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ほうかごヒーロー!~五時までの、異世界英雄伝~  作者: カメメ
7章 最終決戦、VS魔神!!―みんなのために、みんなのために!―
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4 魔神の攻撃は、意外なところへ!

「……へ?」


 胸がじんじんと痛みます。視線を下に向けると、赤いムチのようなものがお腹の辺りに刺さっていました。


「あ、……あれ?」


 ムチは劉生君ごと持ち上げ、投げ飛ばしました。


「があっ……!」

「劉生君!」


 うまく空気を止め、遅らせてくれて、落下の衝撃は受けませんでした。


 それでも、貫かれたダメージは体に響いていました。


「うっ……」

「劉生君、劉生君!」


 傷口からは血が溢れ、止まってはくれません。橙花ちゃんは必死で傷口を押さえます。


「これじゃあ、大量出血で劉生君が……!けど、二度も<モドレ>をかけたら、後々ひどい目に……」

『他人の心配をしている場合か?』


 皮肉げな声色がしました。


 ハッとなり、橙花ちゃんは顔をあげました。


 ミラクルランドの空の上には、橙花ちゃん・劉生君と、あと一体しかいません。


「……魔神か」

『その通り』


 牛のような角を生やした赤い影は、――魔神は、残酷な笑みを浮かべます。


『魔王の封印から解放されたはいいが、久々の全力だったからな。つい正気を失って、無駄な破壊をしてしまった』


 ゴミでも見るように、血まみれの劉生君を見ます。


『ガキが力をもらってくれたおかげで、こうして動けるようになった。是非ともお礼をしたかったが、残念残念』


 絶対に残念だとは思っていません。声色は完全に小バカにしていましたし、愉悦げに真っ赤な目を細めてもいます。


「貴様……!」


 橙花ちゃんが吠えます。


「<モドレ>!」


 周囲に散らばっていた骨やマグマの飛沫がふわりと宙に浮かぶと、魔神のもとへ飛んでいきました。


 夥しい量でしたが、魔神は低く喉の奥で笑います。


『相変わらず威勢がいい。だが、少し大人しくしてもらおうか』


 魔神が手で空をなぞります。すると、あんなに素早く飛んでいた骨たちが唐突に速度がなくなり、落ちていきました。


「なっ!この……!」


 何の技を使ったかは知らないが、防がれたなら再度攻撃を仕掛ければよいと、橙花ちゃんは魔力をこめました。


 しかし、


「――っ!!」


 突然、橙花ちゃんの足に痛みが走りました。どこからともなく、魔神のムチが足を穿ったのです。


『暫くそこで待ってろ。楽しい余興をみせてやる』

「何をするつもりだっ!」

『決まってる』


 魔神は口らしきものを歪めます。


『お前を絶望に叩き落とすための喜劇を開演するんだ』


 嬉しそうに話す魔神の魔の手は、


 下界の世界へ、


 たくさんの子供達が避難するムラへと伸びました。


 ◯◯◯


 アンプヒビアンの子供達は全員ムラに退避できました。


「しかし、あれだな……」


 友之助君は唖然として辺りを見渡します。


「逃げて正解だったな」


 幸路君も深く頷きます。


「ああ。全くだ」


 魔神が好き勝手にミラクルランド中の設備やものを引っこ抜いたため、瓦礫と砂塵が舞うそれはそれはおぞましい光景が広がっていたのです。


 もし、アンプヒビアンに居続けていたら、何らかの二次被害にあい、ボロボロになっていたことでしょう。


 聖奈ちゃんは誉めるように幸路君の肩を撫でます。


「……幸路君、かっこいい」

「え!?まじ!?俺かっこいい?いやー、そうだよな!なんだって俺はアンプヒビアンで何度もチャンピオンになったからな!」

「……うん」


 別にそういう「かっこいい」ではありませんでしたが、聖奈ちゃんはニコニコ頷いてくれます。


 二人のやり取りを呆れた目で見ているのは、李火君です。


 突っ込む気もありませんので、二人は無視して空を仰ぎます。


「ミラクルランドってのは、本当に常識外な場所だね。まあ、最終決戦が空ってのは、ゲームで良くありそうだけど」


 みおちゃんはピョンピョン可愛らしく跳ねます。


「みお、雲に乗って、弱虫お兄ちゃん助けにいく!李火も一緒にいく!」

「嫌だよ。大体、蒼はどうするの?」

「蒼おねえちゃんは強いから、いいの!」


 吉人君、思わず吹き出します。


「ひどい言われようですね」


 咲音ちゃんはのほほんとしながら、ふるふると首を横に振ります。


「劉生さんは、とっても強いんですよ!そう、まるでチワワのように!」

「咲音っち。例えが微妙すぎるよ」


 みつる君が突っ込みます。


 なんとなくいつも通りの会話を繰り返してはいますが、余裕があるわけではありません。むしろ、そうでもしないと恐怖に押し潰されてしまいそうなのです。


 現に、リンちゃんは軽口に一切加わらず、目を凝らして劉生君の姿を追い続けていました。


 出来るなら、自分も劉生君を助けにいきたい。いや、できなくとも無理やり行ってしまいたい。そう必死に願っていました。


 思い願うだけではありません。何とかして雲の切れ端を作り出して空まで飛んでいきたいと、ムラ中を駆けてもいました。


 友之助君たちに制止され、今行 っても無駄死にだと吉人君たちが死に物狂いで止めていなかったら、実際に飛んでいっていたことでしょう。


「……リューリュー……!」


 せめて無事でいてほしいと、リンちゃんは祈っていました。


 他の子も祈りながら、怯えながら、上空を見ていました。


 誰もが魔神の攻撃がこちらにくるとは、思いもしていませんでした。


 ですが、魔神は容赦しませんでした。


 赤いムチがムラへと、か弱い子供達の方へと、伸びていきました。


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