7 つまりそれって、……ってこと!?
その頃、ムラではリンちゃんが最後の一体を蹴り倒していたところでした。
「よし!完璧!」
リンちゃんは落ちてきた髪の毛を上にあげ、誇らしげに胸を張ります。
「あたしの足にかかれば、こんなもん大したこともないわよ!」
友之助君がバタバタと駆け寄ってきます。
「リン!無事か?」
「ふふん、とーぜん!」
「そうか、よかった。念のために、みつるからチョコもらったが、いるか?」
「わーい!ほしいほしい!」
疲れた体にしみる、ホワイトチョコレートです。
美味しい美味しいと頬張りながら、リンちゃんは被害状況を尋ねます。
さすがに怪我もなく被害もなくとはいきませんでしたが、手の打ちようもない重傷者はいません。
「家は何個か壊れちまったから、あとで直さないとな」
「ほんと、急になんだったんだろうな……。上から降っときたよな」
「リューリューと魔神の戦いに何かあったのかしら」
心配して見上げてみますが、やっぱり彼らの姿は見えません。
「んー、せめて上の様子が見れたらなあ」
リンちゃんが目を凝らしながら言っていると、一羽のオウムが飛んできました。
友之助君はびっくりして銃を構えます。
「な、な、なんだ!?魔物の生き残りか!?」
「ちがうちがう。サッキーの鳥だよ」
オウムは二人の上を旋回しながら、ピーピー話します。
「デンレーデンレー!時計塔のふもとにあつまれ!上の様子が分かるぞ!」
二人は顔を見合わせ、ダッシュで時計塔に駆け出しました。
時計塔には、吉人君たちが円になって集まっていました。中心にいたのは、戦いに参加しなかった怠けんぼー、李火君です。
「リッヒー!リューリューたちの様子が分かるってほんと!?」
李火君は今さら来たかと言わんばかりに眉をあげます。
「まあね。さっき魔物にムラが襲われてるときに作ったんだ」
「ええ!?サボってた訳じゃないの?」
「失礼な。俺がそんな事する人だと思ったの?」
リンちゃんだけでなく、周りの子供達でさえも頷きました。
「……君たちで大丈夫そうだって判断したから、別のことしてたんだよ」
自業自得ですが、みんなのこの反応に、さすがの李火君も若干落ち込みます。
テンション低めで、李火君はそこそこ大きな鏡を見せてくれました。
最初はあまりうまく作れなかったけど、赤い霧が鏡に入ったらうまくいっただのなんだのと解説をしていましたが、ぶっちゃけ何も頭に入りません。
そんなことよりも、二人の様子の方が気がかりだったからです。
我先にと、リンちゃんは鏡を覗きます。
「みえた!……って、あれ!?蒼ちゃんが倒れてて、魔神と戦ってるのはリューリューだけ?!」
しかも、ボロボロです。
「そんな、リューリュー……!!」
見れなかったときから心配していたのです。見えて、しかも苦戦している様子を見せられたら、リンちゃんは堪ったものではありません。
「あたしいく。今度こそ、絶対にいく!」
聖奈ちゃんは彼女らしくない強ばった表情で首を横に振ります。
「だめ。危ない。やられちゃう」
「でも……!」
「だったらさ!」みおちゃんが目をキラリと輝かせます。「みおたちが応援すればいいんだよ!」
みつる君はポカンとします。
「お、応援?なにするの?」
「お歌!歌う!」
「歌?けど、ここからだと聞こえないんじゃ……」
吉人君が、ぽん、と手を叩きます。
「そういえば、ミラクルランドの歌は魔法みたいなものなんでしたっけ」
咲音ちゃんはキョトンと首をかしげます。
「つまり……。どういうことですか?」
「つまり、」
吉人君の言葉を、リンちゃんが継ぎました。
「あたしたちの思いを、リューリューに届けられるってこと!?」