20 オタクの決意! 劉生君以外はみんな興味なさそうです……
その日の放課後、劉生君たちはミラクルランドのアンプヒビアンズに来ていました。
橙花ちゃんと合流すると、さっそく、劉生君たちに質問を投げかけます。
「幸路君をどうやって倒すか決まった?」
みんなすぐに答えてくれると思っていましたが、意外や意外、リンちゃんたちは黙り込み、静まり返ってしまいました。
唯一、劉生君だけは決意に目を光らせています。
「橙花ちゃん。僕、頑張るよ!」
「うん、頑張ってね」
「この一歩は、僕にとっては小さいものかもしれない。けど、『勇気ヒーロー ドラゴンファイブ』と『仮面恐竜キョウスケ』にとっては、大きな飛躍なんだ!」
「……うん?」
劉生君は一体何を言っているのだろう、橙花ちゃんはぽかんとします。説明を求めてリンちゃんたちに視線を送りますが、黙って首を横に振るのみです。
咲音ちゃんだけは、のほほんと説明してくれます。
「劉生さんはですね、すごい作戦を考えてきたんですって! けれど、劉生さんいわく、成功したら劉生さんは負けてしまうんですって!」
「そうなのかい?」
劉生君は悪びれもなく頷きます。
「うん。だけどね、僕は譲れない信念があるから!!」
「……そ、そう。まあ、劉生君が負けても、リンちゃんがいるからね」
戸惑ってはいますが、優しい橙花ちゃんは、劉生君のトンデモ意見を受け入れてくれました。
さすが蒼さんだなあ、と吉人君は思いました。もし吉人君が彼女の立場なら、怒るか呆れるかします。
実際に劉生君から「作戦が成功しても負ける」と聞いた時は呆れましたし、リンちゃんは軽く怒っていました。今もリンちゃんは呆れつつ若干怒っています。
「リューリュー、何をするつもりか知らないけど、あたしたちは魔王対峙をしにミラクルランドにきてるのよ。そっち優先にしなさい」
説教するリンちゃんでしたが、劉生君は頬をぷくっと膨らませて、ぶんぶんと首を横に振ります。
「いいや! この作戦だけは、譲れない!」
「……本当にリューリューは我儘なんだから」
こうなった劉生君は絶対に意見を変えません。リンちゃんはため息をつき、申し訳なさそうに橙花ちゃんを見ます。
「ごめんね、蒼ちゃん……」
「ボクは全然! 魔王退治に付き合ってもらってるわけだし!」
「こりゃもう、あたしたちが頑張るしかないわねー」
わいわい話しながら競技場内を歩いていると、どこからかアナウンスが聞こえてきました。
劉生君の名前と、幸路君の名前が呼ばれます。
「……よし。僕、行ってくるね!」
「頑張ってね、劉生君」
「うん!!」
劉生君は一世一代の大勝負とばかりに、重々しく立ち上がり、のっしのっしと歩いていきました。
「劉生君、大丈夫かな……」
橙花ちゃんは不安そうにしていますが、リンちゃんたちは「大丈夫じゃない?」と雑に流しました。