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ほうかごヒーロー!~五時までの、異世界英雄伝~  作者: カメメ
6章 闘技場、アンプヒビアンズ!―ミラクルランドは、奇跡の世界!―
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22 リンちゃんVS橙花ちゃん! まるであの時のように

 リンちゃんVS橙花ちゃんのバトルがはじまりました。


 リンちゃんは緊張した面持ちで、橙花ちゃんは戦いたくなさそうに、フィールドに入ります。魔物たちにも橙花ちゃんは有名人のようで、観客の魔物たちはやんやわいわいと橙花ちゃんに歓声とも罵声ともつかない声をかけています。


 当然ながら、橙花ちゃんは魔物の声など耳には届いていません。


「やっぱり、リンちゃんと戦うのは嫌だなあ。魔物相手だったら、遠慮なんかしないのに」

「あたしに対しても遠慮しなくてもいいわよ! 試合なんだからね! そう! スポーツマンシップ!」

「ふふっ、さすがリンちゃんだね。心身ともにしっかりしてる。リンちゃんなら、立派なスポーツ選手になれるに違いないね」

「……」


 途端に、リンちゃんの表情が曇ります。


「立派なスポーツ選手には、……なれないかな」


 声が震えています。表情は苦悶に満ち、今にも泣きだしそうです。


「……? リンちゃん?」


 橙花ちゃんが心配して駈け寄ろうとしますが、その前に喧しい実況が帰庫てきました。


『さあさあ! 大会もとうとう第三回戦目! 準々決勝になりました!』

 

 リンちゃんが「あ、これ準々決勝なんだ」とびっくりしています。先ほどの悲しそうな表情はどこかに行っています。


 橙花ちゃんはなおも不安そうにしていますが、一旦魔物の実況に耳を傾けることにします。


『準決勝は、いつものごとく、フィールドの地形を変化いたします! 今回のフィールドは、岩石プラスお水です!』


 地面がほの明るく光りました。


 橙花ちゃんとリンちゃんがよろけ、後ずさります。けれど、どうやら彼女たちに害はないようです。光はすぐに収まり、砂場のフィールドが変化しました。


 中央はごつごつの岩石のステージが広がり、それを囲むように、川が円状にちろちろと流れています。


『それでは、試合開始です!』

 

 始まりのゴングが鳴り、割れんばかりの歓声が響きました。


「よーし、いくわよ!!」


 リンちゃんは先手必勝といわんばかりに、全身に雷をまといます。


「<リンちゃんの バリバリサンダーアタック>!」

  

 目では追えぬ速さで、突っ込んできます。


 しかし、橙花ちゃんはリンちゃんの動きを見切っていました。余裕をもってかわします。


「むむっ、さすが蒼ちゃんね。でも、まだまだ勝負はこれからよ! <リンちゃんの ゴロゴロサンダーボール>! 三連発!!」


 雷の球を三発も投げつけます。


 こちらも冷静にかわす橙花ちゃんですが、最後の一発は、橙花ちゃんの予想外の動きをします。


「ん? ……わあ!」


 よけたと思っていた電気の弾の一つが、軌道を変えて、後ろから橙花ちゃんを襲ってきたのです。


「つ、追尾性!? リンちゃん、いつの間にこんな技も使えるようになったの!?」


 橙花ちゃんもびっくりしていますが、それよりもリンちゃんの方が驚いています。


「あたしも知らなかった。この技って、相手を追いかけることもできたのねー。けど、この力があれば蒼ちゃんだって倒せるわよ!」


 リンちゃんは力をこめ、十発ものボールを作りました。


「ボールたち! 全員で蒼ちゃんを集中砲火よ! <リンちゃんの ゴロゴロサンダーボール>!!」


 雷の球はリンちゃんの指示通り、橙花ちゃんに襲って来ました。十発連続、怒涛の勢いです。


「うっ、」


 さすがにこの数では、避けようにも何発かは当たってしまいます。即座に判断した橙花ちゃんは、渋々杖を手にします。


「時間を止めるか? いや、こっちのほうがいいかな」


 橙花ちゃんはゴロゴロ鳴るボールに杖を向けます。


「時よ、<ススメ>!」


 ボールは橙花ちゃんに向かって急激に加速します。


「え、ちょ、はやっ!」


 リンちゃんは何とかコントロールしようとしますが、もはやリンちゃんの指示下を離れてしまっています。


「で、でもこの勢いなら、蒼ちゃんも倒せるわ! いけいけ!」


 応援するリンちゃんには悪いですが、橙花ちゃんは彼女の攻撃に当たってあげるつもりはありませんでした。


 橙花ちゃんは目をこらして、十分にボールをひきつけます。


「よし、今だ。<トマレ>!」


 ボールの一部の時間をとめてから、ボールとボールの合間をくぐるようにすり抜け、岩の影に隠れます。


 四方八方から橙花ちゃんを狙った雷の球は、橙花ちゃんを追いかけようと追いかけようと軌道修正します。


 ですが、橙花ちゃんによってスピードが異常に早くなってしまいました。軌道が変わる前に、お互いがぶつかり、爆発します。


「わっ!」


 爆風で石がまき上がり、リンちゃんに切り付けます。


「きゃあ! り、<リンちゃんの バリバリサンダーアタック>!!」


 身体に電気をまとって、石をはじきます。それでも完全には防御できません。リンちゃんは痛そうに顔をゆがめます。


「ぐう……! 微妙に痛い!」


 石の嵐を乗り切ると、リンちゃんは雷を収めます。途端に、どっと疲労が襲ってきて、リンちゃんは膝をついてしまいました。


「やばい、魔力使いすぎたかしら」


 ただでさえ、<リンちゃんの バリバリサンダーアタック>は魔力を使う技です。その上、新しいボールの力も魔力を削られる技のようで、肩で息をしてしまっています。


 橙花ちゃんは、これを狙っていました。


 拾った小石に魔法を乗せて、リンちゃんの足元すれすれを狙って投げ始めました。


「うわっと!!」


 リンちゃんはステップを踏んで後ろに下がっていきます。完全に、橙花ちゃんのぺースに飲まれてしまっています。


「これじゃ、蒼ちゃんに負けちゃう……! 何か使えそうな魔法ないかしら……。そうだ、キックなら使えるかも! ようし! <リンちゃんの」


 足を上げようとしましたが、ぴたりと、リンちゃんの動きが止まりました。


「あ、あれ……?」


 意図せず、足が動かないのです。


「ど、どうして……!」


 力を込め、魔法も込めますが、どうしても蹴りができません。


「……もうっ……!」


 仕方なく後ろに下がりますが、


 そのときです。


 ずるっと、足が滑りました。


「……えっ?」


 手を伸ばしますが、何も掴めません。


 重力に逆らえず、身体が落ちて、落ちて、落ちて、


 それはまるで。

 

 あのときのように。

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