっと一緒にいましたが、あんな場所に運び込まれるほどの大病は、今までで足の怪我をしたときしかありません。断言できます。


 あんな体験は誰も経験していないはずなのですので、あれは夢だったのでしょう。もしくは、魔神最後の嫌がらせかもしれません。


 そう思って気を取り直そうとしますが、みんなの姿が見えないと、なんだか不安になってくるのです。


「そっか。うん、そうだね」


 橙花ちゃんは優しく微笑みます。


「みんなも、劉生君と会いたがってるよ。外にいこっか」


 橙花ちゃんは手を伸ばします。劉生君が掴むと、橙花ちゃんは勝手知ったるように手を引きます。


 気がつくと、二人は時計塔のふもとにいました。周りには、ムラ中の子供達がびっくりしたようにこちらを見上げています。


「え、えーっと」


 劉生君は照れたように頬をかきます。


「た、ただいま……?」


 子供達はワッと歓声を上げ、二人に駆け寄ってきました。


 いの一番に飛び込んだのは、リンちゃんです。


「リューリュー!!よかった、無事でよかった!!!」


 ぎゅうっと抱き締め、すりすり頬擦りします。リンちゃんに温もりに包まれると、劉生君も涙腺が緩み、ギャンギャンと涙を流しました。


「わーんっ!リンちゃん、リンちゃん!!」


 吉人君も、みつる君も、咲音ちゃんも、泣いて笑いながら、劉生君を優しく迎えてくれます。


「無事でよかったです、赤野君」

「すごい心配したんだよ、赤野っち……!」

「劉生さん、とっっってもかっこよかったです!」


 友之助君と聖奈ちゃんは優しく微笑みます。


「さすが劉生だな。まさにヒーローって感じだったぞ」

「……うん。ミラクルランドの、救世主」


 李火君や幸路君は、ほっと息をつきます。


「あれで死なないのはすごいよね。最早人間じゃないのでは?」

「さすが俺の強敵だな!俺も負けてられねえな。もっともっと強くならないと!」


 みおちゃんははち切れんばかりの笑みでジャンプします。


「泣き虫お兄ちゃんが帰ってきたから、お祝いパーティーしようよ!」


 子供達は口々に賛成します。


「わーい!」「パーティー、パーティー!」

「蒼お姉ちゃん、いいかな?」


 断る理由はありません。橙花ちゃんは笑顔でうなずきます。


「うん、そうしよっか!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ